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安すぎるドイツの牛乳価格 – 牛乳生産量調整制度 廃止

投稿日:2016年10月3日 更新日:

ドイツで販売されている牛乳
安すぎる牛乳価格 1リットル46セント!でしたが最近は65セントまで回復

安すぎるドイツの牛乳価格 – 牛乳生産量調整制度 廃止

去年まで欧州では牛乳生産量調整制度、”Milchquote”が導入されていた。これにより、欧州各国が生産してもいい牛乳の上限を設定していた。酪農家の生産量をコントロールすることで需要と供給のバランスが保たれて価格が安定、酪農家の経済破綻を防ぐ目的で導入された。この制度が導入された80年代はまだ効果があったのかも知れないが、21世紀になってからはこの制限にもかかわらず、牛乳の値段が下落を始めた。

小さな酪農家は採算が合わず、潰れるか、大型経営の農家に吸収されていった。中規模の酪農家は生き残りをかけて、効果のない”Milchquote”の撤廃を要求した。欧州各地で農家がデモをすると、ここに選挙基盤を持つ政治家、ドイツならバイエルン州の政治家、がこの議題を欧州議会に持ち込み、2015年3月末をもって廃止されることになった。

農家の考えでは、牛乳を自由に生産できるようになれば、EUはおろか、外国に乳製品を輸出できて、酪農家の収入は改善する筈だった。制限が撤去される前、スーパーでは高い”Bio”や”H-mich”(Haltbarmichの略で、加熱処理を施しているので数ヶ月常温で保存できる)でない普通の牛乳が60セント前後で買えた。

制限が撤去された1年後、同じ牛乳の店頭価格は46セントまで、なんと30%も下落した。酪農家の反応は長く待つまでもなく、「これではコストも回収できない。」とドイツ全土でデモが起こった。制限がなくなれば、酪農家の考えでは収入が増えるはずだったのに、一体、何処で計算間違いをしたのだろう。

需要と供給

と、わざわざ聞くまでもない。上限がなくなれば、オペック諸国のように、生産できるだけオイル/牛乳を生産する。これがドイツ中は言うに及ばず、欧州中で同時に起きれば、供給が需要を追い越すのは火を見るよりも明らかだった。しかし農家は、「乳製品の輸出により、牛乳の需要が供給を上回り、牛乳の値段があがる。」とありもしない現実を空想してしまった。牛を相手に働く酪農家か、市場経済を理解できるわけもない。その要求に譲歩した政治家にも、責任がないわけではない。

ただでもたぶっている牛乳に加え、EUによるロシアへの経済政策の報復で、ロシアはEUからの乳製品の輸入を全面禁止、乳製品の輸出は増えるどころか、減少してしまった。さらには小さな酪農家がすでに姿を消し、中型、大型の酪農家が品種改良を加えた乳牛で、牛乳を大量生産しているのだから無理もない。この乳牛は15000リットル/年もの牛乳を生産できる。これは1日、42リットルに相当して、1日2回ではなく、4回も牛乳を搾ることができる。

酪農家への財政支援

酪農家は、「これでは生活できない。」と国に補助金と牛乳の生産量の制限を求めた。だったら”Milchquote”を撤廃しなければ良かったのだが、そこは酪農家と政治家のすること、責任はいつも他の場所にある。選挙区に酪農家を多く抱えるバイエルン州の政治家である農相は、二つ返事で1億ユーロの財政援助を約束した。しかしこれは大きな間違いだ。

補助金を出してしまうと、酪農家は補助金に慣れてしまい、牛乳の生産量を削減しようとしない。牛乳が売れる、売れないに関係なく、国が補助金を出してくれるなら、どうして生産量を削減する必要があるだろう。こうして本来の問題、需要を上回る供給は一向に改善されず、牛乳の値段はさらに下落、国が用意した補助金は1年で底を付く。来年は総選挙なので、またしても新しい補助金を用意しなくてはならない。

政府がどうせ補助金を出すなら、酪農家が農家に転換できるように補助金を出すべきだった。しかし問題の根源を掴むと、酪農家から嫌われる。そこで問題の根源である多すぎる生産量をそのままににして、補助金で選挙までご機嫌を取ろうとした。しかしすべての酪農家が、生存の危機を迎えているわけではない。

独自ブランドの導入

ある酪農家は、生産した牛乳を大手のスーパーに買い取ってもらわないで、仲間と一緒に組み合いを組織、独自の商品の開発、販売を始めた。牛乳の回収から商品作りまで組合で行い、独自商品としてスーパーに販売する。スーパーで陳列されている他の安い牛乳よりは値段が高いが、消費者は地元で生産された牛乳を好んで購入するので、大手の商品メーカーと戦えるだけのブランド力がある。政府がどうせ補助金を出すのなら、こうした農家の運動を補助すべきだった。

ちなみに日本は日本の酪農家を守るため、酪農製品の輸入上限を2800トンに制限、さらには輸入製品に法外な関税(30%+1KGにつき1000円!!!)をかけている。日本で生産された世界一高い酪農製品が、外国産の安い酪農品と日本市場で同じ値段になるように操作している。結果、ドイツでは250グラムのバター(塩無添加)が1ユーロで買えるのに、日本では6~7ユーロと、ドイツの6~7倍もの値段を払わされているが、それでも毎年バターが足らないと、秋になると緊急輸入。

すでに2008年からバターの不足が生じているのに、10年間、政府はこれに対処せず、毎年、緊急輸入でしのいでいる。日本政府はTPP加盟に際して、バターの関税についてどのような秘密協定を結んだのだろう。関税が安くなれば、日本へバターを輸出しているニュージーランドは、将来の大きなお得意様を抱えることになる。

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執筆者:

nishi

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