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ベルリン新空港 BER 9年遅れで今度は本当に完成?

投稿日:2019年8月16日 更新日:

ベルリン空港 BER 9年遅れで今度は本当に完成?

ドイツの首都、ベルリンには空港が3つもある。少し前までは7つもあった!

これは外国人にとっては頭痛の種で、

「一体、何処着くの?」

に始まって、

「どうやって市内にまで行くの?」

と、悩みが絶えなかった。ベルリンにとっても空港が3つもあると、騒音問題を3つも抱えることになり、あまりよろしくなかった。

そこで空港をひとつにまとめることにした。これがベルリン市にとっての、悪夢の始まりだ。ベルリン新空港建設の工事開始から14年も経っているのに、未だに完成していない。

何故、こんな羽目になったのか、せめて要点だけでも解説してみよう。

なんで空港が3つもあるの?

ベルリンにはテーゲル空港 / Tegel / TXL 、シェーネフェルト空港 / Schönefeld / SXF、それにテンペルホーフ空港 / Tempelhof / THF があります。

3つもあるのは、分断されていたベルリンの複雑な歴史が原因だ。

テーゲル空港 / Tegel / TXL

現在の主要空港はテーゲル空港。

第一次大戦前、軍の射撃場を整備してドイツ空軍の飛行場として開港した。もっとも当時離着陸していのは、巨大な飛行船。戦争で負けて軍事用飛行機の保有が禁止されたので、

「じゃ、ロケットを飛ばそう!」

と、ロケットの試験場になった。

戦後、NASAで月面に人を送ることになるフォン ブラウンも、ここでロケットのテスト(成功後、ペーネミュンデに引っ越し)を行った。戦争中は高射砲の練習射撃場として使用された。

戦後、東から大量の難民がやってきくると、この広大な空き地に戦争難民用の公共住宅を作ることが決まった。

テーゲル空港の始まり

東ドイツを占領していたソビエトにとって、西ベルリンはとても邪魔な存在。

その西ベルリンの息の根を止めるべく、ソビエトは何の前触れもなく物資の搬入を禁止した。西ベルリン市民を飢餓から救うため、「空の橋」と呼ばれる大空輸作戦が開始される。テンペルホーフ空港だけでは、西ベルリン市民の生活に必要ば物資の輸送には不可能だった。

「じゃ、テーゲルを空港にしちゃおう! 」

と即座に決定、穴だらけだったこの場所を90日で整備して、飛行機が離発着を開始した。

その後、滑走路は6週間で2.4km(当時、欧州では最長)に延長されたのが、テーゲル空港の始まり。今でも定期便はこの空港を使用しています。

テーゲル空港はベルリンの北の市街地にあり、中心部までバスで20分。とっても便利な空港です。

参照 : berlin-airport.de

テーゲル空港

シェーネフェルト空港 / Schönefeld / SXF

テーゲル空港に次ぐ第二の空港が、シェーネフェルト空港だ。

ナチスが政権を取ると、ベルサイユ条約で禁止されている筈の航空機産業が、一気に開花を始める。ベルリンの南、中心部から33Km離れたこの場所に、Henschel 飛行機会社が設立された。その飛行機の離着用に滑走路が設けられたが、これが後のシェーネフェルト空港だ。

戦後、この地域は東ベルリンの管轄下になったので、ソビエトからの飛行機が離着陸することになる。これに加えて、戦勝国、イギリス、アメリカ、フランスも離発着が許可されていたので、空港として発展。

今日ではロシアからの便、それにチャーター便が飛んでいる。空港には空気駅があるので、市内までは電車で20分ほどで移動できてしまう。

参照 : berlin-airport.de

テンペルホーフ空港 / Tempelhof / THF

テンペルホーフ空港

ベルリンに3つ(本当は7つ)あった空港の内、一番でかかったのが、テンペルホーフ空港だ。

この場所は元々、プロイセン軍の練兵場だった。第一次大戦後、ベルリンの中心にあるこの広大な場所を、民間用の空港に改造することが決まる。その後、何度も改築、増築が行われ、1941年には世界で一番でかい空港になった。

第二次大戦後、民間機の離発着にも利用されていたが、主に米軍の軍事飛行場として利用された。ドイツの統合により米軍がベルリンから撤収すると、民間の空港として人気を博した。

しかしこの空港には大きな欠点があった。滑走路が短いので、大型の飛行機の離発着が不可能だった。

これに加えてベルリンの真ん中にあると、よろしくない点が多かった。ある墜落事故では、飛行機は近郊のアパートに激突した。

不幸中の幸、死者はパイロットだけだったが、これが原因となり、郊外にベルリンの主要空港を建設することが決まった(2006年)。テンペルホーフ空港は2008年、閉鎖された。

空港跡地と建物は、地元民の遠足先、また観光先として人気を博している。ナチス時代のエンブレムなどがそのまま残っているので、空港自体がまるで博物館のような役目を果たしている。

ベルリン ブランデンブルク空港 / BER

シェーネフェルト空港を第二滑走路として利用すれば、滑走路を一本作るだけで(簡単に)大空港ができちゃう!

