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ドイツ 16兆円のコロナ景気対策 – 消費税も減額!

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ドイツ 16兆円のコロナ景気対策 - 消費税も減額!

6月3日、政府は2日間に渡る21時間の協議の結果、 16兆円のコロナ景気対策 で、連立与党内で合意に達したと発表した。

参照 : welt.de

この景気支援はコロナ危機で落ち込んだ消費を刺激するものだが、連立政府はこの対策で幅広い層がこの恩恵を受けれるよう苦心にした。

一方、ドイツの基幹産業である車業界はリーマンショックの際に導入された、

「新車購入奨励金」

を要求していた。

当時この対策で助かったのは、外国の車メーカーや車を買う余裕のある人。これは日本政府のコロナ景気対策の「Go To キャンペーン」と一緒で、一部の業界、国民にしか恩恵がない。

これは明らかに不公平だし、旅行に行く余裕のない、本来真っ先に助けるべき低所得層には何の恩恵もない。

しかしフォルクスヴァーゲン、BMW、メルセデスの本拠のある州知事は、新車購入奨励金を要求したために、合意(妥協)するまでに丸2日間もかかった。

日本でも一行程度の報道はされていたが、完全な内容ではなかったので、ご存じないかたがほとんどだろう。どんな景気対策になったのか、紹介してみたい。

ドイツ 16兆円のコロナ景気対策

まずは景気対策の規模から始めよう。

ドイツ政府の景気対策は減税、購入奨励金、給付金などをすべて合わせると、1億3000万ユーロの規模になる。勿論、戦後、最大規模の経済刺激対策だ。

財務大臣は政府の景気対策の立案において、

  • できるだけ多くの国民層が恩恵を受ける事
  • 素早い支援で景気の落ち込みに対応する事

の点が欠かせないと語った。

ちなみに安倍首相が4月に導入した持続化給付金、5月に導入した10万円の特別給付金、6月中旬になっても未だに申請書さえ届いていない。幾ら過去最大規模の経済対策でも、必要な人にすぐに届かないのでは意味がないとは、この事を言う。

16兆円のコロナ景気対策 の中身

ドイツ政府が固めたコロナ景気対策は、その範囲がとても広い。主要な対策だけでも、以下の通りで、かなりの広範囲にわたっている。

  • 消費税の減額
  • 子供を持つ家族への特別給付金
  • 電気自動車購入奨励金
  • 電気料金の値下げ
  • 鉄道への支援
  • 地方自治体への金融支援
  • 社会保障制度への金融支援
  • 企業継続給付金制度

ではそれぞれの対策の細部を見ていこう。

消費税の減額

コロナ景気対策の目玉が、日本政府が「実行不可能」として導入を見送った、消費税の減額だ。現在19%の消費税は16%に、食料品などの軽減税率は7%から5%に減額される。

「だったら、今、買わなくても来年でいいわ。」

と国民が考えては消費税減額の威力を発揮しないので、7月~12月末日までの半年間に限られる。2021年1月1日の0時から、消費税は再び現在の率に戻ります。

これに加えてドイツ政府はすでに5月の時点で、レストランで課される消費税を19%から7%に減額している。

参照 : welt.de

この措置は2021年6月まで維持される。

消費税減額への非難

政府の政策を批判する人は、「レストランや理髪店、あるいは小売業者が本当に価格を下げるか、店舗次第だ。」と指摘している。

 どういう意味ですか?

