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ドイツ銀行とコメルツ銀行、合併ならず – 市場の反応

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ドイツ銀行とコメルツ銀行、ほぼ6週間もの間、合併の話し合いを続けてきた。お互いの帳簿を見て、合併によりそれぞれの銀行にどんな利点があるか、それとも欠点の方が多いか、さまざまな面から机上演習が行なわれた。

するとまだ合併すると決まったわけではないのに、「両銀行の合併しても、かぶっている業種が少ないので問題ない。」と寡占局が援護射撃をするほど、異例の事態だった。政治が両銀行の合併を望んでいるのは、明らかだった。

参照元 : Zeit Online

2019年4月末、両銀行は、「集中協議の結果、合併により大きな利益がない事が判明した。」と合併協議の中止を発表した。一体、何が合併を阻止したのだろうか。

参照元 : Süddeutsche Zeitung

理由1. 大株主の反対 – 合併に必要な金がない!

合併の最大の妨げになったのは、大株主の反対だった。まだ合併の話し合いが行なわれている中、ちゃんと調査しない記者が、「ドイツ銀行、合併に向けて大規模な増資を計画中!」とやった。

2008年の金融危機以来、ドイツ銀行はすでに6回も増資を行なってきた。毎回、「業務拡大に必要。」といういい訳だったが、増資で得られた金は行員のボーナスとして支払われるか、罰金の支払いで消散していた。

同銀行の株価がかっての120ユーロから、史上最安値の7ユーロ前後でのたうちまわっている今、新たな増資には小口株主も大口株主も興味はなかった。この時点で、「ドイツ銀行、新たな大型増資を計画中。」と記事が出ると、株主の反応はアレルギー症状で示された。頭取が、「増資の計画はない。」とコメントを出したにもかかわらず、同銀行の株価は落下速度を増した。

この報道は、よくあるフェイクニュースであったが、事実も露呈した。もし合併になった場合、ドイツ銀行は増資なくして合併の費用が払えるか、大いに疑問が残った。銀行は3年間も連続で赤字を出しており、余力は残ってない。仮に増資なくして合併をする場合、銀行は他のところで費用を節約しなくてはならない。

銀行が節約できるコストと言えば、配当金しか残っていない。ドイツ銀行は雀の涙の11セントしか配当金を払っていないが、それでも数回の例外を除いて、これまで(小額の)配当金だけは払ってきた。これをカットすると、ただでも株価低迷でご機嫌斜めの大口投資家の支援を失っていかねない。

来る5月には、株主総会がある。ここで大株主の支持が欠けると、頭取や役員の信認が危うくなる。(注1)ドイツ銀行がコメルツ銀行との合併を断念したのも無理はない。

理由 その他多数

そして労働組合は当初から、この合併案に反対していた。両銀行が合併した場合、最大で3万人の職が失われる。数年前に両銀行はそれぞれ、ほぼ1万人の解雇を行なったばかり。大銀行と言え、労働組合を敵に回しの合併には、リスクが高すぎた。

すでにドイツ銀行内での従業員の士気は底辺。さらに数万の解雇となれば、従業員のやる気を殺ぎ、銀行の業績改善は望むべくもない。

それでもドイツ銀行は、欧州で最大級の規模の銀行になることに魅力を感じていた。それほど嬉しくないのが事実上、買収されるコメルツ銀行だ。同銀行は国からの財政援助で倒産の憂き目を逃れててから、10年間、会社の厚生に努めてきた。その甲斐あってここ数年、少ないながらも継続的に黒字を出している。2018年分の業績は「ボチボチ」だったが、ドイツ銀行の倍、20セントの配当金を払うという。

コメルツ銀行は株価でも、史上初めてドイツ銀行の株価を追い越しており、規模でこそドイツで第二の銀行だが、中身はドイツ銀行よりもマシ。結婚相手にわざわざドイツ銀行を選ばなくても、求愛してくる銀行は多かった。そのコメルツ銀行がドイツ銀行の帳簿を見て、がっかりしたことは容易に想像できる。