こうしてシェーネフェルト空港の南に建設が始まった新空港の正式名前は、ベルリン ブランデンブルク空港 / BER だ。

「そのブランデンなんとかは、何ですか。?」

これは州の名前です。そもそもベルリンは、街だけで州を形成する珍しい街。そのベルリンは広大なブランデンブルク州の中に浮かぶ、小さな島のような存在。

新空港はシェーネフェルト空港に隣接して建設されているが、ベルリンの州境を超えて、ブランデンブルク州の土地に広がっている。なのに、「ベルリン空港」とやったら、問題になる。

そこで、仲良くベルリン ブランデンブルク空港と呼ぶことにした。

ベルリン ブランデンブルク空港の工事が始まったのは2006年で、2011年には開港する予定だった。

非常ドアが作動しない

当初の完成予定日が守られないのは、まあ仕方ない。

ベルリン新空港は工事現場の敷地面積では、欧州で一番大きな工事現場。そんな大きな工事では、何かしら問題が出てくるもの。

だから完成時期が1年遅れ、2012年になっても、それほど大きな騒ぎにはならなかった。2012年、ほとんどの工事を終えて、火災時の安全機能のチェックを受けることになった。

その際、延焼を防ぐはずの非常ドアが作動しなかった。空港関係者は、

「すぐに原因を調べて改善するので、開港予定に変更はない。」

と、大見得を切った。ところが何をやっても、非常ドアは作動しなかった。数十キロにも及ぶ回線のどこかに問題があるのだが、何処に問題があるのかわからなかった。

こうして2012年の完成、開港予定は再び延期となり、次は2014~15年の開港を目指すことになった。

小さ過ぎる新空港

完成が三度延期されたことで、空港の計画自体を見直す暇ができてしまった。

一旦ケチがつくと、滅多にひとつだけで終わることがないのが、この手の大型工事の特徴。ベルリン新空港も例外ではなく、「空港の規模が小さ過ぎる。」という非難の声があがった。

というのも、空港内に備え付けられたシックなデザインのチェックインカウンターは、120個。他の国際空港には、224ものカウンターがある。

この120個のカウンターから預けた荷物を運ぶだけでも、20個のベルトコンベアが必要だ。しかし、備え付けれられたのはたったの8個だけ。

参照 : tagesspiegel.de

一体、どんな試算をしたら、首都の新空港がこんな計画になるのだろう?空港の計画を監督する役員は、何をしていたんだろう?

「これではオープン早々に拡張工事が必要になる。」

と非難の声があがった。実際、新空港は年間利用者数、2200万人/年で計画されている。ところが2017年にベルリンに空の便でやってきた乗客数は、3300万人。

新空港がオープンすると、テーゲル空港とシェーネフェルト空港は閉鎖される予定だが、どうやって新空港だけで3300万人の乗客を処理できるのか?

ましてや2035年には利用客数は、5100万人に上昇するとみられている。

参照 : focus.de

言い換えれば、テーゲル空港とシェーネフェルト空港を今後も利用しないと、新空港はこれから15年で増加する利用客数だけで、ほぼ能力の限界に達する。

これではテーゲル空港とシェーネフェルト空港を閉鎖するのは到底無理な話で、またしてもベルリンは3つの空港の時代に逆戻りになってしまう。

ベルリン新空港 BER -スキャンダルに次ぐスキャンダル

非常ドアが作動しない件は、思っていたよりゆゆしき事態であったことが判明した。

建物の一部を取り壊して、作り直す必要があった。この時点で初めて、責任問題が話題になった。工事費用はすでに見積額を超え、今後、幾ら必要になるか、試算もできない哀れな状態。

空港管理会社の取り締まり役員には、ベルリンとブランデンブルクの州知事が座っている。しかし両氏はお給料だけもらって、何も仕事をしていないのは明らかだった。

自分でできないなら、せめて誰かに代わって仕事をやらせるくらいの思慮があってもよかった。ドイツ全土からの散々のブーイングで、州知事は役職からの辞任を余儀なくされた。