ドイツの大手家電製品店の「十八番」が、「消費税還元セール]です。毎年新年には、「1週間、全商品19%減額セール!」を行います。

お得じゃない!と思ったあなたは、騙され安いのでご注意あれ。

セールの前に税商品の値札を変更、19%値上げするんです。ですから消費税還元セールでも、払う額は前と一緒です。日本でも無印良品などが、この商法を採用しているほど、小売り業界では十八番です。

今回の消費税減額でも、同じことが危惧されます。

あるいはわずかに減額して、残りは店舗の利益になる事も十分にあります。政府は、「それは各店舗の判断」としており、値段が下がると決まったわけではありません。

言い換えれば、政府はコロナ危機でとりわけ苦しんだレストランや理髪店などが、減額をまるまるポケットに入れることも、敢えて許容しています。

大事なのは店舗の収支が改善され、雇用が守られる事。この政策は是非、日本政府にもコピーしてもらいたい。

子供を持つ家庭への給付金

すでに先月、子供給付金が100ユーロ/人増額されています。ドイツ政府は家庭を重視する政策をここでも実施、これまの給付金に加えて子供一人あたり300ユーロを上乗せ支給します。

ただし一回きり。さらにこの給付金は所得と見なされ、年末の確定申告で調整されます。

 どういう意味ですか?

収入が多いお金持ちは、受給額の大半を所得税として納めます。所得が低い家庭は、給付金がまるまるポケットに入り、所得税で払い戻すこともなし。シングルマザーを救う、素晴らしい政策です。

電気自動車購入奨励金

ドイツではこれまで度々、電気自動車購入奨励金を導入してきました。


が、未だに登録台数が(期待しているほど)増えません。一見すると大ヒットのように見えますが、

参照 : de.statista.com

これまで登録台数があまりに少なかっただけ。実際、全登録台数のわずか3.6%です。日本ではハイブリット車を含めない電気自動車の登録台数は12万台と、ドイツよりもさらに少ない。

その原因は充電する施設の少なさ、それに暴利をむさぼる充電施設の悪徳経営者(ドイツの話です)。

ドイツでは一回、充電施設を利用すると、使用電気料に関係なく70ユーロもとられます(良心的な経営者もわずかにあります)。おまけに値段は何処にも表記されておらず、口座からお金が引き落とされてびっくり!

なかなか電気自動車改善に踏み切れない国民の背中を押するため、政府は自動車業界からの、「内燃エンジン車にも奨励金を!」を拒否、電気自動車(&ハイブリット)購入奨励金を3000ユーロから6000ユーロに倍増!(2021年12月末まで)。

奨励金の対象になる車は新車の価格が(税抜き)4万ユーロまで。

さらには25億ユーロを、充電施設の拡充に充てます。2021年からは利用費を実際の電気料金に合わせることも義務化。これで電気自動車がブレイクするだろうか?

電気料金の値下げ

ドイツの電気代は欧州で2番目に高いです。

原因は再生エネルギーの導入。でもその甲斐あって、総発電量の55%が、再生可能エネルギーです。

参照 : pv-magazine.de

日本は安倍政権の原子力、火力発電推進政策で遅々とし再生可能エネルギーの構築が進まず、わずか18%。しかしながら、「日本は目標に達した。」と自画自賛。国民の環境意識も低く、大幅な改善は望まれそうにない。

一方で再生可能エネルギーの増加は、電気代の上昇をもたらすことになる。ドイツの電気代が高いのは EEG-Umlage という補助金を国民が払う電気代に上乗せされているから。現在この補助金は6.75セント/ Kw。

三人程度の家庭なら1年で消費する電気が5000Kw程度なので、340ユーロ払っている計算になる。

政府はこの補助金を2021年には6.5セント/ Kw、2022年には6セント/ KWに減額する。3人家族なら2022年には38ユーロほどの減額になる。大した額ではないが、これまで毎年増えていた補助金が減るだけでも、嬉しい。

