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金の投資詐欺 PIM Gold 【2020年最高被害額】

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金の投資詐欺 PIM Gold 【2020年最高被害額】

かって米国のスター投資家のバレット氏が、

「宇宙人が地球にやってきたら、何で金(きん)があんなに価値を持っているか、説明する必要がある。」

と、冗談交じりに言ったほど、地球人は金が好き。工業製品としての価値もそれほど高くなく、

「ただ飾るだけ」

の金属が、あれほどまでに高い評価を受けている理由は、心理学者に聞かないと説明がつかない。

ただ、これだけ価値が高いとなると、人を誘惑する際にも素晴らしい効果を発揮する。すでにアルキメデスの時代から金の詐欺があったのも、うなずける。

そしてその金を使った詐欺は、アルキメデスが没して2200年以上経っても、なくなることがない。今回紹介するのは、2020年に最高の被害額を記録した金の投資詐欺 PIM Goldだ。

日本人ほど投資を嫌がる国民は居ない?

ドイツ人は基本、ケチ。

これを善意を込めて倹約家と呼ぶこともできるが、倹約家が嫌うのは投資。

当然、投資に手を出す人は少ない。

その一方で日本では、

「日本人ほど投資を嫌がる国民は居ない。」

と言われている。一体、どっちがより投資嫌いなのだろう?

ドイツの経済新聞によると、投資している国民は1010万人。

参照 : www.handelsblatt.com

割合で言えば、12.3%ほどになる。

一方、日本人の投資率は16%と言われている。

参照 : diamond.jp

すなわち世界で最も投資を嫌がる国民よりも、ドイツ人はさらに投資を嫌がる。この数字を見れば、ドイツ人がどれだけケチ、もとい、倹約家なのか、一目瞭然だろう。

ドイツ人は金が好き!

その倹約家の投資先と言えば、価値がなくなることがない金(きん)が大人気。

言う間でもないですね。

2019年、ドイツ人はかってないほど金を購入した。

参照 : www.handelsblatt.com

その量は8918トンにも上る。日銀が保有している金が765トンなので、その11倍の金をドイツ国民が保有している。

ドイツ人の金に対する愛情は、ナチスの時代から変わることがない。第二次大戦の敗戦により、これまで貯めた金塊を戦勝国にすべて没収されたのに、今、ドイツの連邦銀行が保有している金は3366トンに上る。

日銀の実に4,4倍。この数字を見れば、どれほどドイツ人が金が大好きか、金を大事と思っているか、よくわかると思う。

金への投資方法

ではドイツ人はどのように金へ投資しているのだろう。

一番人気の金への投資は、金貨と金の延べ棒。これに金の装飾品(多分に女性ですね。)が続き、この上位ふたつの金の投資だけで、8000トンに上る。

第三の投資方法として登場したのが、金を原価にした投資だ。その一番代表的なのが、ここでも紹介したことがあるドイツの株式市場の運営会社”Deutsche Börse”が発行している”Xetra Gold”/ クセトラ ゴルト。

参照 : www.xetra-gold.com

クセトラ ゴルドを分かりやすく言えば、金の価格に連結したETF。その仕組みも簡単明瞭。もしあなたがこの証券を買うと、”Deutsche Börse”が市場で金を買い、金庫に保管する。この証券のさらなる特徴は、

「紙切れじゃ嫌だ!現物が欲しい!」

と言えば、金を自宅まで届けてもらうこともできる。(*1)

