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ロシアの野望 – 北海パイプライン Nord Stream 2

投稿日:2019年2月20日 更新日:


EUの遠大な目標は “United Europe”として、アメリカの対抗馬になること。しかし加盟国の結束力に欠けている。”Brexit”に始まり、フランスとイタリアの関係もますます悪化。東ユーロッパは団結してEUの難民政策に反対している。一枚岩どころが、烏合の衆になりかねない様相を呈している。EUがそれでも国際社会で重みを発揮できるのは、ドイツーフランスの「鉄の結束」が故である。

淵にある国、例えばギリシャやハンガリーが独自路線を主張しても、ドイツとフランスが団結している限り、EUは収まる。ところが今度はよりによって、フランスとドイツの足並みまで揃わなくなった。一体、何が起こったのだろう。

ロシアの野望

広大な領域を抱えるロシアだが、経済基盤が弱い。ガスとオイル産業がなければ、この超大国の経済力は小国デンマークの経済力とさほど変わらない。だからこそロシアが膨大に抱えている地下資源の輸出は、ロシアの死活問題だ。

ロシアは大量に生産される天然ガスを、パイプラインでヨーロッパに送っている。問題はそのパイプラインのルート。白ロシア、ウクライナ、ポーランドなどを経由してドイツに輸出されている。これらの「通過国」は無料で国土の使用を認めるわけではなく、「トランジット料金」、すなわちショバ代を取っている。

これが通過国にとってはおいしい。西側のような世界で競争できる産業基盤が少ないウクライナの経済は、多かれ少なかれ、このパイプラインのショバ代収入に頼っている。これがなければ公共施設の運営も滞ってしまう。

しかしロシアはこうした通過国にショバ代を払いたくない。足元をみられて、1000立方メートル当たり1,6ドルものかなり高額の通過料金を取られているからだ。1年ではこの金額はたまり溜まって、数十億ドルもの金額になる。

北海パイプライン – Nord Stream 2

そこでロシアはこれまでの通過国を迂回して北海の海底に、パイプライン”Nord Stream”を敷設した。以来、通過国を通るガスの量は目に見えて落ちてきた。通過国は目に見えて減っていくショバ代に頭を悩ませているが、最悪の事態はこれからだった。

ロシアにしてみれば、できれば1ドルたりとも通過国にトランジット料金を払いたくない。そこで発案されたのが、”Nord Stream 2″。これはロシアが第二次世界大戦でフィンランドから分捕った内北海の街から、バルト三国を迂回して、北ドイツの街、Greiswaldまでの1200kmを海底パイプラインで結ぶ計画だ。

これが完成すれば、通過国を通るガスの量は最小限度に抑えられ、ロシアの収入は飛躍的に増す。それよりも大事な点は、ドイツをロシアの経済圏に取り入れることができる点だ。ロシアはすでにドイツのガス供給元も第一人者になっているのに、このパイプラインが完成すれば、さらに依存度が増す。

これを心配する声も上がったが、ロシアのガス会社、ガスプロム社の取締役会長はかってのドイツの首相のシュレーダー氏。鶴の一声で反対する声はかき消された。この事業にはドイツの大企業も資本を出しており、成功にかける意気込みは強い。政府への太いパイプ(政治献金)で、政府内から懸念の声が出ないように配慮した。

こうしてパイプラインの建設は、民間の主導で2005年に始まった。完成予定は2019年の年末だ。ところが2018年、トランプ大統領がこの北パイプラインを政治のテーマにすることを発見してしまった。

米国が経済制裁で脅す理由

トランプ大統領は、この北パイプラインの完成により、ドイツどころか西ユーロッパがロシアのガスに依存することを懸念している。かって産油国が西側へのオイル供給をストップしたように、ロシアがガスの供給ストップすると、西側の経済活動が止まってしまう。

本当に供給を止めなくても、供給ストップで脅すだけでその効果は絶大だ。「まさか、そんなことはしないでしょ。」と楽観している方、ロシアはそんなに甘くない。過去、何度もガスの供給ストップで脅してきた実績がある国だ。

参照先 : Welt

将来、米ロシア関係が悪化、「どっち側につくかはっきりしろ。」となった場合、ドイツがガスの供給ストップを恐れ、「ロシアを支持する。」という事態になりかねない。

トランプ大統領がちょっかいを出すもうひとつの理由は、日本政府が煮え湯を飲まされた液化LNGだ。

参照元 : 日本経済新聞

トランプ政権に脅されて、日本は米国から高価な液化LNGを輸入、日本の貿易収支が赤字になっている。

参照元 : Bloomberg

アメリカ産のLNGは、コスト面ではロシアの天然ガスとは比較にならない。あるいは、勝負にならないといったほうがいいだろう。アメリカはこの液化LNGをヨーロッパに輸出することで、財政の健全化を狙っている。しかし、「買え。」と言っただけで、本当に買うのは、日本くらい。

欧州各国は、安いロシアのガスを買っている。アメリカにはこれが気に入らない。そこでロシアへのガス依存度云々を理由に、経済制裁を課すと脅す。その妥協案として、欧州に液化LNGを輸出しようとたくらんでいる。