鉄道への支援 – 16兆円のコロナ景気対策

コロナ危機で人の動きが止まったが、鉄道はインフラ施設として運行を迫られた。

このため大赤字を抱え込むことになった。政府は鉄道に50億ユーロの財政支援を計画、さらには市内電車網の拡充、整備にさらに25億ユーロを用意している。

地方自治体への金融支援

日本には住民税なるものがあり、自治体の大事な財源になっている。

「ドイツの住民税は幾らですか?」

とドイツに興味を持っている方に聞かれるのだが、ドイツには住民税はない。ドイツでは自治体の収入源になっているのは、その自治体にある会社が払う法人税です。

当然、フルクスヴァーゲンやメルセデス、アデイダスなどの世界的な大企業がある街は、税金が潤っています。企業を誘致すると、

  • 雇用状況の改善
  • 地方財政の改善

が見込まれるので、どこも血眼です。ところがあのフルクスヴァーゲンやメルセデスでも生産ラインが止まりました。大赤字により自治体に収める税金が大幅減額。

大企業はもとより、レストランやホテルが払う税金も地方自治体の歳入です。これが消えてしまったので、すでに赤字状態だった自治体は瀕死の状態。

そこで政府は欠けると予想される税収入の60億ユーロを肩代わりします。

社会保障制度のへの金融支援

西欧では、社会的弱者への支援が充実しています。

その支援の資金源は、働いてる人が税金の他に納めている社会保障費(健康保険費用、介護保険、失業保険費用等)です。

しかしコロナ危機で働く人が大幅に減少。数百万の労働者が短縮労働時間制度で自宅待機を余儀なくされています。

結果、社会保障制度の歳入が大幅に減り、歳出がマックスに。このままでは健康保険の掛け金、失業保険の掛け金の上昇につながります。

ドイツが21世紀初頭に経験した空前の大不況は、この社会保障費の増大が原因でした。

同じ間違いを犯さないため、政府は不足する社会保障費を肩代わり、健康保険の掛け金、失業保険の掛け金の上昇を防ぎます。

企業継続給付金制度

コロナショックにより店舗は営業停止、旅行 & 催し物は禁止されていた為、多くの企業は(まだ倒産していなければ)存続の瀬戸際に立っています。一番切羽詰まっているのが家賃や人件費などの固定費です。

こうした企業を救い、雇用を守るために政府は(これまでの支援金に加えて)、250億ユーロ(3兆円)の継続給付金制度を導入します。

制度の対象になる企業・業種は以下の通り

  • ホテル
  • レストラン
  • クラブ & バー
  • 旅行代理店
  • サーカス等
  • スポーツ団体

給付金は6月~8月まで3か月間に限られて支給され、上限は15万ユーロまで。

経済界からの反響

車業界は内燃エンジン車も含めた購入奨励金を期待していたので不満もあったが、消費税の減額で留飲を下げた。

ほぼすべての分野がこのコロナ景気対策で得点を受けるので、経済界からの反響は概ね、好評だった。勿論、

「消費税を16%にして、また19%にするには膨大な手間と費用がかかる。」

という苦情はあったが、もし消費税の減税がなければもっと文句を言っていただろうから、贅沢な問題の分野と言える。

蟻とキリギリス

これまではドイツは欧州諸国から、

「お金を貯めこまないで、もっと国内消費を活性化するように、財政出動すべきだ。」

と非難されてきた。しかしこの危機になって、これまでため込んだ金を一気に放出する政策に打って出た。これをみた欧州諸国からは、ぐうの音しか出てこない。

国内生産高で比較した場合、ドイツの経済政策の財政出動額は世界一。これまで蟻のようにせっせと、冬の為にお金を貯めこんできたのが幸いした。お陰で5月の失業者の増加は、わずか17万人の上昇にとどまった。

一方、すでに夏(景気がいい頃)から借金漬けの国(日本やイタリアの事)は、そんな余裕がない。結果、日本では4月に80万人も失業者が増えている。ドイツのほぼ5倍だ。完全シャットダウンをしなかったのに。

今後も「Go To キャンペーン」程度のコロナ経済対策で済ませると、ますます倒産する会社が増え、失業率が上昇、消費はますます冷え込むことになる。だから景気がいいときに国の財政を健全化すべきだったのだ。

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執筆者:

nishi

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