この証券はドイツ人のハートを捉えて、ベストセラーになった。

金の投資詐欺 PIM Gold

商売で誰かが成功すると、必ずこれをコピーする人物が現れます。

“Xetra Gold”も例外ではなく、ネット上には金への投資を誘っている業者がたくさん出現しています。

一度試しに、”Gold kaufen”でぐぐってください。一番上に出てくるデグッサ / Degussa は有名で歴史のある金行です。

ドイツ第三帝国の時代にはユダヤ人から取り上げた金を溶かして、ナチスの刻印を押した延べ棒を作成していました。

名前が知られているので、今日ではナチの刻印の代わりに「デグッサの金の延べ棒」と刻印を押しています。その刻印が本物の証として通用するほど、信用の高い金行です。

もしドイツで金の延べ棒を買うなら、デグッサの金をお勧めします。

デグッサ 金の延べ棒

参照 : shop.degussa-goldhandel.de

その他にもたくさん金を売ってる業者がありますが、そのひとつがPIM Goldという会社でした。

PIM Gold 詐欺の手段

デグッサやクセトラ ゴルトは有名なので、安全性を優先する投資家はそちらに行きます。

そこでPIM Goldがターゲットにしたのは、

「もっと儲けたい!」

と欲深い投資家。単に金を売る代わりに、

「ウチで金を買うと、年率11%の儲けが出ます!」

とやった。どうせ詐欺なのでさらに気前よく、

「金を当社で保管する場合は、ボーナス金を払います!」

とやった。すると投資家は買った金を家まで届けてもらう代わりに、PIM Goldで保管する方法を選んだ。(*2)

こうする事で投資家が払った金を古い客への利益の支払い、それに代理店へのコミッションの支払いに費やすことが可能になった。

典型的な雪玉式の詐欺(*3)であったが、代理店を使って大規模にセールスを展開した事で、大きな成果(被害)をあげることに成功した。

代理店の暴露

PIM Goldの金の投資詐欺が発覚したのは、よりによってこれまで手下となって客を騙してきた代理店のお陰。

約束されたコミッションが支払われないことに怒った代理店が、契約を破棄して、ボーナス金 /”Bonus Gold”という会社を立ち上げて、同じ手腕で詐欺を始めた。

それだけでは済まず、ご丁寧にも関係省庁にPIM Goldの詐欺を垂れ込んだ。しかしワイヤーカードの詐欺の時と同じく、監督機関であるBafinは動かなかった。

ここで噂を嗅ぎつけたドイツの経済新聞が、PIM Goldの詐欺(疑惑)をすっぱ抜いた。

参照 : www.handelsblatt.com

記事が出たのに

「知りませんでした。」

では検察は面目丸つぶれ。重い腰をあげてやっと強制社宅調査を行ったのが、2019年9月。

参照 : www.handelsblatt.com

検察がPIM Goldの金庫に残ってる金を確認したところ、投資家に約束している金、1.9トンが欠けていた。

消えた金の行方

検察の取り調べによると、

「年11%の利回り!」

の甘言に乗った投資家の数は1万人を超え、被害総額は1億5000万ユーロに昇る。一体、騙した金は何処に消えたのだろう?

というのもPIM Goldの社長のトルコ人、高級車を買ったり、外国に不動産を買ったわけでもない。これだけ大規模の詐欺を働いたのに、社長の財産は14万6000ユーロに過ぎなかった。

検察は儲けの大部分はトルコに送金されていた事を突き止めたが、受取人まではわかっていないようだ。あるいは調査は進んでいるが、政治的にマズイので公表されないのか、そこはわからない。

投資お金は戻ってくるの?

PIM Goldに投資した人に共通の心配が、

「投資したお金は戻ってくるの?」

全額取り戻すのは無理です。ただ朗報もあります。検察がPIM Goldの金庫に、「見せ金」として保管していた金を確保しています。

コロナ禍で金の価格が高騰しているので、これを現金化することで、投資額の20%程度が返却される見込みがあります。

さらに!裁判でPIM Goldのはまっとうな会社ではなく、雪だるま式の詐欺であったことが証明されると、代理店は受け取ったコミッションを破産資産管理人に払い戻す必要があります。

これが結構、馬鹿にできない額。そこで検察は被害者に対して、検察の告訴に名乗り出る事を求めています。

教訓

昔から何度もここで書いていますが、5%を超える配当を約束する投資には要注意。

ましてやそれが10%を超えたら詐欺です。

「儲かる話」

が本当にあるなら、赤の他人のあなたに伝える前に、自分で真っ先に投資しています。

それをしないであなたに勧めてるのは、あなたの金が目的です。

注釈 – 金の投資詐欺 PIM Gold

*1

わずか50ユーロ程度の証券を買って、「金の現物を届けて!」とやるのは無理です。

*2

金を預けずに配達を選んだ人は、

「預けてなくて良かった。」

と、安堵のため息をついた。が、届けられた金が本当に金なのか心配になった。

そこで検査をしてみると、あら不思議、本当に金だった。が、金の量 / オンス / グラムが誤魔化されていた。

*3

日本ではねずみ講と言いますね。

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執筆者:

nishi

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