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ドイツ銀行 マネーロンダリング疑惑で強制捜査!

投稿日:2019年2月13日 更新日:


絵本から出てきたようなカリブ海の脱税天国

数年前、一般的に”Offshore-Leaks”と呼ばれる南米やカリブ海の脱税天国の情報がリークした。最も有名になったのが「パナマペーパー」と呼ばれるパナマの法律事務所の情報漏れで、アイスランドでは首相が辞任に追い込まれた。

中国の首脳陣もここに口座を隠し持っていたが、国内での報道を禁止することで、このリークを克服した。ロシアも似たり寄ったり。ここに口座を持っていた英国の王室、それに当時の首相は評判を落とし、その他にも数多くの有名人が釈明に追い込まれた。不思議なことにこのリーク(情報漏れ)では、銀行が罰せされることはなかった。本当に銀行は手を汚さなかったのだろうか。

脱税容疑申告義務

数年前、日本でマイナンバー制度が導入された。「個人の権利の侵害だ。」とお怒りの方も居るが、世界的に観れば、日本は後発組だ。ドイツでは10年以上も前に、ドイツ人、外国人、難民を問わずにドイツに住民登録をした者にはマイナンバーが発行されるシステムが導入されている。正確には、”Steueridentifikationsnummer”(税金認証番号)と呼ばれるもので、ドイツで銀行口座を開設すると、遅かれ早かれ、これを銀行に届け出る義務がある。

そして口座に数万ユーロも払い込もうものなら、「お金は何処から?」と行員が出所を尋ねてくる。てっきり日本のつもりで、「余計なお世話だ。」なんて返事をしようものなら、銀行はこれを税務署に届け出る。届出の義務があるからだ。数週間後、「お金の出所を明かしてください。」という税務署からの手紙が届き、これが書類で証明できないと、とっても面倒なことになる。

このようにドイツでは表面上は脱税を防ぐシステムが確立している。ところがこの脱税容疑申告義務は、数万ユーロの金額に採用され、100万ユーロを超えるお金には採用されないケースが多い。ドイツの検察局がオフショアリークスのデータを分析していると、このリークが公になった2016年以降、某銀行からカリブ海の脱税天国に900を超える顧客の金(合計で3億110万ユーロ)が、送金されていることが明らかになった。

検察局にとって、そして我々にも不可解なのは、パナマペーパーを始めてとしてあれほど世界中で注目を浴びたのに、2018年の今になっても同じ方法で、お金を脱税天国に送金していることだ。すでにその経路が税務署にばれているのに、まさにその経路を使ってお金をカリブ海に送金するなど、一体、どこの間抜けな銀行なのだろう。

ドイツ銀行 マネーロンダリング疑惑で強制捜査!

そう、その銀行は数年前から罰金に次ぐ罰金を課されて、ドイツ一のスキャンダル銀行として名前を確立、高額な罰金により倒産の噂が絶えることなく、株価が低迷を続けているドイツ銀行だ。

ドイツ銀行はオフショアリークが明らかになっているのに、2018年になってもカリブ海に浮かぶイギリス領の脱税天国に客のお金を送金し続けていた。問題なのはこの金の出所。検察局はオフショアの口座に送金されている金は組織犯罪で稼いだ金で、ドイツ銀行がこれを綺麗な金に洗濯するのを助けていると見ていた。

参照元 : Handelsblatt

11月末、検察局は家宅捜索を行う状況証拠が十分に集まったと判断、170人もの捜査員がフランクフルトのドイツ銀行本社、郊外にあるドイツ銀行の支店を強襲した。ドイツ銀行はこれまで何度も検察と税務署の強制社宅捜索を受けている。初めて検察局が社宅捜査にやってきた際は、「なんという無礼行為だ!」と社長が州知事に怒りの電話をしたことで、社会から大いに叩かれた。

これで4回目になる社宅捜査、流石に今度は上層部も捜査に慣れていた。現場で待機している報道陣に、「銀行はオフショアリークスで明らかになった懸案は、すべて検察と税務署に届け出たと思っていた。勿論、検察には、これまで通り協力する。」と銀行の公式のコメントを出した。言うまでもないだろうが、銀行の株価はこの日最高で8%の落下、過去最安値を大幅に更新した。

