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中国のエネルギー戦略

投稿日:2018年9月22日 更新日:

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高速、線路沿いは見渡す限りのソラーパネル畑。

これまでは再生可能エネルギーの先進国と言えば、ドイツが真っ先に上げられた。原発の廃止という英断をしたドイツにとって、他に選択肢がなかったことも手伝って、何処の国よりも再生可能エネルギーの普及に力を入れてきた。ドイツのエネルギー庁の統計によると、2017年にドイツで消費されたエネルギーの36.2%が再生可能エネルギーに拠るものだった

参照元 : Umwelt Bundesamt

ドイツ政府の過失

ドイツのエネルギー政策は、環境保護の観点ではなく、真っ先にエネルギー転換をはかり、再生可能エネルギーを世界に先駆けて工業化、世界中にドイツの技術、”made in Germany”を輸出するという世界戦略にあった。ところがこの計画に思わぬ誤算が生じてきた。

当時、まだ熟成していない技術(太陽発電、風力発電)で得られる電気は、化石エネルギーから得られる電気の3倍以上もの値段になった。ドイツ政府はこの高額な生産コストにもかかわらずエネルギー転換を推し進めるため、湯水のように補助金を使った。

その高価なエネルギーを生産する業者には、10年間、固定価格での買い取りを約束した。それだけならまだいいが、電力を大量に消費する企業には助成金を出して、工場で使用する電気代が上昇しないように保護をした。そのツケを払わされたのはドイツの消費者で、消費者がこの助成金を負担することになり、ドイツの電気代は欧州で最も高い電気代になった。

覇権を握った中国製の電気パネル

それでもドイツの再生エネルギー技術が世界市場で覇権を握ったなら、まだこの助成金の意味があった。しかしドイツ政府が出した助成金は、中国製の電気パネル業界を助ける結果になってしまった。

お陰でドイツの電気パネル業界はほぼ死に絶えて、片手で数えるくらいの業者しか残っていない。ドイツ、ひいては世界市場の電気パネル市場は、中国が実権を握ることになった。

ドイツ政府は再生可能エネルギーの割合をもっと上げたいが、これをやるとドイツ国内の電気代がさらに上昇、消費者、ひいては選挙民からの支持を失うので、2017年から再生可能エネルギーの促進にブレーキをかけ始めた。

こうして世界をリードする筈だったドイツのエネルギー転換はいきずまり、世界中にドイツの技術、”made in Germany”を輸出する計画も頓挫してしまった。

中国企業の台等

ドイツがつまづいたその間隙を利用、再生可能エネルギー事業で世界の最先端に躍り出たのは、よりによってあの環境汚染で有名な中国だった。中国政府は建国100年記念日までに国を先進国にするため、ロボット化、バイオメデイカル、IT事業、それに再生可能エネルギー分野を国の将来戦略に指定した。

小さな企業が国内で過当競争をしていると、世界市場で勝ち目がない。そこでそれぞれの分野で複数存在していた企業を国の命令で1つの会社に統合した。そしてこの国営企業は、中国の野望達成に必要なテクノロジーを持っている企業の買収に乗り出した。

再生可能エネルギー分野だけでも、中国政府/国営企業が投資している額は1000億ユーロ。この額は米国とEU全域が再生可能エネルギー分野に投資している額を上回る。そのうち440億ユーロは海外での投資に使用された。

これを象徴するのが、中国の国営企業SGCCによるドイツの送電会社”50Herz”の買収オファーだ。SGCCは同社の株式の20%を買収することで、関係各社と了解を取っていた。

ところがドイツ政府は国の大事なインフラに外国企業、それも中国企業が参加するのを懸念した。結果、本来は金融市場を監督する機関であるKFWが中国企業が買収するはずだった20%を取得、同意に達していた売買契約は紙屑となった。

参照元 : SVZ.de

別の中国国営企業は、ポルトガル最大の電力会社を90億ユーロで買収するオファーをだした。欧州企業は中国の攻勢に押され、対応に苦慮している。

参照元 : Handelsblatt

超高圧送電技術

エネルギー転換の成功の鍵を握っているのは、超高圧送電技術にあると言われている。昔の話になるが、サハラ砂漠で太陽発電、電気を送電線で欧州に送るという計画があった。

ジーメンスを初めとしてドイツの大手の企業もこの映画のようなプランに参加したが、この計画は送電技術の不足で頓挫した。ドイツでは人口密度の低い北ドイツ、あるいは北海で風力発電しているが、これを人口、産業の多い南に送電する必要がある。しかし送電線が足りない。このため、完成した風力発電所が稼働できないという不具合も生じている。

この悩みを解決するのが、超高圧送電技術だ。長距離送電しても失われる電力が低く、長距離の送電に向いている。この技術を開発したのはよりによってドイツのテクノロジー企業の代名詞であるジーメンスだったが、ドイツ/欧州の企業はこの技術に興味を見せなかった。当時はまだ化石エネルギーで安く電気が提供されており、そんな技術の需要があるとは思えなかった。

このジーメンスの技術に興味を示したのが、広大な国土を持つ中国だった。ジーメンスは中国企業とのジョイントベンチャーで超高圧送電技術を、市場導入できるまで工業化することに成功した。

2009年、世界で始めて超高圧送電送電線が中国で導入された。かっての米国のエネルギー庁の長官はこれを、「エネルギー業界のスプートニック現象」と読んでいる。最先端技術を誇る欧米がなしえなかった超高圧送電を、よりによって中国が工業化に成功したのだ。

中国政府は世界にふたつのとないこの技術を世界中に輸出できる。大きな国土を持つブラジル、ロシアなどは言うまでもなく、小さな国土のドイツでも咽から手が出るほど欲しいこの技術は、今後、中国の輸出の目玉商品となるだろう。

実際、パキスタンでは中国企業が送電線を施設事業を受注、国土に送電線をめぐらしている。ブラジルでは中国の送電会社が国内最大の送電業者に成長している。

中国の強み

ドイツを初め、欧米の企業が再生可能エネルギーの工業化で中国企業の後塵を拝する原因は、欧州の企業は利益を挙げる必要のある私企業であることに集約される。数年の歳月、膨大な開発費をかけて新しい技術を開発しても、この技術の買い手が見つからない限り儲からない。

どんなにクリーンな技術でも、売れなければ、私企業にとって投資の墓場となる。一方、中国では政府が明確な指針、それも今後数十年の計画を立てているので、新しいテクノロジーで会社が黒字になるか、考えなくてもいい。赤字のリスクは国が負う。

そして新しいテクノロジーの工業化に成功すれば、世界中に輸出できて元が取れる。同時に中国で最優先課題である環境問題も解決できる。今でも原子力発電を推し進めている日本は、エネルギー転換では後進国。

日本も二酸化炭素の放出量を削減するため、いつかはエネルギー転換を迫られる。しかし核エネルギーに依存しているので、再生可能エネルギーの技術がない。最後には中国からノウハウを輸入することを迫られるだろう。かってはアジアの先進国で、日本のテクノロジーが世界中に輸出されていたのに、政治家の視野の短さで、日本は中国に追い越されてしまった。

 

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執筆者:

nishi

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