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災害発生時の対処方法 – ドイツと日本の違い

投稿日:2019年10月20日 更新日:

災害発生時の対処方法 - ドイツと日本の違い

あと一息で瀟洒な高級住宅街が水没!

毎年、大きな自然災害に見舞われる日本。

いい加減、
「自然災害対処のマスタープラン」
が確立してもいいのに、未だに毎回、
「なんでそうなったのか?」
と、反省会。

役人の仕事ぶりを見ていると、とても腹立たしい。

一体、あとどれだけ災害が起きて、何百人死んだら、政治家、自治体、役人、は過去の災害から学び
「災害時のマスタープラン」
を作れるのだろう。

その一方で、役人の考え方を見ていると100年経っても、
「災害時の臨機応変な対応」
が未来永劫に不可能に思えます。

日本人といい対象(両極)をなすのがドイツ人。
そこでドイツの災害対策を紹介してみよう。

ハンブルクの高波 1962年

ドイツには台風は来ないが、その代わりに”Orkan”(オルカーンと呼んでね。)と呼ばれる低気圧がやってくる。

「なんだただの低気圧か。」
と、見くびっては駄目。

この低気圧は大西洋の熱気で温められ、中心部の気圧が950パスカル前後。
台風と同じ勢力、破壊力を持つ。

1962年2月16日、まさにその低気圧が北海を訪れた。

鉄砲水 /”Strumflut”

低気圧自体は危険だが、車が倒れた大木の下敷きになり、死者が出る程度だ。
これだけで数百人もの死人が出るものではない。

しかしこの低気圧が潮の満ち引きとタイミングが合うと、危険な鉄砲水 / “Sturmflut”が発生する。

海が、あるいは海に流れ込む河川が逆流、鉄砲水が市内に押し寄せてくる。
その様はまさに今回の台風19号と同じで、頼みの綱は丈夫な堤防。

堤防が丈夫で、十分な高さがあっても、長時間、この濁流に抵抗できるものではない。

水位が高まると堤防が水を吸い込み、透明な水が堤防から漏れ始める。
これは水が堤防の中にパンパンに溜まっている証拠。
まだ危険な段階ではない。

その後、水がだんだん濁ってくる。
これは堤防が洗い流されている事を示し、決壊の前兆となる。

丈夫な堤防があっても危ないのに、1962年、ハンブルクに中心部の気圧が950パスカルに発達した低気圧が到達した際、ハンブルクには丈夫な堤防はなかった。

お役所のご判断

気象庁は鉄砲水が発生する可能性があると警告したが、ハンブルクの州政府はこれを軽んじた。

というのも、ハンブルクには冬になると毎週のように低気圧がやってくる。
数日前にも低気圧が来ていたが、鉄砲水は発生しなかったのだ。
しかもこれが数回続いた。

真っ先に低気圧の洗礼を受けた沿岸部から警報が入ってきているのに、ハンブルクは緊急体制を敷かなかった。

当局はテレビ、ラジオを通じて警告を出すことにしたが、ちょうど人気番組が放送中だった。
「これを中断したら、叱られる。」
と、警告は番組が終了するまで放映されなかった。

多くの市民はそんな危険な状況にあるとは露知らず、警告を見ないで寝てしまった。
そして今度は鉄砲水が発生した。

いい加減にしか整備されていなかった堤防を越え、家々を飲み込み始めた。

しかし緊急体制を引いておらず、電話が不通になると官庁間の連絡が途絶え、住民への警告が出されなかった。
こうして濁流は眠りについていたハンブルク市民を襲った。

役人は住民が死んでいるのに縄張り争いを展開、救援活動を誰が何処に出すかでもめた。

シュミット連絡員

ここで州政府と中央政府の連絡員だったシュミット氏が、有無を言わさず、緊急対策班の主導権を掌握した。氏は中央政府の許可を取らず、また中央政府に連絡をすることもなくハンブルク近郊に駐留していたNATO軍、ドイツ軍、及び民間の救援団体に出動を要請した。

以前、シュミット氏は中央政府内で国防省に勤務しており、NATOの司令官(皆まで言えば英軍)、ドイツ軍の司令官と面識があったのだ。緊急事態とみるや、定められた命令系統を無視して、直接、出動を要請した。そしてNATO軍、それにドイツ軍も、「中央政府からの出動要請が来てない。」とごたくを並べず、すぐに稼働可能なヘリを救助に派遣した。