無能なBafin

実はドイツ銀行、内部の不正取引を防ぐ、あるいは不正取引が行なわれた場合は、これを突き止める安全機構が不十分だと、これまで何度も指摘されてきた。数年前にはロシアの実業家の脱税を助けたとして、6億3000万ユーロもの高額な罰金を課された。

参照元 : Handelsblatt

その度に銀行はコンプライアンスと呼ばれる部署を改革、銀行内で不成取引を取り締まる部署の権限を強めてきた筈だった。しかし「未だに効果的な処置が取られていない。」と判断した国の銀行業務の監視機関、Bafin は特別監査官をドイツ銀行に派遣した。

この捜査官がドイツ銀行内の不正取引を監査している筈だった。しかし今回の検察の強制会社捜索が示した通り、検察はドイツ銀行で未だに不正取引が行なわれていると観ている。Bafin から派遣された捜査官は一体、何をしていたのだろう。

容疑者

ドイツ銀行をそれでも弁護するならば、株価ではなく組織の大きさでは未だに大銀行のドイツ銀行、従業員の数はほぼ2万人。今回捜査の容疑者に挙げられたのは、名前のわかっている2名と名前不詳の行員のわずか数名。

日本でも会計を任されている社員や役場の職員が、数年に渡って数億円の金を横領している事件が、ほぼ毎週のように報道されている。わずか数十名、数百名の職場でこの有様だ。2万人もの従業員を抱える大企業で、不正取引を完全になくすことができるのか、その点では疑問が残る。

首脳部の責任

ドイツ銀行の頭取は、この4月に新しく就任したばかり。今回の社宅捜査の対象は2016年以降の不正取引なので、頭取の直接の責任ではない。しかし頭取のゼービング氏は、これまで個人客部門の責任者であり、今回の捜査対象になった部署のトップの監査役にあった。

取り締まり役員メンバーが個々の取引内容をチェックすることはできないが、これを代わって監査させることはできた。ドイツ銀行内部での監査機能が不十分と指摘されていただけに、もうっと効果的な処置を取るべきではなかったのか?という非難からは逃れることはできない。

ドイツ銀行の再生を賭けて、頭取に就任したゼービング氏。しかし業績は悪化を続け、株価は毎月のように最安値を更新しているこの一番マズイ時期にこの社宅捜査。果たしてゼービング氏に銀行を再生させることはできるのだろうか。そして何よりも、ゼービング氏に銀行の厚生を実行する時間は残っているのだろうか。

編集後記

ドイツ銀行はこの強制社宅捜査で「客が銀行を避けるようになり、12月の収入がガックリ減った。」と声明を出した。(上場されている企業は、株価に影響があると思われる案件は、速やかに公開する義務がある。)このニュースが流れると、ドイツ銀行の株価はさらにガックリ逝き、過去最安値をまたしても更新した。

ドイツ第二の銀行、Commerzbank の業績も芳しくなく、収益の目標を下方修正した。以来、ドイツ銀行とCommerzbankとの合併の噂が絶える事がない。合併後の名前は、”Deutsche-Commerzbank” だと、ぴったりの名前も考案されている。

この噂に信憑性を加えているのは財務大臣で、「アメリカの巨大な銀行に立ち向かえる大規模な銀行がドイツにも必要だ。」とコメント、銀行の名前こそださなかったが、どの銀行を指しているのか明らかだった。

しかしふたつの銀行、それに業績悪化から抜け出せないが合併すれば、「すべてよくなる。」というのは夢物語。確かに人件費はカットできるが、高額な退職金を払う必要がある。さらに銀行事業で重なっている部分が多く、寡占局の承認を得るには同業者に事業を売却しなくてはならない。事業を売ると会社の売り上げが減り、退職金払いなどの経費で初年度は業績が大幅に悪化する。

そしてドイツ銀行のアキレス腱、社内のシステムの老朽化。異なる年代の異なるシステムがバベルの塔のように積み重なっており、デジタル化では後塵を拝している。合併になれば、これを総入れ替え。これは数年に渡る大事業で、銀行の悪化した業績をさらに悪化させる。

「それでも合併しかない。」と言われるほど、ドイツのプライベート銀行の状況は厳しい。金融危機から10年経っても、悪循環から抜け出せないドイツの大銀行。将来はあるのだろうか。

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執筆者:

nishi

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