ドイツの達人になる 投資

クラウド ファンディング Bergfürst 投資額全損!?

投稿日:2021年5月18日 更新日:


ドイツではもう10年以上も不動産ブームが続いている。

そしてやってきたコロナ禍。

「どうせ外出できないなら、マヨルカ島にマンションを買って住みたい。」

と、高級アパートの需要は供給を上回った。

すると、

「なんとか俺も不動産ブームに乗れないものか?」

と考える小市民。

そんな市民の欲求を満たしてくれるのが、日本でも人気のクラウド ファンディングだ。

クラウド ファンディング とは?

個人や企業が新しい事業を始める際に、真っ先に必要になるのがお金。

銀行が金を貸してくれればいいが、保証人か担保が必要だ。

今時、

「成功するかどうかわからない事業の保証人になってもいい。」

という人は居ないし、担保になる財産がないケースが大半。

そんなケースで事業者が頼るのが、クラウド ファンディング。

プラットフォーム上で事業を紹介して、資金を提供してくれる人を探す。

これが古典的なクラウド ファンディングだが、最近は新しい形のクラウド ファンディングも登場している。

新しい形のクラウド ファンディング

事業の発案者が自身のお金、あるいはクラウド ファンディングを使って、商品を開発する。

このような形で生産された商品は、生産する数が少ないので、かなり割高。

市場価格の2倍の価格であることも珍しくない。

名前の知られていない、他社の2倍の価格の製品をアマゾンで売ろうにも、なかなか売れない。

ナイキやアデイダスのシューズの代わりに、名もない会社の価格が2倍もするシューズを買いたい人は少ない。

そこでクラウド ファンディングを利用する。

開発した製品のバックグランドを紹介して、支援者(購入者)を募る。

すると

「捨てる神あれば拾う神あり」

という通りで、購入してくれる人は(アマゾンや楽天より)見つかりやすい。

ただ品物を売るだけでなく、品物の裏にあるストーリー(逸話)を消費者に紹介する事で、クラウドファンディングは意外と多くの支持者を獲得した。

アマゾンや楽天に比べれば、クラウドファンディング上での販売数は少ないが、それでもスタートアップの資金面での支えになっている。

不動産クラウド ファンディング Bergfürst

クラウド ファンディングを提供する企業は、プラットフォーマー呼ばれる。

日本で言えばメルカリのように、プラットフォーム(ホームページ)上に企画・事業を掲載して、手数料を取る事で収入を得ている。

そんなプラットフォーマーの中に、不動産へのクラウド ファインディングに特化した”Bergfürst”がある。

通常、不動産に投資するには(少なくても)数千万円程度の、まとまった額が必要になる。

その結果、10年以上も続く空前の不動産ブームなのに、儲けているのは大手だけ。

「俺の少ない資金でも、不動産ブームで一儲けしたい。」

と考えるドイツ人のハートをがっしり捉えたのが、不動産 クラウド ファインディングの”Bergfürst”だ。

たったの10ユーロから不動産に投資できる上、年率で最高7%までの還元を謳っている。

Mallorka Bellavista 71

使い方はこう。

“Bergfürst”のホームページに、

「クラウド ファインディングを利用して、資金を集めたい。」

とマンションの開発業者などが、資金集めをしたい不動産物件を掲載する。

消費者はこうした掲載物件を見て、

「これは儲かりそう。」

という物件に投資する。

その中にドイツ人のハワイ、マヨルカ島 / Mallorka の”Bellavisuta71″という物件があった。

Bellavista 71 Mallorca from BERGFÜRST on Vimeo.