こうして空路、数千人が救助された。それでも濁流により死者は340名にも上り、1962年のハンブルクの鉄砲水は、戦後最悪の自然災害となった。

参照 : wikipedia

シュミット氏の決断がなければ、数千人が死亡したと言われる。氏は一体、どうやって烏合の衆だった対策班を掌握できたのだろう?実はシュミット氏、第二次大戦中はドイツ陸軍、後に空軍で熾烈を極めた東部戦線から、残虐なテロ戦争のバルカンで戦った古兵だった。

「何ひとつ予定通りに物が運ばない。」という状況に慣れており、絶望的な状況でも落ち着いて事態を把握、的確な判断を下し、命令を出すことができた。よりによってハンブルクが危機に陥った際、シュミット氏が連絡員としてハンブルクにいたのは、不幸中の幸いだった。

わざわざ言うまでもないだろうが、シュミット氏はこの法律を無視した命令で罰を受けることはなった。それどころか大いに感謝された。日本だったら、どうなっていただろう?

災害発生時の対処方法 – ドイツと日本の違い

一方、台風19号で再び自然災害に見舞われた日本。
該当官庁、そして自衛隊はどのように活動したのだろう?

災害発生時の対処方法 – 自衛隊法

日本の法律では自衛隊に災害派遣の出動を要請するには、「都道府県からの要請が必要」となっている。しかし、「すぐ来てください。」と自治体が県庁に連絡をしても、すでに出動できるものではない。隊員を集めて資材を確保しなければならない。

さらには自衛隊員が現地でレストランで食事をするわけにはいかないから、部隊の補給品も積む必要がある。それには現地までの派遣計画を立案、司令官から「よし」と認可されて、やっと補給班長から補給品の受領が許可される。

これを知っていた自治体は、「自衛隊の出動をお願いすることになるかもしれない。」と事前に通告していた。お陰で自衛隊は出動要請が入れば、すぐに出動する準備が可能になった。だが、褒められるのはここで終わりだ。

お役所仕事

自治体が「自衛隊の出動を要請したい。」と県庁に連絡すると、県庁の職員が何を言ったか、想像できるだろうか?

「口頭での要請は受け入れられない。所定の用紙に記入して、FAXで送れ。」
と典型的なお役所的な反応をした。

札幌雪まつりで、「雪を会場まで運んでください。」と自衛隊に出動を要請するのなら、それでも一向に構わない。

参照 : 札幌雪まつり

人命が危機にさらされる自衛隊の災害派遣要請で、「所定の様式に書き込んでFAXで送らないと要請は受け入れならない。」と言えるのは(言っても不思議に思わないのは)、世界中探しても日本人だけ。

ハンブルクの高波で、シュミット氏から出動要請を受けた英国空軍が、「上司に頼んで所定の書面に記入、FAXで送ってくれ。」と言っていたら大量の死人が出ただろう。

日本の役所の痴態はこれでは終わらない。

自衛隊、被災地で何もしないで引き返す

自治体は県庁から言われた通り、所定の書類を探し、ひとつひとつ項目を埋めていく間に、最寄りの駐屯地で電話して事情を伝えた。自衛隊は、「待ってました!」とばかりに給水車と補給物資を積んで、災害派遣に向かった。被災地に到着するまでに、派遣要請が来るものと想定していたのだ。

ところが、所定の書類で自衛隊の出動要請を受け取った県は、「この場合は、県が出動する。」と自衛隊の災害派遣を拒否した。被災地から20KMしか離れておらず、すでに準備が完了している自衛隊よりも、縄張り争いで県の給水車を派遣することに拘った。

そうこうするうちに、自衛隊が被災地に到着した。しかし災害現場に到着した部隊は、駐屯地司令官からこっぴどく叱れた。「まだ県庁から出動要請がきていないだろ!」というのだ。駐屯地司令官は派遣部隊が駐屯地に引き返すことを厳命。派遣部隊の幹部には、これに従うしか選択肢がなかった。さもないと処罰されるからだ。

