ドイツの健康保険制度 を誤解されている人は、とても多いです。

その原因は、ネットで拡散し続けている膨大な数のフェイクニュース。

そんな記事の特徴は、怪しげなドイツ語。

文法を無視したおかしなドイツ語が、あちこちに引用されています。

しかし記事を読む人もドイツ語がわからないので、

「なる程、ドイツではそうなんだ!」

と納得してしまいます。

こうしてドイツの健康保険に関して間違った内容が、スタンダード/基礎知識になっています。

そこでドイツの達人が一肌脱いで、本当のドイツの健康保険制度 について紹介いたします。

国により異なる保険システム

国により異なる保険システム

日本に住んでいると、

「日本の健康保険システム」

しか知らないのは当たり前。

問題はここから。

島国の住人はすぐに

「日本の健康保険制度が世界のスタンダード。」

と想定しちゃいます。

ところがどっこい!

日本のような保険システムは稀で、世界には国の数と同じくらい、いろんな制度があります。

当然、ドイツの健康保険制度も日本のそれとは大きく異なります。

ドイツの健康保険制度 – ふたつの柱

ドイツの健康保険制度 - ふたつの柱

そのドイツの健康保険制度は、

国民健康保険と個人保険のふたつの柱で構成されています。

 

正しいドイツ語で表記すると、

“gesetzliche Krankenkassen” (国民健康保険)

“private Krankenkassen”(個人保険)

です(*1)。

国民健康保険は皆さんのご存じの通り、国が国民に提供する健康保険です。

個人保険は、民間企業が提供する健康保険です。

日本には癌保険とか、死亡保険とか、民間企業の提供する追加保険がテレビで宣伝されていますよね。

ドイツではそのような追加保険ではなく、国民健康保険に代わるもうひとつの保険として販売されています。

そこで以下に、個々の保険について詳しく解説いたします。

ドイツの健康保険制度 – 国民健康保険 / gesetzliche Krankenkassen

ドイツの健康保険制度 - 国民健康保険 / gesetzliche Krankenkassen

ではまずは、ドイツの健康保険制度の最初の柱、国民健康保険から見て行きましょう。

日本とドイツの国民健康保険の最大の違いは、

公的保険会社 / gesetzliche Krankenkassen が数多くあり、被保険者が自由に保険会社を選べる点です。

 

ではどんな公的保険会社があるんでしょう。

大きな会社をA,B,C 順で上げてみると、以下の通りです。

実際には96もの公的保険会社があります。

質問
どうして複数の公的保険会社があるのですか。

 

それはドイツの健康保険制度が発展してきた歴史が関与しています。

1883年、

「労働者は健康保険に加入すべし。」

という法律が施行されます。

これに従い多くの従業員を抱える大企業や地方自治体が保険会社を設立、加入者を募りました。

当時、3万5000もの保険会社が誕生しました。

これが理由で、ドイツには複数の公的保険会社が存在しています。

ドイツの公的保険は平等、相互補助の原則

もうひとつ、ドイツの健康保険制度が日本の国民保険と大きく異なる点があります。

それは

国民皆保険は相互補助、そして平等の原則から成り立っている点です。

 

質問
どういう意味ですか。

 

日本ではがん治療などの高額治療は、

「国民健康保険の適応外」

となっています。

治療を受けたければ、自費で治療を受けるしかありません。

が、数千万円の医療費を払える人が、どれだけいるでしょう。

言い換えれば、金持ちは延命治療が可能で、貧乏人は早く死ぬという構造です。

これが平等でないのは、誰の目にも一目瞭然です。

ドイツの公的保険はこうした不公平さをなくしているので、

国民皆保険に加入していると癌治療から臓器移植まで受けることができます。

 

心臓移植や癌治療を受けても、追加請求はありません。

高額な治療費は、健康な国民が払う保険料で賄われます。

これがドイツの健康保険制度の相互補助の精神です。

国民健康保険の仕組み

その国民健康保険は大きく分けて、疾病保険と介護保険に分かれています。

事故保険や個人賠償責任保険は含まれていませんので、日本の追加保険のように追加で加入する必要があります。

スキーや山登りが趣味な方は、救出費を払ってもらえる事故保険が欠かせません。

疾病保険

疾病保険

まずは疾病保険から見ていきます。

日本では国民健康保険に加入していても、3割自己負担です。

これでは社会的弱者にとって

「お金がないから医者にかかれない。」

となり、相互補助の精神とは相いれません。

そこで、

ドイツの公的保険に加入していると、診察費や治療費は健康保険が100%負担します。

 

