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【ドイツの政治】国を代表する悪者

投稿日:2018年3月14日 更新日:

リントナー氏
連立政権を蹴ったリントナー氏

9月末の総選挙から3ヶ月も経ったのに、ドイツには未だに新政権が誕生していない。ドイツに住んでいれば否応無しにほぼ毎日、ニュースで進展(あるいは進展していない)状況を聞くことになるが、そうでない方には、「一体、どうなってるの?」と、さっぱり状況がわからない。そこで今回はどうして新政権が未だに樹立しないのか、その原因について解説してみよう。

小党分立

新政権樹立の最大の障害は、ドイツでは5つの政党が国会で議席を分ける小党分立状態になったことにある。これにより国会で過半数を制するには、3党の連立政権が必要になる。さらには3党とは言ってもCDUとCSUは大きな違いがあり、実質上、4党の大連合政権を組まなければならない。意見、支持層、政治目標が異なる4つの政党が集まって合意に達するには、お互いの相互理解、そして何よりも譲歩が欠かせないが、これをする気がないのが急進リベラル派のFDPだった。

FDPのトラウマ

かってメルケル二次政権で連立政権を組んだFDPは、政治献金で選挙戦を支援したホテル業界に税額を半額にするという露骨なえこひいき政策を実施した。4年後の選挙では選挙民の反抗に遇い、5%の得票率を割って国会から消えた。これがこの党のトラウマになった。メルケル首相と連立政権を組むと、次回の総選挙では例外なくボロボロの結果になる。

第一次メルケル政権で連立を組んだSPDは、総選挙で惨敗、首相候補と言われたシュタインブリュック氏は引退に追い込まれた。そして第三次メルケル政権でまたしても連立政権を組んだSPDは、過去2番間に悪い得票率を記録した。FDPが当初、メルケル首相との大連合政権に興味を見せなかったのも、無理はない。

しかし開票日に第二の社会民主党が、「メルケル首相との連立は有り得ない。」と連立を頭から蹴った。残るのはメルケル首相率いるCDUと仲が悪い妹党のCSU、緑の党、それにFDPの大連合だけ。「ひょっとするとおいしい話があるかもしれない。」とFDPは、連合政権の話し合いに参加することに同意した。

緑の党が、「2030年までに内燃エンジンの禁止、石炭発電からの脱却」という党の看板を早々に落として妥協する用意がある姿勢を見せた一方で、FDPは大きな妥協を拒否した。こうして話し合いは座礁に乗り上げた。FDPのリントナー氏は他の3党に対して、「日曜日の18時までにFDPの要求を聞き入れないと、話し合いを終了する。」と脅した。

連合交渉、座礁に乗り上げる – 国を代表する悪者

するとまたしても緑の党が難民の受け入れに制限に関して、譲歩する態度を見せた。すると、「これはヤバイ。」とFDP。もし大連合政権が誕生してしまうと、4年後にはまた国会から消える運命に遇いかねない。リントナー氏は18時を回ったことを理由に話し合いを一方的に中断、わき目も振らずに待っている記者団に向かうと、大連合政権の話し合いが同意なく終了したと宣言した。

氏の言葉を引用すれば、”Es ist besser, nicht zu regieren, als falsch zu regieren”.「間違った政治をするくらいなら、しない方がマシ。」ということになる。氏のこの発言は、氏の崇拝者を除くとドイツ中で非難された。本来はFDPの支持基盤である雇用者組合の会長が、「政治家は最初に国、それから党の利益を考えるべきであり、党の利益を国の利益の前に持ってくるのは誤りだ。」と、本人の前で堂々と非難したほどだった。

リントナー氏は”der Buhmann der Nation”(国を代表する悪者)の名称を頂戴した。逆に言えばそれほどまでにFDPのトラウマは深く、「汝、メルケル首相と連合を組むことなかれ。」と岩に刻まれているようだった。さらにFDPは新政権が誕生せず、総選挙のやり直しに賭けている様子だった。総選挙のやり直しになるなら、あまり妥協しない方が支持者に受ける。そして実際、総選挙のやり直しになる確率が高くなってきた。

再選挙、それとも少数派政権?

ドイツの憲法では選挙により過半数を制する連立政権が誕生しない場合、2つの可能性がある。ひとつは再選挙で、もうひとつは少数派政権。メルケル首相率いるCDU/CSUが、議決の度に野党と調整して過半数を獲得しながら政権を担当する仕組みだ。後者の場合、決議が野党にブロックされて一向に法律にならないという危険があり、考えられる限り最悪の方法だ。

メルケル首相は、「新選挙のほうがいい。」と態度を明らかにしたが、どちらの方法を取るのか、これを決めるのはドイツの大統領の権限だ。大統領は再選挙に反対で、まずは頭から連立政権を蹴ったSPDの党首と大統領府に招き、連立政権の可能性を探ることにした。

選挙後は、「連立はない。」ときっぱり言っていたSPDの党首は、大統領の甘言にころりと態度を換え、「連合の話し合いをする用意がある。」と言い出した。このような方針変更は、選挙民、そして何よりも党員に全く受けない。3ヶ月も経たないで前言を翻すようなら、一体、何を信用すればいい?

SPD の翻意

そこでSPDは党大会を開き、連立政権の話し合いをする許可を党員から取ったが、SPDの若者が形成する派閥は、「またメルケル首相と連合と組むと、次回の選挙でSPDは壊滅する。」とこれに猛烈に反対している。こうして今、SPDの指導部とメルケル首相率いるCDU、それに妹党のCSUが連立政権の可能性に関して話し合いを進めている。

この話し合いは1月12日まで続き、大筋同意に達した場合はそれぞれの党が党大会を開き、ここで決議される。賛成決議になった場合、三党が集まって連立政権協定書を作成する。これにSPDの党員が賛成すれば、国会でメルケル4次政権の誕生となる。すなわち早くても新政権が誕生するのは、3月ということになる。

ここで大きな役割を果たすのが、メルケル首相の権力への執着だ。総選挙でひどい結果だったにもかかわらず、後継者に権力を譲る気が全くない。しかしCDUの党上層部にも、「メルケル首相を筆頭候補で再選挙を戦うと、負ける。」とわかってきた。ただしこれを一番先に言い出すと、制裁を受けるので好機が巡ってくるのを伺っている。

メルケル首相の自身も女史の権威が日々衰退していることを承知しており、SPDとの連立の話し合いで合意が得られない場合、メルケル反対派が主導権を握りかねない。そこでメルケル首相は第四次政権を確立するため、SPDに大きな譲歩する用意がある。こうした要素がすべてうまく働けば、3月には新政権が誕生しているだろう。

 

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執筆者:

nishi

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