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ドイツの環境対策 – 石炭エネルギーからの脱却

投稿日:2019年2月6日 更新日:

地球温暖化が叫ばれて半世紀以上も経つが、二酸化炭素による地球温暖化の危険性を指摘するだけ。世界に共通する目標さえも決まっていない。ようやく2015年、196ヶ国がパリで画期的な環境保護目標に同意に達した。しかし目標を定めはしたものの、これを達成する本当の努力をしている国は、人口の少ない北欧の国に限られている。

先進国のエゴ

中国やインドにEU並みの環境保護を求めるのは、過大要求だろう。しかし中国に次ぐ環境破壊大国アメリカは、国内の石炭産業を保護するために協定からの脱退を宣言した。アジアの最先進国である日本は、ますます火力発電に頼っている結果、二酸化炭素の排出量はほとんど減っていない。

参照先 : JCCCA

そこまでひどくないのが欧州各国の現状だが、ドイツでも政府が定めた二酸化炭素の放出削減目標を達するには至っていない。

しかしそこはドイツ。なんと中学生までもが観光保護を求めてデモ行進をしている。車大好きのドイツ人が車を諦めて、自転車で通勤を始めるなど、国民の意識は着実に変わってきている。ここまで来てようやくドイツ政府は重い腰を上げて、環境殺しNr1である石炭発電からの脱却の規定書の作成を命じた。

環境目標 – 2020

いみじくもドイツの国歌、”Deutschland über Alles.”(世界に冠たるドイツ)が示す通り、ドイツ人は優等生でなければ気がすまない。典型的なドイツ人の誇りのひとつが、”Export-Weltmeister”(輸出高世界一)だ。日本ほどの国土で人口は日本の2/3でありながら、ドイツはあの巨大な中国と輸出高世界一を争っている。そしてドイツ人はこれを大いに誇りに思っている。

そのドイツ人が「俺たちが二酸化炭素排出削減でも世界のお手本になる。」と(勝手に)言い出して決めたのが、「環境目標 – 2020」だ。ドイツ政府はこの計画書で二酸化炭素の放出量を1990年と比較して、2020年までに40%削減するとした。

参照先 : Tagesspiegel

しかし2018年の時点で、この目標には到底到達できないことがわかってきた。政府はその責任を自身の努力不足に求めず、「デイーゼル自動車乗り入れ禁止により、消費者がガソリン車に変更、ガソリンの消費量が上昇したため。」と言い訳した。

自身で定めた目標に達しない場合、恥をかくだけで済むが、次第にドイツはEUが決めた二酸化炭素の削減目標にも達しないことが明らかになってきた。EUの規定では、交通、建築、農業部門でドイツは2005年から2020年の15年で、14%の二酸化炭素削減を行なうとされている。ところがドイツ政府は2017年の時点で達成した削減量は6%。残り3年では逆立ちしても14%に達しない。

参照先 : Tagesspiegel

問題は、「頑張ったけど、できませんでした。」では済まないこと。EUの規定に反すると、罰金を課されるのだ。お金持ちのドイツは罰金は払えるが、ドイツ人の誇りが許さない。「ドイツは、いい格好しい。」と言われ、ドイツ人の誇りが傷ついた。

石炭発電

今後もデイーゼル車の登録台数は減る一方。しかし日本と違ってドイツではハイブリット車、電気自動車の人気がなく、期待するほど登録台数が増えない。結果、ガソリンの消費量が増えて、二酸化差炭素の放出量は削減どころか、増加する。かと言って電気自動車やハイブリット車をさらに奨励すると、ドイツ車ではなく、日本車を助けることになる。他の場所で二酸化炭素の放出量を削減しないと、もう他に選択肢はない。

“Klima-Killer”(環境殺し)の第一人者は、石炭発電だ。中国では発電や暖房の主力は未だに石炭だが、これほど大量に二酸化炭素を放出するエネルギー源はない。その中でもとりわけ始末が悪いのが褐色石炭を使った発電だ。

褐色石炭は石炭と似たような化学構成だが石炭のほど古くないので、水分を多く含んでいる。さらに不純物も多い。これを燃やすと燃焼効率が悪く、二酸化炭素を大量に放出する。それなのにこの褐色石炭は、発電に利用されている。地表近くに大量に存在しているので掘削費用が安く上がり、石炭に比べて安価に発電できるからだ。

これまでは「アメリカを見ろ、中国を見ろ、二酸化炭素を出し放題。俺たちだけこれを変えても意味がない。」という理屈が通っていた。ところが市民でも気候の変化が如実にわかるほど、世界の気候のバランスが崩れてきた。これは市民の環境保護への感心を増す事になり、石炭発電からの脱却が叫ばれるようになってきた。

脱核エネルギー

とは言っても、そう簡単には行かない。一番いいのが、また日本の例。福島原発の事故にもかかわらず、自民党政権は核エネルギーを薦める政策を頑として補正するそぶりを見せていない。それどころが原子力発電を成長戦略に指定、日本各地に原発を建設、外国にも輸出して「世界に冠たる日本の核エネルギー技術」にしようと考えた。

ところが国内では、原発建設地の住民の大反対に遭った。政府は国民の、「自分の街を福島の二の舞にしたくない。」という気持ちさえも無視しようとしたが、根強い反対に負けた。こうして国内での計画はご破算。国外では、「原発事故を起こした日本の原子炉は買いたくない。」と人気がなく、政府の指導に従った日本企業は数百億円の高い勉強代を払わされた。

