ドイツの最新情報 ドイツの経済

次々に経営破綻するソラーパネル業者 – 悪いのは中国?

投稿日:2017年9月30日 更新日:


ソラーパネル市場を席捲した中国製のパネル

誇りの問題

「ドイツ人であることを誇りに思う。」と語る若いドイツ人。「それはおかしい。」と(故)シュミット首相。「自分の成し遂げた成果、努力を誇りにするならわかるが、ドイツ人になるために君は何もしてない。何もしていないことを誇りに思うとは、おかしい。」と若きドイツ人に回訓を垂れた。

同様に、「俺は○○を知っている。」というおかしな威張り方をする人がいる。他に威張れるものがないから仕方ないのだろうが、そんな人間の一人が、緑の党の政治家、兼、農家の”Frank Asbeck”氏だった。氏が同類の人間と違うのは行動力。

ソラーパネルの業界最大手 Solarworld

ドイツ政府が高額な補助金を払って再生エネルギーを促進すると聞くと、1998年、太陽電池パネルを製造する会社”Solarworld”を設立した。翌年、同社の株価は1ユーロにも満たない額で上場されたが、政府の助成金がソラーパネルの売り上げと将来の展望を押し上げると、株価は1年で43倍になった。

補助金商売のコツはスピード。アスベック氏はこの点をしっかり理解しており、会社の規模を次々拡大していった。中国からの競争に押されて、「儲からない。」と悲鳴を上げだした同業者を買い捲った。まずは2006年にシェルの工場を、2007年には日本のコマツグループから、2014年には大赤字を出しているのに自動車部品メーカーボッシュから工場を買い取った。

2008年、金融危機が巻き起こした不況で車が売れなくなりドイツの車メーカーが倒産寸前になると、「オペルを買う。」とまで言い出して、(買わなかったが)新聞のヘッドラインを飾った。常に大口を叩く人間柄なので、同氏が言う言葉には要注意が必要だ。

解放された国内市場

同氏のプランは、「政府が高い補助金を出しているうちに、できるだけ多くのパネルを売る。」という単純なものだったが、これが上手くいった。少なくとも当初は。ところがドイツ政府の高い補助金は、ドイツ企業だけでなく、中国の太陽電池パネルメーカーも大いに助けた。

日本のように国内市場を外国からの企業に対して閉鎖、国民に国産の高い製品のみを提供、北朝鮮国民のように「他の国でも一緒。」という誤解を国民が信じていればいい。ドイツではそうはいかない。

国内市場をEU内のメーカーは言うに及ばず、EU外のメーカーに対しても開放しているので、外国製品に対しても補助金を払った。これにより、元々安かった中国製のパネルはドイツ製に比べて半額以下、競争できる値段ではなくなった。それでもアスベック氏は”made in Germany”の高品質を声高に宣伝して、値段ではなく質で勝負しようとした。ドイツ政府が高い補助金を払っている限りは、まだうまくいった。

Solarworld 大ピンチ!

ところが再生エネルギーの補助金を、高い電気代として担っている一般家庭への負担が大きくなりすぎた。消費者を保護するため、政府が補助金の額を制限すると、太陽電池製造メーカーの大量死が始まった。世界最大の太陽電池メーカーだった”Q-Cells”は2012年に倒産。”Solarworld”も破産の寸前だったが、アスベック氏の大口が会社を救った。

臨時株主総会で株主に、社債の購入額の95%を自主放棄することを納得させた。同時に中東のカターを投資家として獲得すると、氏は節約した金でドイツの有名タレントからボンの郊外に建つ城を買った。

「そんな金があるなら、会社の厚生に使うべきだ。」という野次には、「個人の生活に口出しするな。」と回答、氏の大口ぶりを発揮した。会社が倒産間際にあるのに、自身に多額のボーナスを払い城なんぞ買う社長には愛想を尽かすべきだっが、この時点でも投資家は氏の約束、「節約した金で会社は再び黒字になる。」をおぼれる者のように信じた。

氏は、「中国メーカーは太陽パネルの価格をダンピングしている。」とEUはおろか米国でもロビイ活動、欧州と米国は中国製のパネルに対して処罰関税を導入した。同氏は中国では眼の仇になったが、欧州ではヒーローだった。これで中国製品の売れ行きは激減、”Solarworld”は黒字になる筈だった。ところがそうはならなかった。

2016年だけでソラーパネルの値段は20%も落ちた。大国中国で需要を超えて生産された大量のパネルが、欧州に流れ込み続けているのが原因だ。”Solarworld”は米国で民事の損害賠償裁判で敗訴しており、その請求額が7億ユーロ。2011年以来、赤字の自転車操業をしている会社が払える額ではない。

