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メルセデス 搭載するエンジンを中国製に変更!

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メルセデス 搭載するエンジンを中国製に変更!
全然売れなかったメルセデス初の電気自動車 EQC

ドイツの車メーカーの中で、最も電気自動車への乗り換えが遅れたダイムラー社(日本でいうメルセデス)。

世界で最初に燃焼エンジンを発明したダイムラーだけに、他社よりも内燃エンジンえの執着心が強かった。これに加えて先代の社長が、「古い世代」の社長だった事も災いした。(*1)

「でかいエンジンと馬力」

に拘った社長はテスラをあざ笑い、電気自動車やハイブリットを真面目に取らなかった。

その結果がデイーゼルスキャンダルで、数々のリコールと罰金の支払いで業績の悪化を招いた。

遅れてきた者は人生で罰せられる

EUで排ガス規制が強化されると、ダイムラーのデカイ馬力の車は逆効果。

高額な罰金を逃れるには電気自動車を導入するしかなかったが、そう簡単にメルセデスの名前で売れる電気自動車が開発できるものではない。

ゴルバチョフ書記長は、

「遅れてきた者は人生で罰せられる。」(*2)

と言ったが、米中関税戦争で中国市場でメルセデスの売れ行きが鈍ると、ダイムラーの業績は急激に悪化した。

2019年、新生代のスエーデン人の社長が就任したが、3回もの業績の下方修正を迫られた。

新社長は前任者がやり残した仕事、メルセデスの電気自動車化を推し進めたが、他社に大きく後れを取っていた。

メルセデスが始めて開発して電気自動車 EQCは、ガソリン車の車体に「無理やり」蓄電池を積んだモデルだった。性能でも他社に劣っており、たったの2万台しか売れなかった。(*3)

メルセデスはその3倍の販売台数を予測していたので、EQCは赤字事業になってしまった。ただでも業績不振で金めぐりがしんどい中、これは痛い。

そこで新社長のケレニウス氏は、ダイムラーのタブー破りを決心した。

メルセデス 搭載するエンジンを中国製に変更!

ドイツの車メーカー、BMWでもアウデイでも、エンジンの開発は自社で行う。

が、エンジンの生産は外部の工場で行っている。例えばBMWのデイーゼルエンジンは、オーストリアのシュタイヤーにある工場で生産されている。

参照 : www.press.bmwgroup.com

しかしメルセデスは、本社でエンジンの開発と製造を行ってきた。車が売れているなら問題はない。問題は車が売れなくなった時。

販売台数に応じてエンジンの製造能力を削減する必要があるが、これまでエンジンを組み立てていた社員を解雇するわけにはいかない。他の部署に回そうにも、他の部署も同じく人員過剰で、仕事がない。

そこでお金を払って自宅待機してもらう。BMWなら子会社に注文するエンジンの数を減らすだけでよく、人員削減という頭の痛い問題は、子会社に押し付けることができる。

さらには本社の社員の給料は、子会社よりも高い。こうした問題を一挙に解決する為、新社長のケレニウス氏は、2024年以降、ダイムラーの内燃エンジンは中国で生産すると発表した。

参照 : www.businessinsider.de

将来、メルセデスのエンジンを生産するのは、筆頭株主の”Gleely”社。

そう、何の前触れもなくダイムラーの株を取得して、一躍筆頭株主になった中国の自動車会社だ。

この決定は労働組合に相談もなく下され、メルセデスの社員はこのニュースをテレビで聞くと言う有様だった。

今後メルセデス(本社)は、電気自動車、及び水素バッテリーの開発に専念するという。

期待の新モデル EQA

そのメルセデスが、満を持して発表したのが、同社二台目の電気自動車 EQAだ。

車両はメルセデスのベストセラーモデルである、ガソリン車のGLAを使用している。という点はケチが付くかもしれないが、技術上はEQCと比較して大きな進化を遂げている。

まずはエネルギー効率。EQCとの比較すると25%も「燃費」がよく、 基本モデルに搭載される66,5 kWhの蓄電器の航続距離が、426Kmに伸びた。

さらにはEQCでは40分もかかった充電が、30分で済む。(*4)

おまけにオープンエアー、すなわちインターネットを利用しての車のソフト(アプリ)のアップデートが、初めて可能になる。

しかし一番の利点はその価格。希望小売価格は4万7500ユーロと高価だが、政府の電気自動車奨励金などを利用すると、9000ユーロ割引されて3万8500ユーロ。

3万ユーロ台になると消費者にも「お得感」が出て、注文が多く入っている。メルセデスのマネージャーはEQCの3~4倍の販売台数を期待しており、密かに10万台の販売を願っている。

チップ不足

車業界は、チップ不足の為に減産を迫られている。

ドイツでも状況に変わりはないが、「EQAの製造には(大きな)問題はない。」と、メルセデスは説明している。

本来は他のモデルに使用するはずだったチップを、EQAの製造に回しているからだという。それほどまでにEQAは、メルセデスの起死回生をかけたモデルになっている。

果たしてEQAは、メルセデスの起死回生の一打となるだろうか?

ダイムラー会社を二分化す!

ダイムラーのトラック

という記事を書き終わったら、

「メルセデス、会社を二分化する。」

というニュースが入ってきた。

皆さんが知っているメルセデスの名前で知っているダイムラー社、トラック部門を本社から切り離して、

「ダイムラートラック株式会社」

として上場するという。新しい会社の株は、古いダイムラー株を持っている株主に譲渡される。

このニュースに株価は大幅に上昇した。新社長のケレニウス氏、着々とその手腕を発揮しつつある。

注釈 – メルセデス 搭載するエンジンを中国製に変更!

*1   (前)シュレンプ社長が無茶なコストカットを実行した結果、メルセデスは故障が多くなった。

さらに同社長は世界企業を目指してクライスラー&三菱自動車と連合を組み、ダイムラー社を破産の瀬戸際まで追い込んだ。そのダイムラーを救うために、社長に就任したのがツエッチェ社長だった。

ツエッチェ社長はダイムラーを再び軌道に乗せることに成功したが、この成功のあまり、新しい路線への転換を完璧に怠った。

*2   „Wer zu spät kommt, den bestraft das Leben“ (Кто опаздывает, того наказывает жизнь)

*3    デザインも優れなかったが、エネルギー効率が悪すぎた。早い話「燃費」が悪く、他社に比べて頻繁に充電が必要になるという大きなマイナスがあった。

*4   80%充電するまでの時間です。

参照 : /www.mercedes-benz.de

 

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執筆者:

nishi

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