日本国内では原子力発電を増設できないので、不足する電力は火力発電所で補充している。環境世界会議では、「原発事故のため、火力発電に頼らざるを得ず、どうしても二酸化炭素の放出量を削減できない。」と言い訳してきた。

しかしドイツはまさにその核エネルギーからの脱却を宣言した。稼働を停止した原子力発電所が担っていた発電は、ガスや石炭発電所が担っている。ここで石炭発電まで辞めてしまったのでは、安定した供給ができない再生可能エネルギーに依存することになる。これを実行すると電力が不足して電気代が高騰、さらには停電が発生、輸出量世界一のドイツの産業にダメージを与えかねない。

石炭発電業界は数万人の雇用を作り出している。仕入れなどの関連企業などを合わせれば、数十万人が石炭発電でお金を稼いで生活している。しかるに「石炭発電は5年後には辞めます。」では、企業の投資、事業計画は水の泡。さらにはこの事業で働いている労働者の将来も暗雲に覆われてしまう。

「じゃ、30年後には石炭発電から脱却します。」とすれば、企業には経営を他の分野に移すに十分な時間があり、労働者はほぼ定年を迎えることができるが、環境を救うことはできない。産業と環境の妥協点を見出すことが欠かせない。

石炭エネルギーからの脱却

ここで政府が発起人となって作った委員会が、”Kohlekomission”(石炭委員会)だ。この委員会には石炭発電をしている産業、環境団体、それに客観的なデータを提供する学者、名前を売りたい政治家が参加している。政府はこの委員会に環境団体と産業が満足できる妥協案を出すように命じた。

産業は30年後の石炭発電からの脱却を主張、環境団体は「100歩譲っても10年。」と大きな開きがあった。これを学者がデータを提供して、どうして30年後では遅すぎるのか、10年後では早すぎるのか、説明した。しかし元来、産業と環境保護団体は水と油みたいなもの、一向に妥協点が見出せなかった。

気の遠くなるような議論(最後の会議はなんと21時間ぶっ続き)の末、委員会は石炭発電からの脱却を2038年とする委員会の議定書で同意に達した。

参照先 : Tagesspiegel

なんとまだ19年も先の話だ。環境保護団体には受け入れられない内容だったが、最後の原子力発電所が2022年に稼働を停止する。これに間に合わて再生可能エネルギーの構築計画を立てている以上、この計画を今更変更することはできない。核エネルギーからの脱却後、脱石炭発電に向けてのインフラを構築する以上、これ以上前倒しにすることはできなかった。

産業構造補助金

日本でもその名を知られているルール工業地域。地下資源の石炭に恵まれて、欧州最大の工業地域に発展した。ドイツばかりか、欧州各国から労働者がこの地方に仕事を求めてやってくるほどの活況で、戦後には日本からも労働者が研修で派遣された。

ところが人件費の高騰により、ルール産の石炭の値段が高くなり、採算が取れなくなってきた。ここで政府は助成金を出す間違いを犯した。産業は助成金を当てにして、雇用を削減するなどの処置を取らなかった。そして助成金があまりに高額になったので、政府がこれを減額すると石炭業界は言うに及ばず、ルール工業地帯は空前の大不況に陥った。

あれから40年経つが、ルール地方は未だに産業の構造変革から取り残されており、失業率と犯罪率でしか新聞を飾ることがない。今後、褐色石炭採掘、発電まで廃業になると、「第二の不況の波」がこの地方を襲うことになる。

そこで石炭委員会は国が石炭発電で雇用を創出している地域に、今後20年で400億ユーロもの巨額の補助金を出すべきだと提唱した。この巨額の補助金を与えられる州は、将来に備えて新しい産業を今後20年で産み出すことになる。経営とは縁のない官僚や政治家が、これに成功するか、大いに疑問だ。

いい例が東ドイツの復興税。巨額の予算をもらった州は、滅多に使われることにないコンサートホールから赤字空港、船の来ない巨大な港などを建設した。この二の舞になるのではないか。ましてや20年後に数万の雇用を創設する産業が何であるのか、自治体にわかる筈もない。

結局は企業誘致という形になるだろうが、将来必要とされている人材、IT関連、技師等の人材がすでに足りない今、大企業がわざわざドイツに工場を築いてくれるだろうか。

将来の経済戦略 vs. その場しのぎ

とは言え、誰も強いていないのに環境を救うため、自ら犠牲をしいて石炭発電からの脱却を考えている点は大いに評価できる。自国民も外国も興味を見せない原発推進路線に執着、環境破壊なんぞお構いなく火力発電を推進している国よりはるかにマシだ。何故、日本は福島原発の惨劇を自ら経験して、原発推進案が座礁に乗り上げているのに、現実をみようとしないのか。

それは国民の政治への関心の薄さが原因だ。日本国民はお笑い、グルメ、三文ドラマにしか興味を見せたない。ドイツでは中学生が環境保護を求めているのに、日本の中学生は環境問題さえ知らない。中学生でこの違いだから、大人の違いは甚だしい。

ドイツでは子供を抱える家族が、「自分の都合のために、環境をこれ以上破壊するわけにはいかない。」と車を売却、自転車での生活を始めた。誰も強いていないのに、自身に犠牲を強いる責任感、問題意識のレベルが格段に違う。

日本で同じことをしたら、「変わった人」で終わってしまうだろう。しかしこれまで通りの快適な生活は、我々の子供の時代に大きなマイナスの遺産を残す。「飛ぶ鳥後を濁さず。」と引き際を大事にするなら、大人が率先して環境保護を真剣に考えるべきだ。それとも夏の最高気温を争ってお笑いで済ませてしまうだろうか。

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執筆者:

nishi

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