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ドーピング大国ロシア – プーチン大統領の奥の手

投稿日:2016年8月2日 更新日:

自転車レース
ドーピングと言えば、やはりコレでしょう。

退位すればよい

国営放送と言えば、政府に都合のよいことしか報道しない利益団体?そんな印象が浮かぶのは、民主主義が根付いていない国の特徴です。ロシア、中国や北朝鮮、それにバナナ共和国と呼ばれるバナナが育つ暖かい国の国営放送は、国の指導者に都合のいいニュースしか流していない。しかし先進国でありながら、国営放送が国の指導者の利益代表団体になっている日本は貴重な存在だ。

故ブラント首相はかって、「メデイアの報道が害のないものになったら、退位すればよい。」と言っている。散々メデイアに攻撃された首相が言うのだから、やはり同氏は大物だ。先進国では「メデイアは、国の指導者が勝手なことをしないか監視する義務がある。」というメデイア本来の課題を認識しており、国の政策の批判をすることが主要な報道内容になっている。

ドイツの国営放送

ドイツには”ARD”、”ZDF”という国営放送局がある。ドイツ人が必ず見るニュースが”ARD”の“Tagesthemen”で、その日に起こった主要な出来事を報道している。日本で殺傷事件や大地震があれば報道されるが、そうでもない限り、日本について報道されることはない。肝心要のトップニュースはほとんどドイツ国内のニュースから始まる。そしてドイツの政治家を熾烈に批判する。

政治家の批判だけでは一方的な報道になるので、政治家にも中継で自己弁護する機会が与えられる。政治家が堪忍袋の緒をきらして怒鳴りだすことを期待して、「何故、間違った決定をしたんですが。」と首相や大臣を相手にして、日本では考えられない切り出しをする。ここで怒り出しては、「そんな事で抑制が効かなくなるようだと、大事では役に立たない。」と評価が地に落ちるので、政治家はできるだけ余裕を見せて弁護に努める。

メデイアがこのように権力者を監視しているので、「一億総活躍」|などというおかしなスローガンを言い出す政治家がいれば、「過去の戦争の災禍から何も学んでいない。」とからっきし批判されて、政治家は修正を強いられる。これが本当の報道機関の姿だ。何も才能がないのに芸能人と名乗る人物の私生活を暴くのは、低俗紙のすること。ドイツではそんな低俗な内容がテレビで報道されることはない。

組織的ドーピング疑惑

このドイツ国営放送の姿を理解するに役に立つのが、ロシアのドーピングスキャンダルだ。事の発端は、ロシア陸上協議会の選抜選手とロシアドーピング取締り委員会の研究員のカップルが、”ARD”にロシアでは組織的にドーピングが行われていると暴露したことらか始まる。

取り締まり委員会の夫は、陸上選手にどのようにしてドーピングの薬剤が与えられるか、薬物物投与の映像を見せて証言、さらに陸上選手である妻は自身に薬剤が与えられたことを証言、そしてドーピング検査ではサンプルが刷り返られてドーピングがばれない仕組みになっていると、ロシアのドーピングの実態をぶちまけた。

仮に日本の国営放送にタレこみがあっても、「そんな報道をされたら、プーチン大統領招待の障害になる。」と政府から圧力がかかり闇に葬られていただだろう。社会のゆがみを報道することが報道機関の役目なのに、権力者の忠犬ハチ公になっている日本のメデイアの姿は嘆かわしい。ロシア人がロシアドーピング実態の告発に、ドイツの国営放送を選んだのも当然の選択だった。

この一部始終が報道されたのが2014年12月だった。この報道を受けて世界的に権威のある”Welt-Anti-Doping-Agentur”(以降”WADA”と略)が調査に入った。2015年2月になると、ロシア国内では権力者の圧力で、陸上競技会会長はこの不祥事、ドーピングをしたことではなく、これが西側に漏れた事の責任を取らされて、辞任に追い込まれた。

国を挙げての詐欺行為

8月になると”ARD”は上述のロシア人証人の証言を受けて、「続編」を報道、北京オリンピックでどのようにして汚染されたサンプルが健全なサンプルに摩り替えられたか報道した。サンプルの秘匿にはロシアの諜報機関まで関わっており、まさに国を挙げての詐欺行為だった。

国際陸上協会はこれを受けて8名の選手の陸上選手権への参加を禁止、ロシアの陸上協会のメンバーも謹慎処分を言い渡した。ちょうと8月北京で世界陸上が開催されたが、ロシアはドーピングをしている選手を北京に送らず、クリーンなイメージ作りに勤め、これでスキャンダルを乗り切れるとまだ楽観していた。

ところが“WADA”はロシアのドーピングは「国のトップからの指図だった。」と結論した。さらには国際陸上協会にロシアの陸上協会の国際陸上競技への参加を禁止するように提言、そしてロシアのドーピング取締り委員会を謹慎処分に下した。国際陸上競技に参加するためには、その国に国際陸上協会の承認を受けたドーピング取締り委員会があることが条件だ。

ドーピング委員会長の暴露

ロシアドーピング取締り委員会の謹慎処分により、ロシアの選手は競技会に参加できなくなってしまった。この処分を受けてロシアドーピング取締り委員会の会長は辞任した。「もう隠す事はない。」と思ったのか、(前)会長は”WADA”から派遣された特使にロシアのドーピングの実態を白状、1417もの陽性サンプルを処分したと証言した。

この証言により、ドーピング委員会員、委員会長、そして陸上選手の選手の証言が出揃って、ドーピングを疑う余地がなくなった。2015年11月、国際陸上委員会はロシアの陸上選手の陸上競技への参加を、最終結論が出るまで、禁止した。

2015年5月、国際オリンピック協会は北京オリンピック、それにロンドンオリンピックに参加したロシア選手のサンプルが届けられたと発表した。検査の結果、北京オリンピックでは14名、ロンドンオリンピックでは8名のロシア選手のサンプルが陽性だった。

6月、国際陸上委員会はロシア陸上競技会の一時的な禁止を、無期限の禁止に変更したと発表。これにてロシアのブラジルオリンピックへの参加は風前のともし火になってしまった。

しかしオリンピック協会は、「ロシア選手団の参加禁止の可否は、ロシア選手団がスポーツ裁判所に出している訴えの結果を見てから決める。」と決定を先送りした。しかしスポーツ裁判所はドーピングの事実は否認しようがないと判断、「ロシア選手団の参加禁止は合法。」と判断した。こうしてロシア選手団のブラジルオリンピックへの参加は、おじゃんになるはずだった。ところがプーチン大統領にはまだ奥の手(袖の下)が残っていた。

ドーピング大国ロシア – プーチン大統領の奥の手

よりによってドイツ人がオリンピック協会の会長就任している。この会長、Bach氏とプーチン大統領は、”dicke Freunde”(刎頚の友)なのだ。プーチン大統領が友に呼びかけると、バッハ会長はロシア選手団の参加禁止令を解除した。参加を許すかどうか、それは各分野、例えばレスリングならレスリング協会、柔道なら柔道協会、重量挙げなら重量挙げ協会が個別に判断を下すことにした。

こうしてすでにドーピングで禁止されている選手を除き、ロシア選手は堂々とオリンピックに参加することが可能になった。

持つべきは”dicke Freunde”である。そうそう、ロシアのドーピングの実態を暴露した陸上選手は、「本人が証言した通り、ドーピングしたので参加は禁止。」と貧乏くじを引くことになった。真実を語った者だけが罰された形だ。いつか天罰が下って国際サッカー連盟の面々のように、バッハ会長も同じ運命を追うことを期待したい。

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執筆者:

nishi

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