裁判での負けが同社の倒産になることは誰の目にも明らかだったが、アスベック氏は、「負けたと決まったわけじゃない。」と控訴、会社が黒字になるまで時間を稼ごうとした。同氏のプランでは2019年から黒字になり、借金も返せる筈だった。

そのプランは、ソラーパネルの値段が安定することが条件だった。しかし2016年の大幅なパネル価格の暴落により、計算の辻褄が合わなくなった。安くなったソラーパネルの価格で試算すると、同社は裁判の敗訴を2019年以降まで遅らせることに成功しても、「黒字なる見込みがない。」という結果が出た。こうしてドイツ最後のソラーパネル製造メーカー”Solarworld”は、2017年5月に会社更生法の適用を申請した。

悪いのは中国

アスベック氏は同社の破綻の原因を、「中国企業によるダンピングのせい。」としたが、これは半分の事実だった。確かに中国製のパネルは安いが、ドイツ製のパネルと性能がほとんど変わらないのだ。

中国製の自動車がドイツ車と同じ性能で半額の値段だったら、どれだけドイツ製の車が売れるだろう。高くてもドイツ車が売れるのは、メーカーが多額の資金を投資して常に性能、品質向上を図って、安い車と比較してはっきりとした差があるからだ。

しかし”Solarworld”は会社が儲かっているのに、ごくわずかの投資しかなかった。「補助金でボロ儲けしているのに、どうして投資なんかする必要がある。」というわけだ。結果、中国企業が性能でドイツ製のパネルに追いつくことが可能になった。

政府の補助金が市場競争を歪曲させて、メーカーを間違った方向に誘導したことにも責任がある。国民の払った高い電気代は、中国のソラーパネルメーカーの世界制覇を助ける結果になってしまった。

時代の流れを寝過ごす

同じことがデイーゼルエンジンについても言える。ドイツのメーカーは「デイーゼルより効率のいいエンジンはない。」と主張、政府は排ガス操作に目をつむった。ドイツの車産業がドイツ産業の旗艦だからだ。ところがその旗艦が米国で撃沈されてしまった。ドイツの車メーカーは大急ぎで電気自動車への転換を図っているが、肝心要の電池の製造は日本、韓国、中国企業の支配下にある。ドイツの車メーカーは高い金を払って、アジアのメーカーから電池を買う以外に選択肢がない。

このように政府誘導の企業戦略には、落とし穴がある。例えば日本政府の原子力優先政策。この政策に乗ってしまった為、東芝は倒産間際まで傾いてしまった。福島原発事故、事故後の手に負えない事故処理を見て、「原子力に未来はない。」と当たり前の決断を下してれば、今のような惨状は経験しないで済んだろう。

 

-ドイツの最新情報, ドイツの経済

執筆者:

nishi

comment

関連記事

22世紀の社会モデル?- 条件なしの基本給 | Pfadfinder24

22世紀の社会モデル?- 条件なしの基本給

ゴミ箱を漁るドイツ人。 16年前、最後のSPD政権が構造改革を実施した。目的は肥大していた社会保障費を削ること。社会保障費は税込みのお給料として会社が払うで、社会保障費を削減すれば、会社の人件費が下が …

スターダ争奪戦 - ヘッジファンドがヘッジファンドを恐喝 | Pfadfinder24

スターダ争奪戦 – ヘッジファンドがヘッジファンドを恐喝

ドイツで処方される薬はほぼゲネリカ、コピー薬品です この記事の目次 キッチン用品メーカーWMFWMF転売製薬会社 Stadaスターダ争奪戦スターダ買収失敗二度目の正直 – ヘッジファンドが …

フルクスワーゲン 下請け会社の謀反 | Pfadfinder24

フルクスワーゲン 下請け会社の謀反

世界に冠するVW本社工場。 この記事の目次 メーカーの恐喝フルクスワーゲン 下請け会社の謀反過去からの確執確執の裏には相互理解編集後記 メーカーの恐喝 自動車部品メーカーにとって、メーカー様はお殿様の …

家賃の上昇を止めろ!- 家賃ブレーキ制度導入 | Pfadfinder24

家賃の上昇を止めろ!- 家賃ブレーキ制度導入

ベルリンの壁を一部取り壊して建てられた高級マンションは、非難轟々。 この記事の目次 上昇が止まらない家賃家賃の上昇を止めろ!- 家賃ブレーキ制度導入オーストリアの賢い住宅政策 上昇が止まらない家賃 過 …

難民認定請負人 - 1000ユーロで難民認定請負います! | Pfadfinder24

難民認定請負人 – 1000ユーロで難民認定請負います!

シリア難民、それともイラクからの経済難民? 日本で道を尋ねる際、通常なら町を歩いている外国人に、「○○には何処にありますか。」とは聞きません。ところがドイツでは、外国人に道を聞いてきます。それほどまで …