ロシアへ依存の危険

しかしこのパイプラインが完成すると、ドイツがロシアのガスに完全依存してしまう。かってアラブの産油国に煮え湯を飲まされて、「エネルギーの供給先を多角化する。」と決めたのに、これでは昔の状態に戻ってしまう。米国の懸念は、今回に限って、机上の空論ではない。

この見解を共にしているのがフランスだ。これに加えてフランスは、ウクライナなどの産業基盤が弱い国の収入が減って、この地域が政情不安定になることを警戒している。政情不安になればフランス製の品が売れないばかりか、ウクライナで難民が発生する危険もある。これだけは絶対に避けなければならない。

しかるにドイツは短いスパンでしか状況を見ないで、安いロシアからのガスの依存に向かってまっしぐら。ドイツこそ、ドイツ製品の輸出や難民問題を真剣に考えて、ウクライナなどの通過国の収入の安定化を図るべきなのだ。

ちょうどEU委員会が今週、北海のガスパイプライン敷設を巡って、新しい条件を課すことになっている。その直前になって、フランスが、「敷設に反対する。」と言い出した。ドイツ政府は「突然のフランスの寝返り」に驚いているが、米国を初めにして何度も警告をしているのに、聞き耳をもたなかっただけのこと。

自業自得?

フランスがパイプライン敷設に反対をするとこの計画は、すでに70%を超えるパイプラインの敷設を終えているのに、頓挫する。このプロジェクトに大金を投資しているドイツの大企業は、真っ青になった。

欧州内には「市場を独占する状況を利用してはならない。」という厳格なルールがある。これに違反したマイクロソフトやGoogleには巨額の罰金が課された。

参照元 : Spiegel

エネルギーに関しても寡占を阻止する規則があり、「パイプラインの経営者とガスの供給者は別の企業であるべし。」、さらには、「パイプラインの経営者は競合者に施設の共同使用を認めなければならない。」となっている。

これによりひとつの企業が市場を独占することを妨げ、企業間での競争を可能にしている。競争があれば合理化が図られて、価格が安くなり、消費者の恩恵になるからだ。

ところがこの北パイプライン2は、ロシアの国営企業のガスプロム社がドイツ企業の支援を受けて敷設している。ガスの供給者とパイプラインの経営者が同一で、明らかにEUの規則に違反している。

ところがこのパイプラインの「寡占禁止法」はこれまで何度も議会で議案になったが、ドイツと「ドイツのお誘い」を受けた国の反対で、法律になっていなかった。この間隙を利用してガスプロムはパイプラインの建設を進め、既成事実を先に作ってしまおうと画策した。そしてその手先になっていたのが、ドイツだった。これではフランスが怒るのも無理はない。

妥協

フランス政府はドイツ政府のお誘いを受けている国に、「これ以上、反対するなら補助金を減らすぞ。」と脅し、翻意させることに成功した。こうしてEU議会でドイツは孤立してしまった。そしてフランスはEU委員会のパイプライン敷設の新条件を課すことで、この計画に息の根を止めようとした。

ここまできてやっと、ドイツも敗北を悟った。上述の「パイプラインの寡占禁止法」に同意すると譲歩した。さらには、「新パイプラインによる周辺諸国への影響に考慮する。」との文面にも同意した。この譲歩により、ウクライナなどの通過国の収入を安定させることになっている。

しかし時間がなかったこともあり、実際面での対策は机上の空論状態だ。運用面では問題が多々、生じるに違いない。それでもドイツとの関係の悪化を恐れるフランスは、ドイツ側の譲歩で妥協、パイプライン敷設の新条件は「パイプラインの寡占禁止法」の内容に順ずることで合意に達した。

こうしてパイプラインの敷設は続けることが可能になった。が、ロシアのガスプロムにしては、「到底受け入れられない。」状況なので、どう反応するか楽しみだ。敷設したパイプラインを、シェルなどに売却することも考えられる。

比較

今回のフランスとドイツの案件が示すように、国際関係には双方が譲歩することが欠かせない。日本と韓国のように、双方が非難の応酬をしているのでは、関係の改善はない。戦争状態にあるならともかく、重要な交易関係にある国がお互いに非難を続け、関係を悪化させて誰の特になるのだろう。又、日本の政治家は国民の反韓国感情を煽るような発言を慎むべきなのに、先頭にたって国民を扇動している。

かって日本首脳部は国民に「戦争は勝っている。」と大嘘をつきまくった。敗戦が避けらないのを1944年の悟り、連合国側に降伏を打診している。しかし国民に嘘を言った手前、「負けました。」と言えず、終戦を1年もずるずると先延ばし。その結果、数多くの国民の命を北方領土を失った。

国民を煽るような政治家を信用してはいけない。そんな政治家に躍らせられると、また過去の過ちの繰り返しだ。言いたい事はたくさんあるだろうが、それは韓国人も同じ。言いたい事を主張するのではなく、政治家たるもの、お互いの妥協点を探るべきだ。

今回のフランスとドイツの案件でも、どちらの政治家も相手国を非難することは一切、避けた。意見が異なる国の間で妥協を見出すことを、外交というのだ。日本(と韓国)がやっているのは、子供の言い争いでしかない。

 

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執筆者:

nishi

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