唯一、薬代金が5ユーロだけ自己負担になるだけ(*2)。

手術が必要になっても、これは同じです。

ネット上では、

「ドイツでは手術が無料。」

という極論が展開されていますが、手術代金は毎月払う保険費用で払っているので、無料ではありません。

ただ入院費には、個人負担金があります。

三食食事つきの病院の滞在費の自己負担金は、たったの10ユーロ/日。

日本では、

「手術衣は自分で買え。」

「ナイフ、フォークは別料金」

と言われますが、ドイツの健康保険制度では全部込み(*3)。

介護保険

介護保険はその名の通り、介護が必要になった際の保険です。

事故などで介護が必要な場合はもとより、高齢により補助が必要になった際、あるいは介護が必要になった身内を家庭で世話する際に、保険が支払われます。

もっともドイツでも介護施設への入院費は高く、全額保険でカバーされることはありません。

介護度により異なりますが、保険でカバーされる介護施設への入院費は77~78%ほどです。

保険が効く治療、効かない治療

保険が効く治療、効かない治療

ドイツの国民皆保険に加入していると、どんな治療でも保険が効くような錯覚を受けます。

でも、保険が効かない治療も存在しています。

公的健康保険の大原則は、

西欧医療で効果が認められている治療は、保険の対象となる。

 

です。

ですから癌治療や臓器移植も保険の対象となるわけです。

逆に東洋医学、漢方薬やインド発祥のアーユルヴェーダなどは、治療の効果が科学的に実証されていないので、保険は効きません。

 

例外は針治療。

針治療は半年1回(全部で6回の治療)までなら、保険が効きます。

ドイツ発祥の治療、ホメオパシーは医学的な根拠がないので、保険の対象外となっています。

「いや、ホメオパシーは効く。」

と信じている方も多いので、保険会社によってホメオパシー治療の一部に保険が効くケースもあります。

ホメオパシー治療を信仰されている方は、そのような保険会社を探して加入されるといいでしょう。

公的健康保険の対象外 IGeL とは?

公的健康保険の対象外になっている治療は、その他にも存在しています。

その代表的なものは、

“Individuelle Gesundheitsleistung”(個別の健康治療)

通称 イーゲル / Igel と呼ばれるものです。

診療所も商売です。

公的健康保険が払ってくれる治療費だけでは、儲かりません。

そこで診療所があたらな収入源として開発したのが、個別の健康治療です。

わかりやすいように、具体例を挙げます。

腰痛で歩くのもしんどいので診療所に行くと、

「痛み止めの注射があるけど、これは公的健康保険の対象外。一発25ユーロかかります。どうします。」

とセールスを受けました。

「少しでも痛みが和らげば。」

と打ってもらいましたが、効果なし。

そこで別の診療所に行くと、

「椎間板に直接、注射を打ってあげよう。」

とレントゲンを見ながら患部に注射を打ってくれました。

これは効きました。

おまけにこちらは公的健康保険が効きました。

すべての個別の健康治療が役に立たないわけではないですが、

役に立たないものが多いです。

 

あまり執拗に個別の健康治療をセールスをしてくる診療所は、患者の健康よりも収入優先です。

診療所を変えたほうがいいです。

参照 : Igel

予防接種は無料!

予防接種は無料!

日本では予防接種には保険が効かないと聞いて、(*_*)になりました。

予防接種を受けず病気になれば、治療費、ひいては医療費の増加につながります。

ですからドイツでは、予防接種は健康保険制度の対象です。

インフルエンザからテタノス(破傷風)、A,B, C型肝炎まで、国民保険で接種できます。

 

ドイツでかかりつけの医者に行くと、

「10月だからインフルエンザの予防接種 /”Impfung”が出たよ。早く、腕を出して!」

と否応なしに注射、と言えば誇張ですが、医師の方から勧めてきます。

さらには

「予防接種手帳」

なるものがあり、受けた予防接種の記録をつけるのがドイツ流。

始めてドイツに行かれた方はまずはこの予防接種手帳をもらい、片っ端から予防接種を受けましょう(*4)。

国民皆保険の加入資格 – 外国人は加入できない?

