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ビン ラーデンのボデイガード

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ジレンマ | ドイツの最新情報, スキャンダル | ドイツ留学専門店
故国送還を待つ難民。

1997年、チュニジアから留学生がドイツにやってきた。当初、デユッセルドルフの郊外にある町、クレーフェルドで繊維加工技術について学んだが、学業を変更、情報学と電気工学に変更した。学業後、本国に帰らずに2005年、ボッホムに生活の拠点を移した。問題なのは1999年~2005年までの経歴がすっぽり抜けていること。ドイツの諜報局はこのチュニジア人がアフガニスタンに渡ってアルカイダの一員になり、軍事教育を受けてから、ビン ラーデンのボデイガードになったことを把握していた

テロ危険人物

ドイツの警察はこのチュニジア人を「テロ危険人物」に指名、「テロ容疑」で書類送検したが、アルカイダに加わっていた証拠を裁判所に出せなかった。そこでこのチュニジア人を強制送還するわけにもいかず、日々の生活を監視することしかできなかった。

日本なら滞在ビザを無効にして国外追放することも可能だろうが、法治国家ではそう簡単に行かない。チュニジアに強制送還する場合、チュニジア政府から「当事者が帰国しても、拷問などの非人道的な措置を放棄する。」という明確な意思表示が必要なのだ。そしてチュニジア政府はこれに応じなかった。

さらに大量の難民、移民が発生している国、例えばチュニジア、アルジェリア、モロッコ(それにアフリカ諸国)などは、ドイツで法を犯した人物の収監を拒否することが多い。犯罪人を受け入れなくないのだ。そこで「国籍を証明できれば強制送還者を受け入れるが、定期便で送ること。」という条件をつけた。お陰で国外強制送還を妨げたい移民は、パスポートを破棄さえすれば、ドイツの警察にはお手上げだ。こうしてドイツ国内には難民、移民申請を拒否された数万人もの人物が滞在している。

ベルリンでテロを行なったチュニジア人も、チュニジアのパスポートを捨ててしまっており、チュニジア政府はこれを理由に身柄の引き受けを拒否した。その挙句がベルリンでのテロだった。

この事件後、難民申請を拒否されたのにドイツに滞在している「好まざる人物」の存在が議論になった。危険人物に生活保護を払ってのうのうとドイツ国内で生活させていると、第二のテロをうみかねない。そこで政府は「身柄の引き受けに応じない国には、開発援助金を削る。」などの処置を導入した。するとチュニジアやモロッコ政府は定期便でなくても、国籍を確認できればチャーター便でも身柄を受け入れると態度を軟化させた。

ドイツ政府、正確にはこのチュニジア人の住むNRW州の内務大臣は、なんとかしてこのチュニジア人を強制送還しようと画策してきた。しかしこのチュニジア人はドイツ国籍を持つ女性と結婚していた。ドイツでは家族は社会を構成する「核」なので、「家族を守るべし。」という法律がある。もしビザが切れても、ドイツ国籍者と結婚しており、さらに子供がいれば、本国に送り返されることはまずない。一生、生活保護を受けながら死ぬまでドイツで生活できてしまう。

強制送還

このチュニジア人もまさにこの法律の抜け道を巧みに利用していた。ところが暑い7月に小さな間違いを犯した。日々、警察に出頭するように命じられていたのに、これをしなかった。ドイツの内務省は、「このチャンスを逃すと、もう二度とチャンスがない!」とこのチュニジア人の身柄拘束を命じた。警察が自宅でのうのうとしていたチュニジア人の身柄を拘束すると、NRW州はチュニジア行きの飛行機を2万ユーロでチャーターした。

チュニジア人の弁護士はゲルゼンキルチェンの行政裁判所に不当な逮捕、強制送還に対して抗議を届け出た。裁判所はこの届出を受けとると、「原告は抗議の審議中であるので、強制送還を禁じる。」と命じた。しかしこの命令書が内務省にFAXされる頃には、チュニジア人を乗せた飛行機は出発した後だった。まさに危機一髪。「チュニジア人を送還できてよかった。」と内務省では胸をなでおろしていた。
参照元 : NTV

ところがドイツは法治国家であった。

法治国家

学校の授業で習うものの、ピンとこない概念、法治国家。わかりやすく言えば、権力者や国民の感情、意見ではなく、法律によってのみ判断される国を法治国家と呼ぶ。アジアの国は法治国家と名乗っておきながら、権力者が裁判所に影響力を行使しているケースが多い。裁判官の任命権を権力者が持っていると、権力がこれを悪用して、司法に影響力を行使する。

ドイツは本当の意味での法治国家なので、この強制送還は裁判所の決定、「原告の強制送還を禁じる。」を無視した内務省の決定である。法治国家としては許されない。「すでに飛行機が離陸した後だった。」という言い訳は法治国家では通じない。飛行機がチュニスに着陸する前に内務省の役人に電話で連絡して、飛行機をUターンさせることができたからだ。

日本になら議論にさえならかっただろうが、このチュニジア人の一件はドイツが法治国家なのかどうかを示す指標になった。そして高等行政裁判所はボッフム市にこのチュニジア人をドイツに連れ帰るように命じた。これを実行しない場合は、ボッフム氏に罰金の支払いを命じた

参照元 : heute

この裁判所の決定に憤慨したNRW州の議員は、「裁判所は法律ではなく、国民の感情を考慮して判決を下すべきだ。」と口ばしってしまった。これを一度だけでもやってしまうと、法治国家は存在をやめる。ナチスの暴走を止められなかったドイツ人にとって、この言動は許すべからざれる行動だ。トルコの大統領を法律無視で非難しておきながら、自分の都合が悪いと、例外措置を設けてしまうなど、ドイツでは受け入れられない。この政治家は連日メデイアから集中砲火を受けて、「そんな意味ではなかった。」とカメラの前で発言を撤回することを迫られた。

 

チュニジアの検察局

ドイツ中で赤っ恥をかいたボッフム市だが、問題はどうやってこのビンラーデンの(元)ボデイーガードをチュニジアから連れ帰るかだ。チュニスの検察は、「チュニジア人の身柄はチュニジア政府の管轄下にあり、チュニスにて裁判を行なう。」と主張しており、そう簡単にはドイツに送還できそうにない。

と思っていたら元、ビンラーデンのボデイーガードは2週間後、検察から釈放されてしまった。もしチュニスの検察が具体的な嫌疑を持っていれば、釈放されずに、逮捕、書類送検、告訴となる筈だから、チュニスの検察も具体的な証拠は何も持っていないようだ。

ただしパスポートが没収されているので、ドイツに連れ帰るには新しいパスポートを申請、これが発効されてからドイツ領事館でドイツ入国のビザを申請しなくてはならない。チュニスの外務省が新しいパスポートをそう簡単に発行することはないので、この話題は長続きしそうだ。そしてこのチュニジア人がドイツの裁判所で判決を受けるまで、ボッフム市は罰金を払って、ドイツ中から名指しで非難されることになる。

これが法治国家でありながら、法律を無視した決定を下した者の運命だ。法治国家では、(潜在的)なテロリストであっても、善良な市民と同様の権利がある。

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執筆者:

nishi

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