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メッセ / Messe – 死滅するビジネスモデル?

投稿日:2019年11月1日 更新日:

メッセ / Messe - 死滅するビジネスモデル?

行ってきました!フィットネス メッセ “Fibo”

日本語にもなっているドイツ語、メッセ /”Messe” 。知らない方のために説明しておくと、「見本市」という意味。製造元が見本市に商品(見本)を展示、小売業者 /”Händler”は市を訪問して品定め、「これは売れる!」という商品があれば、製造元と契約を結ぶのがメッセの役割だった。

ところがデジタル化により、このメッセの役割が減少し続けている。果たしてメッセは、将来のあるビジネスモデルだろうか?

メッセの経済効果

「メッセなんて、専門業者向けの催し物」と思いがちだが、そうとも限らない。確かに工作機械や医療品のメッセは専門業者向けだが、業者+個人向けのメッセも多い。代表的なものはフランクフルトで開催される”IAA”/ Internationale Automobil-Ausstellung(国際モーターショー)だ。

参照 : autobild.de

このメッセには、日本からテレビ局がわざわざ取材に来る取材に来るほど有名だ。それほど大規模なものでなくても、カメラの見本市、フィットネスの見本市、アダルト分野の見本市などなど、その種類を数は実に豊富だ。そして忘れてはならないのが、メッセの経済効果だ。

メッセ開催中は満員御礼

ドイツ観光を計画している方、メッセ期間中はホテル(の部屋)が取れません。1年も前から、メッセ期間中のホテルは売り切れです。旅行の計画を立てる前に、メッセと重なっていないか、チェックしよう。もしメッセと重なると、ホテルの値段は2倍から3倍になる。それでも部屋が取れない。

さらにはミュンヘンでメッセがあると、アウグスブルクのホテルの値段も跳ね上がる。これを利用して、市内でアパートを借りるとホテルに改造、「メッセ客専用貸しアパート」として経営している人までいる。見本市の期間中は部屋の値段が高騰するので、メッセ期間中に部屋を貸すだけで元が取れるどころか、十分な採算が取れるのだ。

満室になるのはホテルだけではない。市内のレストランは、メッセ訪問客の予約で一杯だ。ギリシャ人の友人には、「中国人はチップを払わない。」と不評だが、メッセ客はチップを弾むので、時間にルーズな彼が定時に仕事にいく珍しい時期。

満員なのはレストランだけでない。タクシー、鉄道、酒屋、バー、夜のお仕事など、どこも大盛況だ。市にとってメッセは大きな経済効果を生み出す機会なので、メッセの開催地で争奪戦になっている。

開催地争奪戦

例えば冒頭で紹介したフィットネス関連の見本市、”Fobo”。かっては毎年、エッセンで開催されていた。この時期(夏)になると、米国からプロのボデイビルダーがやってくる。主に広告をしているウエア、プロテインの販売促進が目的だ。

プロはドイツに滞在中、何もしないと体がなまるので、滞在中もジムに通う。デユッセルドルフで通ってたジムは、街中にある便利なロケーションで、ビルダー専用だった。この為、見本市の時期になると、ものすごい体をしたビルダーがやってきて、目が点。

遺伝子上は女性らしいが、上げるウエイトはほぼ同じ。女性が鍛えると、ここまでウエイトを上げることができるなんて、圧巻です。

話を戻します。しばらくするとメッセの開催地が、エッセンからケルンに変わっていた。そもそもエッセンは、メッセ会場としてマイナー。お隣のデユッセルドルフのほうが、空港もあり、見本市の開催地として人気がある。しかしメッセの会開催地を獲得したのは、ケルンだった。

元々、デユッセルドルフとケルンは仲が悪いので、デユッセルドルフは狙っていた見本市をケルンに奪われて、大いに怒ったに違いない。ケルンは余程いい条件を出したようだ。

カメラ関連の見本市 フォトキナ /”Photokina”

カメラ関連の見本市 フォトキナ /”Photokina”は、毎年、ケルンで二年おきに開催されていた。

最後に開催されたのは2018年。その際主催者は、「カメラの進歩が速いので、毎年の開催に変更する。」と発表した。

カメラの見本市は、日本のカメラメーカー、ニコン、キャノン、ソニー、パナソニック、オリンパス、それにリコー(ペンタックス)なしでは成立しない。アジアの東の端っこから人と機材をドイツまで運び、大きなブースを立ててカメラを展示するのは、カメラメーカーにとって大きな負担だ。

その大きな負担が毎年必要になると聞いて、メーカーはしかめっ面をしたに違いない。しかしそこは日本人、危惧を伝える代わりに方針転換を歓迎した。

2019年 フォトキナ /”Photokina” 中止

これが日本人の悪い所。考えている事を言わないから」、主催者は方針が歓迎されたと思い会場を予約、出展者の予約を受け付け始めた。すると日本のメーカーは相次いで、「事情があって、メッセには参加しません。」と言い出した。

日本のメーカーなしのカメラ見本市なんぞ、日本のオートバイのないバイク見本市。誰も興味ない。開催しても、入場者が激減して大きな失敗になるのは確実。大赤字になる前に、主催者は2019年 フォトキナの中止を発表した。

次回は2020年の開催になるという。ところがまだ1年も先なのに、ニコン、オリンパス、それにライカは、2020年に見本市に参加しないと表明した。

参照 : chip.de

カメラに限らず、ファッションや携帯電話のようなエンドユーザー(消費者)を相手にするビジネスでは、客の購買意欲はインフルエンサーに代表されるネット上の評価に大きく左右される。メッセに大金をつぎ込むこれまでの宣伝方法を、変える時期が来ているのではないか?