日本では外国人でも国民皆保険に加入できますが、

ドイツでは外国人は公的健康保険には加入できません。

 

上述の通り、ドイツの公的保険では癌治療から心臓移植、人口受精、エイズ治療まで保険が効きます。

「外国人も加入できる。」

とやってしまった日には、

「インドでは保険が効かないから、ドイツに行こう。」

と重病患者が黒山のようにやってきて、医療制度が崩壊します。

これを防止するために、

ドイツの国民皆保険に加入できる外国人は、ドイツに滞在する正当な理由がある人に限られています。

 

すると次には、

質問
ドイツに滞在する正当な理由がある外国人とは、どんな人ですか。

 

と聞きたくなります。

わかりやすい例を出すと、難民です。

ドイツ政府から難民と認定されると、ドイツの国民皆保険に加入できます。

次の範疇はドイツの大学に通う大学生や、ドイツで働いている人、及びその配偶者です。

ドイツの大学に正規留学されたり、交換留学される人は、ドイツの公的保険に加入する権利があります。

大学生の場合は強制加入ではないので、加入するかどうか、それはあなたの自由です。

でも、加入されることをお勧めします。

語学学校に通う場合

語学学校に通う場合も、

「ドイツに滞在する正当な理由」

のひとつですが、国民皆保険に加入できる資格はありません。

交換留学者の悩み

ドイツ留学される学生さんから、

「日本の海外旅行保険に加入していることが(大学の)交換留学の条件ですが、これではビザが取れないので困っています。」

というご相談は、20年以上も前から寄せられるクラシックなものです。

日本の大学関係者は、

「健康保険は現地で入れるから。」

と学生を送りだすと、学生が指示に従わず無保険状態。

これで病気や怪我になることを恐れる余り、

「日本で保険に加入してから出発。」

との一点張りです。

でも日本の保険ではビザが取れないので、再度、ドイツで保険に加入することになります。

結果、日本で払ったウン十万もの保険料は無駄になります。

大学関係者さん、無駄な出費を強いるシステムは再考されたほうがいいです。

 

どうしても出発前に健康保険に入ることを条件にするなら、ドイツ留学保険に加入する方法をお勧めします。

保険料はわずか37ユーロ/月で、滞在ビザが取れます。

その後、ドイツで国民健康保険に加入されたら、こちらの留学保険を解約すれば保険料が戻ってきますので、お金が無駄になりません。

【売上 No.1】 ドイツ留学・ワーホリ保険 ドクターヴァルター

ドイツで就職した場合

ドイツで働く、厳密に言えば、

ドイツでお給料が出る仕事をす場合は、公的保険への加入義務があります。

 

会社の人事担当者と公的保険会社に出向いて、加入申請をしてください。

研究滞在する場合

研究滞在する場合

大学や研究機関などで

「研究滞在」

する場合は、基本的に国民皆保険に加入する権利があります。

ただし!