これが被災者の救済を妨げる日本の官庁の縄張り争いだ。これは何も今回、静岡県だけでおこったものではない。

参照 : 朝日新聞

阪神淡路大震災の発生時、世界各国から「救助隊を派遣したい。」と日本政府に打診が雨あられのように降ってきた。当時の日本政府、この救助隊の派遣をすべて断った。外国からの救助は必要ないというのだ。こうして助かったかもしれない貴重な生命が失われた。

当時ドイツでは、「何故、日本は災害派遣を受け入れないのか。」と、日本人の私は質問攻めにされた。そして今日でもこのテーマを語るのは、日本では禁句となっている。

災害発生時の対処方法 – 緊急放流

過去の災害から学ぼうとしない日本の姿勢は、今回の台風でも証明された。2018年の広島、岡山の集中豪雨で河川が氾濫寸前の状態にあったまさにその時、上流のダムで緊急放流を行った。お陰で河川が氾濫、流域で広い地域が浸水した。

たった1年後の2019年、ダムは危険なまでに水位が上昇したとして、まさに河川がパンパンのまさにその時に、緊急放流を開始した。

何故、事前に放流しない?

台風が猛烈な集中豪雨を引き起こすことは、数日前からわかっていた。前日になると、どの地方に台風が豪雨を引き起こすか、かなり正確に予想できた。西日本豪雨から学び、ダムの水位を大幅に下げて豪雨に備えるかと思いきや、水を貯めた状態で集合豪雨を待つことにした。

ダムの管理者曰く、「雨がふらなかったら、後で困るから。」という。「史上最大の強さの台風がやってくる!」、「伊勢湾台風並みの被害が予想される!」と警告が出回っていたのに、ダムの管理者は雨が降らない方にかけた。

そして予想通り豪雨に見舞われると、河川の水位が低いときに放流せず、河川が氾濫水準になるまで、皆まで言えば、住民が寝る深夜になるまで待って、緊急放流を開始した。というのもダムの管理者は、「ダムの緊急放流は決壊の恐れがあるときだけ行う。」と、習っていたからだ。

まだ危険水位に達していないのに放流するなど、どこにも書かれていない。だから河川がパンパンになるまで待ってから、放流を始めた。

決まり最優先主義

書式、形に拘るのは、何も役人や自衛隊だけじゃない。民間人も全く同じように考えている。日本人なら、「決まりを守れ。」と、言ったことが必ずある筈だ。誤解を避けるために言うと、決まりを守るのは悪いことではない。

赤信号で止まるのは、重要だ。しかし焼却処分されるごみを、「水道水で綺麗に洗ってから捨ててください。」と言われても、疑問を感じない。決まりだから、従うのが正しいと考える。その一方で、「資源である水を節約しましょう!」と謳って、一向に違和感を感じない。

もうひとつ言えば座高。日本政府は戦後、全生徒の座高を測ることを学校に指示。70年後、「座高の使い道がない。」ことに気が付き、座高を測ることは廃止された。70年間「一体、何の為に図っているの?」と聞くことはなかった。図るのが決まりだからだ。

日本人にとって大事なのは決まりを守ること。これに意味があるかどうか、それは二の次。なんのための決まり、指図なのか、どんな意味があるのか、これを考えること、聞くことは日本ではタブーとされている。

しかし決まりを守ることが大事なのではなく、意味のある決まりを守るのが大事。意味のない決まりは、シュミット氏が数千人の人命を救ったように、守らなくてもいい。それどころか守る必要がない。これを何度説明しても、日本人にはわかってはもらえない、、。

日本には世界に見本を示すだけの技術があるのに、二酸化炭素の放出量を削減する努力をしない。お陰で地球はますます温暖化のスピードを上げ、日本はますます巨大な台風に見舞われることになる。これに対処すべき役人はガチガチの決まり原理主義者

お陰で日本では同じような災害が毎年、繰り返されている。逆に同じ災害が起こらない方が不思議だ。ドイツではハンブルクの高波から50年以上経っているが、二度と同じような災害は発生していない。政府が災害発生時のマスタープランを作って、これを徹底してるからだ。

日本人には「災害時の臨機応変な対応」は未来永劫に不可能でないだろうか?

 

-生活, 雨にも負けず

執筆者:

nishi

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