市場の反応

ドイツ銀行の株を買って、塩漬けになってしまったドイツ人、「合併の話が出たのに、株価が全然上がらない。それどころか、増資の報道で下がる一方。」と愚痴っていた。

これが企業合併で、買収する側の運命だ。膨大な費用を捻出する必要があるので、会社の借金が膨らみ、会社の資産価値が減少する。これで株価があがることは(滅多に)ない。

「合併お流れ」が報道されると、コメルツ銀行の株は大きく上昇した。通常なら買収される企業の株価は、買収がお流れになると下がるものだが、上昇した。そしてドイツ銀行の株価は、上昇するかと思えば、まずは落下した。その後、ゆっくりと回復してプラスに転じて、その日を終えた。

もっともこれは、ドイツ銀行が同日に発表した2019年1~3月期の(誰も予想していなかった)改善された黒字が原因かもしれない。ところが翌日、「2019年の業績は2018年と同じレベルに留まるだろう。」という頭取のコメントが流れると、株価はいつもの方向、南に向かって進撃を初めて、前日のプラスを帳消しにした。

ドイツ銀行、コメルツ銀行の今後

ドイツ銀行とコメルツ銀行の合併の話が流れたことにより、まずはドイツ銀行への圧力が高まることになった。3年連続の赤字、2018年はかろうじて黒字を出したが、税金などを差し引いた最終業績はやはり赤字だった。

毎年、売り上げが減少しており、減少が止まらない。それでも黒字になったのは、人員を削減してコストカットをしたが故。減少を続ける売り上げを、人員カットで黒字にする方法は、長続きする商売モデルではない。

銀行は合併に代わる、売り上げを改善させる方法を見つけなくてはならない。ここにきてドイツ銀行の子会社、お金持ちの資産運用信託会社DWS に、スイスのUBSの同様の子会社 Amundi が高い関心を寄せている事が報道されている。

参照元 : Reuters

この信託会社が合併すれば、欧州で第二の規模の資産をかかえる大信託会社になる。ドイツ銀行は保持している株の一部を売却すれば、数十億ユーロの売却益が見込まれる。この金でコメルツ銀行に代わって、業績を改善してくれる事業を買収することも可能になる。

一方、コメルツ銀行は銀行業界では、買収標的として人気を博している。人員削減+デジタル化により、コストカットが進んでいる。買収に必要な金は、数年で回収できる。さらにはドイツ史上への参入が可能になる。

フランスの BNP Pariba 銀行、それにイタリアの Uni Credit 銀行が、ドイツ政府が保有している株の売却について問い合わせていると、何度も噂されていた。ここで新たな求愛者が現れた。

それはオランダの ING 銀行だ。同銀行がコメルツ銀行に魅力的な買収案を提示したのが、ドイツ銀行との合併が失敗した本当の原因とも言われている。

参照元 : Manager Magazin

真実のほどが不明だが、この3つの銀行の内、誰かがコメルツ銀行を買収する公算が高い。リスク型の投資家、10年間塩漬けできる資金がある方は、コメルツ銀行の株を買ってみたらどうだろう。案外、近い将来に化けるかもしれない。

注1)

ドイツでは株主総会で取締役員の信認を株主に請う、”entlasten”(罪などから解放する)という投票がある。90%を超える信任票(すなわちentlasen票)が当たり前で、80%になると株主の評価がかなり低い。大株主はよほどの事情がない限り、信任票を投じるからだ。

ドイツ銀行が何度検察の強制捜査を受けても、株価がどんなに低迷しても、大株主は常に信認の投票をしてきた。例外は一度だけ。2015年の株主総会で頭取は60%の信任票を獲得した。かってないこの低い支持を受け、頭取は翌日、辞任に追い込まれた。

参照元 : Manager Magazin

 

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執筆者:

nishi

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