ちょうど見本市の開催が毎年になった事が、ドイツの見本市に出展することの意義の再評価を行うことになり、その答えは「否」だった。

メッセ / Messe – 死滅するビジネスモデル?

メッセ主催者、メッセ開催地、そしてその他多数のメッセに従事している人を驚かせたのは、見本市への参加を見送ったのは、カメラメーカーだけに留まらなかった。ドイツでは毎年、ハノーファーで行われるコンピューターメッセ、”Cebit”がとりわけ有名だった。

世界で最大のコンピューターメッセは、首相が開会式に訪れて祝辞を述べるほど、車の見本市”IAA”と並んで重要な見本市だった。市内のホテルは言う間でもなく、近隣の街のホテルまで満室になるという大盛況。

そんな時期に何もしならい出張者が日本からやってきて、「ホテルを取ってください。」なんて依頼が旅行代理店に来た日には最悪。市内から市外のホテルをしらみつぶしに電話して、空き部屋を探す。運よく部屋が見るかるとこれを客に伝え、「取りますか?取ると、もうキャンセルできませんよ!」と、意向をうかがう。

「取ってくれ。」というので予約する。すろと数日後、「キャンセルしてくれ。」と日本人。「キャンセルできません。」というのに、「そんなことは知らん。」と、とぼける日本人。これが毎年繰り返されて、脳裏に焼き付いているのがハノーファーメッセ、”Cebit”だった。

ところがまさにそのドイツを代表する見本市が廃止された!

参照 : chip.de

メッセ出店を厭うメーカー & 減少する訪問者

“Cebit”が廃止に追い込まれた理由は、言わずもがな、出展者 / メーカーが大挙して出店を断ってきたことにある。これに加えて訪問者も急激に減少した。2001年の最盛期には、なんと85万人もの訪問者が会場に殺到した。しかし去年はたったの11万人。

スマートフォンの登場により、コンピューターへの関心が薄れたのが致命的だった。今後も訪問者が増える見込みは薄く、「会社を守るには他に方法がない。」と、主催者は見本市を廃止した理由を語った。

ちなみに今、上述のケルンのメッセ主催者、このコンピューターメッセを名前とコンセプトを変えて、なんとかしてケルンで開催できないか画策中だ。

このメーカーが出店を厭い、訪問者が減少する傾向は、カメラやコンピューターメッセだけではく、ドイツを代表する車の展示会”IAA”にも影を落としている。2015年には93万人もこの見本市を訪問したが、2019年は56万人まで下落した。

参照 : handelsblatt

ドイツ(西欧)では環境保護が社会の注目を浴びるテーマになっている。言い換えれば、車の排気ガスによる環境汚染が問題になっており、消費者の意識が変わってきた。さらにメッセ会場の前で環境保護団体がデモをして入り口を封鎖するなどして、「車 = 環境破壊」というイメージを広めるのに貢献した。

日本から取材に来ていたテレビ局のスタッフはこれに気が付かず、大いにはしゃいでいたが、10年後にはもう”IAA”は歴史になっているかもしれない。折角、ドイツまで取材に来たのだから、新車を紹介するだけでなく、ドイツの今の風潮も紹介して欲しかった。

見本市の将来は?

では見本市は将来、すべてなくなるのだろうか?そのようなことは、まずないだろうが、一般消費者を対象とした見本市は、今後、厳しい経営を迫られることは間違いない。そしてこの傾向はドイツだけの特殊な現象ではない。

東京モーターショーでは、すでに海外からの出展はほぼなくなり、純粋な国内メーカーの見本市と化している。訪問者も減少しており、2019年は77万人が見本市を訪問した。去年比でマイナス5%だという。

参照 : 日本経済新聞

欧米のように環境保護の関心が高くないので、日本ではまだ十分な訪問者がいる。しかし人口の減少、若者の車離れにより、今後も訪問者の数は減り続けるだろう。トヨタはこれを先読み、新車を展示することをやめ、「テーマパーク化」を図った。これがうまくいくかどうか、ここ数年で示されるだろう。

わかっているのは、このままではメッセは、欧米、日本を問わず、今後、ますます存在意義を失う事。形を変えて存続していけるかどうか、主催者と出展者の知恵が求められている。

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執筆者:

nishi

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