滞在する大学や研究機関からお給料が支払われ、ドイツで税金を納める場合です。

研究滞在されるものの、

    • お給料は日本の所属先から出る
    • 自費で滞在する場合

は、原則として国民皆保険に加入できる資格はありません。

自営業者の場合

「ドイツで事業をやりたい!」

とドイツの自営業ビザを申請される方、国民健康保険に加入することはできません(*5)。

法律でそのようになっているので、これは仕方ありません。

この場合は後述する個人保険に加入することになりますが、保険料が高いです。

ただし最初の2年間はドクターヴァルター社の Provisit 保険に加入できるので、保険料を安く抑えることができます。

その後は、一般向けの個人保険に加入することになります。

ケア・エクスパトリエイトなら、最長5年間加入できます。

Care Expatriate / ケア・エクスパトリエイト 自営業者向け健康保険

ドイツの健康保険制度 – 公的保険の保険料

ドイツの健康保険制度 - 公的保険の保険料

日本と同じように、公的保険の保険料は収入によって異なります。

まずは収入のない学生の例から見て行きましょう。

大学生の健康保険

学生と言っても、両親が公的保険に加入していれば、その子供は一緒に保障されています。

ですから大方のドイツ人学生は、個人としては保険料を払っていません。

事情が異なってくるのは、

  • 学生の年齢が25歳を越える
  • 学生アルバイトで485ユーロを越える収入がある
  • 我々日本人のような外国人留学生

の場合です。

この場合では、個別に健康保険に加入する必要があります。

学生の国民皆保険の保険料は、介護保険込みで115~120ユーロ/月です(*6)。

高いように見えるかもしれませんが、実はこの保険料は学割が利いた保険料です。

30歳になると学割が利かなくなり、210~215ユーロ/月です。

被雇用者として働く

ドイツでは会社と被雇用者が保険料を折半します。

被雇用者が払うのは、お給料の14,6%+追加保険料です。

例えばお給料が3000ユーロなら、毎月の保険料は438ユーロ+追加保険料です。

確かに高いですが、これで家族も保険に入れて、臓器移植までできるのでそこは我慢しましょう(*7)。

質問
追加保険料とは、何ですか。

 

かって保険会社はどこも大赤字で、国が税金で国民の医療費の一部を肩代わりしていました。

その経済状況を改善するために導入されたのが、追加保険料です。

各保険会社が、0.3%~1.8%の間で自由に決めてよい追加の保険料です。

すなわちお給料が3000ユーロの場合、追加保険料は9ユーロ~54ユーロ。

追加保険料は保険会社により異なるので、加入する前に確認しておきましょう。

ドイツの健康保険制度 – 国民健康保険 加入方法

加入条件をクリアした方は、ドイツに到着後、保険会社の支店で国民健康保険に加入できます。

質問
日本に居るうちに、オンラインで加入できませんか。

 

基本、できません。

本当に加入資格を満たしてるか、審査を要するためです。

例外は学生の場合。

国民皆保険のDAKは、オンラインで加入申請できます。

参照 : DAK

 

ただし!

保険料は口座引き落としになります。

ドイツ、あるいはEU内の銀行に口座をお持ちの方に限られます。

又、本当に加入条件を満たしているか、審査されます。

「入学許可証を送ってください。」

など、証拠書類の提示を求められます。

本当に資格を満たしている方だけ、申請してください。

ドイツの健康保険制度 – 個人保険 / private Krankenkasse

ドイツの健康保険制度 - 個人保険 / private Krankenkasse

次はドイツの健康保険制度のもう一ひとつの柱、

“Private Krankenkassen”(個人保険)

を見ていきます。

その個人保険は、誰でも入れる保険ではありません。

会社員の場合、基本的に国民皆保険への加入義務があります。

しかし年収が6万4350ユーロ以上の高給取りの場合(2023年)、加入義務から解放され個人保険に加入することができます。

 

日本円でざっと1千万です。

この為、個人保険は別名、

「金持ち保険」

とも呼ばれています。

忘れてはならないのが、

個人保険は平等、相互補助の精神ではなく、企業のお金儲けの手段である事です。

 

公的保険なら奥さんが働いておらず

「主婦」

で子供の3人面倒を見ている場合、旦那一人の保険でなんと5人保険に入れます。

これが個人保険になると、家族のメンバーが一人一人が保険に加入しなくてはなりません。

 

5人家族なら、保険料は少なく見積もっても国民健康保険の5倍です。

なのに、どうしてこんなに高い個人保険に入る人がいるのでしょう。

それは、

「保険料は高くてもいいから、一流の医療を受けたい。」

というお金持ちが加入するからです。

公的健康保険の患者は儲からないっ!

診療所にとって、国民健康保険の患者さんは儲かりません。

日常お世話になることの多い内科のお医者さん、公的保険が患者一人頭払ってくれる診察費は、70ユーロです(目安)。

これが3ヶ月分の報酬です。

3ヶ月の間に患者が1回来ても、10回来ても、報酬は同じです。

1回だけなら「OK」ですが、3ヶ月の間に同じ患者が10回も来ると、1回の報酬は1000円。

この収入から

  • 高価な医療器具を購入
  • 看護士さんのお給料
  • 診療所の賃貸料
  • 税金

を払わなけれななりません。

なのに報酬が1000円では赤字です。

これが2000円だろうが、3000円でも同じ。

そんなお医者さんの頼みの綱が、個人保険の患者様。

個人保険会社は公的保険の3~4倍の報酬を、それも毎回、払ってくれます!