マヨルカ島は地中海に浮かぶスペイン領の島。温暖な気候で知られ、ドイツ人に大人気。

多くの日本人がハワイに休暇に入ったり、住んだりしているのと同様に、多くのドイツ人が大挙してマヨルカ島を訪れている。

そのマヨルカ島に、開発業者は銀行から250万ユーロを借り、市民からも2百万ユーロの資金を集めて豪華な別荘を建てる。

その別荘をお金持ちに、6百50万ユーロで売却するという計画だ。

出資してくれれば、別荘が出来上がるまでの間、2023年まで

「7%の配当金を払います。」

というものだった。

bergfürst 投資条件

この高い配当金に説得されて3000人が投資、2百万ユーロが集まった。そ

して最初の利益配当もちゃんと行われた。2019年12月の話だ。

ところがである。

2回目の配当はなく、1年以上も開発業者からは音信不通の状況が続いている。

ちなみに高級別荘が建設される土地に建っているのは、ただの廃墟。

この廃墟を撤去して工事が始まる筈だったが、工事は勿論、土地の測量さえも始まっていない。

開発業者はすでに破産?

問題を複雑にしているのが、開発業者の所在地。

責任者はスイスに住んでいるので、お金の取り立てが難しい。

約束された支払いがされておらず、問い合わせも無視されているので、”Bergfürst”は、

「信用のおける開発業者」

として賛美している開発業者を裁判所に訴え、強制執行人を開発業者の所在地に派遣した。

ところが開発責任者は裁判所から派遣された執行人に対し、

「財産は持っていない。」

と宣誓する書類にサインをした。

“Bergfürst”は投資家に、

「投資家たお金を守るため、開発業者から十分な担保を預かっています。」

と謳っている。

約束したお金が支払われないので、”Bergfürst”は今後、この

「十分な担保」

を現金化することになる。

もし”Bergfürst”が本当に、

「十分な担保」

を預かっていれば問題ないが、、。

投資額全損!?

クラウド ファインディングを提供する会社は、資金調達が成功した場合に取る手数料で儲けている。

投資家の金を守るために、

「十分な担保」

を要求すると、掲載する物件数が減り、業績が悪化する。

そこで、

「十分な担保を預かっています。」

と約束しているのに、実際には二束三文の担保しか預からないケースも多い。

仮に担保に幾らかの価値があり、現金化されたとしよう。

その際、まずは開発業者にお金を貸した銀行に請求権がある。

銀行が貸した金を全部回収した後で、それでも残りがあれば、”Bergfürst”の投資家に支払われる。

早い話、投資額が全損になる確率が極めて高い。

その時点でまんまと騙された個人投資家は、

「十分な担保を預かっています。」

と謳っている”Bergfürst”に対して損害賠償を請求してくるから、訴えられるのは時間の問題だ。

プラットフォーム投資のリスク

ここではっきりさせておきたいのは、”Bergfürst”自身は詐欺に関与しておらず、投資家同様に詐欺師に騙された形になる事。

もっとも今の時点でも詐欺物件への投資を、ホームページから消す処置さえも取っていない。

さらには”Bergfürst”が掲載していたクラウド ファインディングで、開発業者が倒産(夜逃げ)したのは、これが初めてではない。

“Bergfürst”は、不動産物件へのクラウドファインディングでは、業界トップのスタートアップ。

大手の銀行(コメルツ銀行)も経営に参加していますが、このずさんな危機管理。

プラットフォーマーは天使ではなく、金儲けの手段としてクラウド ファインディングを提供している事を忘れてはならない。

日本なら大丈夫?

危険を認識していない人が多いが、日本のクラウド ファインディングでも悪質な詐欺が横行している。

そして実際に騙されても、プラットフォーマーは責任を取ってくれない事を肝に銘じておこう。

日本のプラットフォーマーのホームページには、

「約束された謝礼(リターン)が払われない場合は、これが行われれるようにお話をさせていただきます。」

と、愚にも付かない約束事しか書かれていない。

もっともクラウド ファインディング上で3万円もするリュックサックを買ったり、1万円の寄付でTシャツをもらう程度なら、騙される確率が低い。

例え騙されても、3万円で済めば勉強代と考えて諦めることができる。

しかしクラウド ファインディング上での不動産投資で詐欺に遭うと、勉強代というわけにはいかない。

このような投資詐欺が発覚する度に同じ事を書いていますが、5%以上の配当を約束する投資には要注意。

配当率が7%を超えると、ほぼ確実に詐欺です。

-ドイツの達人になる, 投資

執筆者:

nishi

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