参照 : handelsblatt.com

空港管理会社は、これまで空港の工事を施工していた業者を、手抜き工事の廉で契約破棄した。するとその会社は怒って、空港の設計計画書をもっていってしまった。

こうして不具合を直すにも、設計図がないので、何処から手を付けたらいいかわからないという状況が生じた。

その後、空港社長が工事施工会社から収賄を受けた件で検挙された。この社長、ドイツ人にして珍しく反省できる才能があり、賄賂の15000ユーロを施工会社からもらって、水増しした工事費で仕事を発注した事を認めた。

参照 : spiegel

この関連で賄賂を贈った工事施工会社が倒産して、工事は完全にストップした。こうして最後のかすかな希望、2015年の空港をオープンするも実現不可能となった。

こうした一連のスキャンダルで付いたあだ名は、問題空港 / “Pannenflughafen”だ。

公正を期すために言っておくと、空港内に設けられた空港駅、駐車場、それに歯医者は完成している。利用客は工事現場の作業員だけだが、ちゃんと空港駅に電車が止まる。

そして空港の広大な駐車場は、排ガススキャンダルで売れなくなった車をパークするため、フルクスヴァーゲン社がレンタル、そして歯医者には工事の作業者が通っている。

ターミナル 2 完成

冗談で、「ほとんど完成した空港を全部壊して、作り直したほうがいい。」と言われていた。これが冗談では済まず、完成していた空港は部分的に取り壊された。また増加する利用客に備えるため、(コストをカットするため)簡単なコンクリート作りのターミナル2が作られることになった。

そしてこのターミナル2は、なんと工期通りに2019年に完成した。

参照 : Frankfurter Allgemeine

このターミナル完成により、ベルリン ブランデンブルク空港は3千万の利用客に対応できると、空港関係者は自信満々。もっともこれにはシェーネフェルト空港が、新空港の第二滑走路として引き続き利用されることが条件だ。

ベルリン新空港 BER 9年遅れで今度は本当に完成?

空港責任者は、

「もう作り直しは終わった。後は完成向けて工事をするだけ。」

と胸を張り、ベルリン ブランデンブルク空港の開港予定日を、2020年の10月としている。工事が始まってから14年後で、最初の完成予定から9年も遅れているが、これが今のドイツの実力だ。

その他の大型工事、ハンブルクのエルプフィルハーモニーからシュトットガルトの中央駅まで、工期が守られた試しがない。

新空港の総工事費用も立派なもので、当初の見積もりは20億ユーロ。2020年10月にオープンした場合の工事費用は、73億ユーロになると見積もられている。

参照 : Spiegel

ベルリンにはそんな金はないので、工事費はバイエルン州、BW州など、お金持ちの州が払っているので、【他人事】ではない。

今、この来年の完成時期を巡って、ドイツ中で賭けが大流行り。面子を失くしたベルリン市と市民は、「完成する。」と言うが、残る人は大いにこの完成時期を疑っている。

ベルリン新空港 BER 本当にオープン!

ありとあらゆるジョークの対象になっていたベルリン新空港 BER 、10月31日に本当にオープンしました。

BER オープンに備えて特別なペイントを施されたルフトハンザ機が最初に到着する手筈になっていましたが、コロナで暇な筈なのにまた遅延。

結果、二番目に到着する筈だった Easyjet が先に到着するというハプニング付き。Easyjet は邪魔にならないように空港の端っこでルフトハンザの到着を待ち、ルフトハンザが到着してからやっと、ターミナルに移動させてもらえました。

その後、ルフトハンザとEasyjetの社長、空港の責任者、政治家が出席して、おごそかな開会式。

新空港 BER もう倒産?

オープンしたばかりの新空港だが、もう事実上倒産している。

10月末までに支払う請求書の総額が3億ユーロ。オープンしたものの、コロナで休業状態に近い空港に払えるわけがない。

そこで州政府が援助をする予定だが、EU委員会から許可が出ていない。空港と言えど、私企業。政府が補助金で支援すると、他の空港との競争を妨げることになるので、EUからの許可がいる。

そこで補助金ではなく、当面は借入金としてお金を工面、倒産を回避することになっている。

空港は完成したもの、コロナがなくても2023年までにさらに5億ユーロもの補助金が必要とされている。コロナで第二のシャットダウンの真っただ中、この費用がさらに膨らむのは必至。

「永遠に工事中の空港」というレッテルは返上したが、今後は「万年赤字空港」の新しいレッテルが張られることになる。このレッテルも、そう簡単には剥がれそうにない。

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執筆者:

nishi

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