 

言い換えれば、個人保険の患者が居るから、診療所の経営が成り立つことになります。

これが原因で、

「公的保険の患者さんはお断り。」

というお医者さんも多いのが現状です。

税金で医学を勉強、医師試験に合格したんだから、社会に多少は奉仕してもいいと思いますが、医師といえども商売です。

「儲からない患者は診ない。」

という医師が居るのがドイツの医療現場の現状です。

個人保険はV.I.P.待遇

個人保険はV.I.P.待遇

個人保険で得をするのは、医者だけではありません。

ドイツの診療所はアポイント制。

ちゃんと予約を取って診療所に行っても、待ち時間2時間なんてざらです。

待つのが嫌で、診療所に行くのもいやになります。

でも個人保険に加入していれば別。

アポイントを待っている客をよそ目に、優先して診察してもらえます。

流石に、

「個人保険患者用の専用椅子」

はないですが、扱いが違います。

個人保険の患者に失礼がないように、診療所で真っ先に聞かれるのは、

“Wie sind Sie versichert?”(保険はどちら)

です。

個人保険に加入している人は鼻高々に、

“privat”(プリヴァ-ト)

と言いましょう。

受付のお姉さんの愛想がよくなり、別待遇を受けれます。

待遇の差

待遇の差は、怪我をして入院した際に顕著に現れます。

公的保険の場合は、

“Mehrbett-Zimmer”(複数ベット部屋)

と呼ばれる部屋に収容されます。

もっとも私が入院した病院では、

「複数ベット部屋」

でも、そこにはたったの3名。

その部屋の広さは、日本の病院の2倍。

これが個人保険の患者様になると、さらにグレードアップ!

シングルルームでテレビ付き。

お食事はメニューから選べて、手術をするのは主席執刀医です。

個人保険の保険料

個人保険の保険料

個人保険を販売している会社は私企業なので、保険料は(基本)自由に決められます(*8)。

ですから、

「○○ユーロです。」

ということはできません。

さらには、「個人保険」とは言っても、最近は国民健康保険のように

「医師にかかった際の待遇」

を削っている保険も出てきました。

そんな安い個人保険では、毎月200ユーロ+から加入できます。

そんな

「ディスカウントの個人保険」

でない古典的な個人保険の保険料は、30代前半で持病がなければ、保険料は430~440ユーロが目安です。

持病があると、保険料はぐっと上昇します。

落とし穴

「その程度の保険料なら、国民皆保険と大して差がない。」

と、個人保険に変えるのは要注意。

上述のように家族を築く場合、不利になります。

さらに年齢を重ねると、保険料も上昇します。

定年退職して収入が減った頃には、保険料は800~900ユーロ/月もの高額になります。

疑問
だったら国民健康保険に戻ればいい。

 

と思いますが、できないんです。

一度、公的保険を離れて、個人保険に移った者は公的保険に戻れない。

 

という原則があるんす。

ですから個人保険への変更は、3回考え直してください。

失業したら?

以前は失業しても公的保険に戻れず、高額な保険料も払えず、無保険の人が大量発生、社会問題になりました。

そこで法律が変わり、失業すると公的保険に戻れるようになりました。

ただし55歳未満まで。

それ以降は

「自分で責任を取れ!」

というわけです。

個人保険に加入するリスクを軽視しないように!

個人保険に加入

にも拘わらず、

「個人保険に加入したい。」

というお金持ちは大歓迎です。

それどころか、

個人保険への加入者を紹介をすると、数千ユーロのおいしいコミッション(キックバック)が出ます。

 

これを生業としている日本人が居ます。

彼はコミッションが多い会社を、

「お勧め」

しているので要注意。

言葉のわからない日本人は、赤子の手をひねるようなもので、簡単に説得されています。

質問
ドイツの達人のお勧めは?

 

基本、

「安いのにいい!」

という保険はありません。

保険料と補償範囲は比例するからです。

保険料が安ければ、それだけ保障範囲、補償額を削っています。

逆に、

「保険料が高いのに、よくない。」

という保険はあります。

ドイツではオンライン上で、さまざまな個人保険の補償内容が比較されています。

そちらを信用されたほうがいいと思います。

公的健康保険で個人保険患者待遇

公的健康保険で個人保険患者待遇

ドイツの健康保険制度では、国民皆保険から個人保険に変えるのはリスクがつきまといます。

そこで公的保険に留まっていながら、個人保険の得点を受けれるシステムもあります。

それが日本でも御馴染みの

「追加保険」

です。

どの保険会社も高収入のお客さんを逃がさないように、追加保険を用意しています。

その内容は

  • 歯科治療追加保険
  • 入院優遇追加保険
  • ホメオパシー追加保険
  • 眼鏡追加保険
  • 介護追加保険
  • 保険金追加保険

などなど、その種類は豊富です。

この追加保険の中で一番大事なのは、一番上の歯科治療追加保険です。

参照 : 追加保険

ドイツの健康保険制度 – 歯科治療

ドイツでも歯の治療はとても高価です。

これが理由で、日本の留学保険には歯科治療が含まれていません。

ドイツの健康保険制度、すなわち公的保険は、

「医学的な根拠があれば、保険の対称内」

が原則ですが、

これが著しく制限されているのが、歯科治療の分野です。

 

虫歯の穴を埋める程度の治療でしたら、健康保険が治療費をもってくれます。

問題は詰め物。

保険が効くのは、銀色のアマルガムでの詰め物だけ。

でもこれでは口を開けると、埋めた跡が目に付きます。

歯の色に合わせた

“Komposit-Füllungen”

という詰め物は、目に付きやすい部分に限って、健康保険が費用をもってくれます。

ただし180ユーロまで。

もし奥歯の穴埋めで詰め物を歯の色に合わせると、自費になります。

が、どんなに小さな穴でも70ユーロ。

大きな穴だと100ユーロも自己負担になります。

でもこの程度なら払えない額じゃない。

問題は穴埋めでは済まない場合です。

“Krone”(王冠)が必要になると、1本でも700~900ユーロもかかります。

この費用の内、国民皆保険が持ってくれるのはわずか30%です。

 

すなわち自己負担は、490ユーロ~720ユーロ。

そんな高額の治療費を払いたくない人の対策法は、以下の通り。

  • ボーナス冊子 / “Bonusheft”
  • 歯科治療追加保険 / “Zahnzusatzversicherung”

ボーナス冊子とは?

ボーナス冊子とは?

まずはお金のかからない方法から。

毎年、歯医者に行って検査をしてもらい、

“Bonusheft”(ボーナス冊子)

にスタンプを押してもらいます。

5年間勤続すると、公的保険が払ってくれる費用は50%まで上昇します。

10年だと60%。

ドイツに住み始めたらまず最初に始めるのが、このスタンプ集めです。

 

冊子はどこの歯科医でももらえます。

歯科治療追加保険

もうひとつの対策は、将来の出費に備えて歯科治療追加保険に加入する方法です。

歯科治療追加保険は公的保険も提供しているので、加入される保険会社で尋ねてみましょう。

まだ30代で安い保険なら月々、12ユーロ程度の掛け金で済みます。

歯科治療追加保険がもってくれるのが、50%。(*9)

国民皆保険が持ってくれるの最低レベルは30%。

あわせると80%までカバーされるので、自己負担は最小限で抑えられます。

中には60%もってくれる歯科治療追加保険もありますが、すると保険料が30~40ユーロ。

そんなに高い追加保険で

「元が取れる」

には総入れ歯にする必要があります。

若い方なら安い追加保険で十分です。

追加保険への加入 – ドイツの健康保険制度

歯科治療追加保険に限らず、保険にはまだ健康なうちに加入します

 

とは言っても、ドイツの健康保険制度をご存じないので、加入されていない日本人がほとんどです。

王冠やインプラントが必要になってから、

「今から歯科追加保険に入れますか。」

と、お問い合わせをいただきます。

保険会社がこれから数千ユーロのインプラントの治療を受ける人に、毎月12ユーロの保険を販売すると、大赤字になります。

そんな商売をしている保険会社はありません。

厳密に言えば、治療が必要になってから入れる保険もあるんです。

でも、お金が節約できると思ったら大間違い。

数千ユーロの治療費を払っても、会社が黒字になるような条件になっています。

すなわち10年間の保険契約義務で、保険料が50ユーロ/月。

10年間で6000ユーロを、保険会社に納めることになります。

6000ユーロも払うなら、銀行からお金を借りて健康保険がもってくれない部分は自費で治療、毎月借金を返していくほうが安いです。

そんな体験をされたくない方は、健康なうちに上述の対策をとってください。

ハウス ドクター制度とは?

ハウス ドクター制度とは?

ドイツの健康保険制度は基本、ハウス ドクター制度です。

「何ですか、それは?」

という方の方が多いと思うので、解説しておきます。

ハウス ドクターとは日本語で言えばかかりつけ医。

通常は内科医が、このかかりつけ医になります。

ドイツでかかりつけ医を探す際は

  • 内科 / Innere Medizin
  • ハウス ドクター / Hausarzt

でぐぐってください。

体調が悪いとまずはこのかかりつけ医で検診を受けて、(必要な場合は)専門医へ紹介されるというのが、ハウス ドクター制度です。

ハウス ドクター制度の意義

日本人なら、

「なんで最初から専門医に行ってはいけないの?」

と、思います。

ハウス ドクター制度が導入された理由は、

  • 病院・専門医の負担経験
  • 医療費の軽減
  • 患者のデータの一元管理

にあると言われています。

専門医の診療所を、その医師の専門分野と関係のない症状で訪問する人が多いんです。

風邪の症状なのに産婦人科が近くにあるので、産婦人科に行くなどが典型です。

「俺だけなら構わないだろう。」

と思っているアナタ!

そんな方が多いので、急いで産婦人科に診てもらう必要のある患者が、長く待たされることになります。

さらには素人が症状から病気を推測して専門医に行くと、原因は別の箇所にあったり、、。

こうした素人の判断で誤った専門医に行くと医療費が増し、患者詰まりを引き起こします。

あるいは患者が重体で症状を伝えることができない場合、病院はハウス ドクターに聞けば一発で過去の症歴、処方された薬がわかります。

こうして速やかな治療が可能になります。

こうした理由があってドイツの健康保険制度には、ハウス ドクター制度が導入されました。

患者紹介状 Überweisung

ドイツの健康保険制度 患者紹介状 Überweisung

ドイツの健康保険制度では、ハウス ドクターから専門医に紹介してもらう事を、

“Überweisung” (ユーバーヴァイズンク)

と言います。

そう、銀行の送金/振替と同じ言葉です。

上の写真は自宅の近くにあった整形外科 / Orthopäde から、手術の為に病院に紹介してもらった紹介状 / Überweisungsschein です。

最近は日本でも

「病院での診察には紹介状が必要です。」

と言われます。

同じ原理です。

間違っても最初から病院に行かないでください。

病院は専門・緊急治療を施す場なので、風邪や下痢で訪問する場所ではありませぬ。

紹介状がないと一部自腹制度

以前は

「国民皆保険の加入者は、ハウス ドクターで紹介状を貰ってから専門医を訪問するべし。これをしないと10ユーロの診察費が自腹。」

という

「紹介状がないと一部自腹制度」

が導入されました。

もっとも、

「盲腸でもわざわざハウス ドクターに行くのか?」

「その意義は?」

と、もっともな議論が起こり、紹介状がないと一部自腹制度は廃止されました。

これがドイツのいい所。

おかしな法令は次々に改正されていきます。

なので基本、最初から専門医にかかっても問題はありません。

でも病院には緊急時以外には、行かないようにしましょう。

注釈 – 低所得者に優しい国民皆保険

*1       複数形です。単数形なら”Krankenkasse”です。

*2       生活保護を受けていれば、薬代も無料です。

*3       ドイツの病院でもタオルは要持参です。日本の病院でナイフとフォークを頼むと別料金を請求されて、目が点になりました!

*4      コロナワクチン接種を受けると、ここに記載されます。これが接種を受けた証拠になります。

*5       ドイツで永住権を持っている人、あるいは以前、ドイツで会社員をしていて起業した外国人は、引き続き国民皆保険に加入できます。

*6        加入される健康保険で保険料に若干の違いがあります。

*7       私は自営業なので国民健康保険への加入料は全額自己負担、毎月430ユーロ払ってました。

*8        保険料を決めるのは自由ですが、値上げの根拠に欠けると訴えられて負けます。

 

*9      加入される保険によって異なるので、50%は目安です。