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デパート生き残り戦争 – カオフホーフ買収

投稿日:2018年11月15日 更新日:


買収された最大手のデパート カオフホーフ

日本のデパートは独自(高級品)の品揃えでスーパーとの差を明確にして、存在を確立している。一方ドイツの”Warenhaus”(デパート)は、からっきし人気がない。

市内の一等地に建っているのにドイツ人の、「ネットで買った方が安い。」という倹約家根性で、客足が遠のく一方だ。さらには品揃えも、あまり魅力がない。高級品ではなく、他の店でも(もっと)安く買えるものばかりで、「ここじゃなきゃ買えない。」という物がない。これでは客足が遠のくのも無理はない。

デパート生き残り戦争

ドイツにまだ残っている(全国版)デパートは”Karstadt”と”Kaufhof”のふたつだけ。両デパート、デユッセルドルフのように隣に建っているか、斜め向いに建っており、お互いに客を奪いあってきた。90年代まではまだ儲けを出していたが、21世紀に突入すると経営が次第に悪化した。

その主な理由はふたつ。まず郊外に十分な駐車場を備えた大きなアウトレット店が展開を始めると、「ブランド品が安く買える。」と客足が遠のき始めた。日本と違ってドイツの市内中心部は往々にして車の乗り入れ禁止。そこで市内まで電車に20分乗って買い物に行くよりも、自宅から車で40分かけても買い物に行けば、「元が取れる。」値段が客の心を掴んだ。

私も一度、デユッセルドルフ郊外のアウトレットに行ったことがあるが、まさに修羅場だった。1ダースもある試着室は常に使用中。これが空くまで待てない女性は廊下で服を脱いで試着を始めており、何処も下着姿の女性ばかり。女性の”Schnäppchen”(お買い得品)にかける意気込みは、男性には理解できない。

デパートが下火になったもうひとつの理由はインターネットだった。21世紀になって次々とネットショップが開店した。自宅に居ながらショッピングができる手軽さが受け、販売総額は毎年、うなぎ上り。しかしデパートは、「うちはそんな商売は必要ない。」とネットの波に乗り損ねた。

カールシュタット倒産

デパートの規模がカオフホーフよりも小さいカールシュタットは、この消費者の購買行動の変化の余波をモロに食らった。しかし会社の経営者を変えればうまくいくと錯覚、今日まで会社の資金横領で監獄に入っているミドルフォフ氏を社長に迎えた。まさに泥棒を家に迎えるようなものだった。同氏は会社の資産を売却することで会社の決算を一時的に改善したが、売るものがなくなると採算はまたしても悪化した。

ここで悟っても良さそうだが、カールシュタットの所有者は大富豪の未亡人。カールシュタットの他にも、多数の店舗を所有していたが、経営に関してはズブの素人。会社の運営は旦那の時代使っている銀行に任せていた。

銀行を信用すると、、。

この銀行が、「損益は一時的なものなので、株をそのまま保有するように。」とアドバイスした。しかしそこは女性で、「何かうまくいっていない。このままではすべて失いかねない。」と直感、銀行に株を売って残る資産を確保するように打診した。

ところが銀行は、「経営を何も知らないあなたに、何がわかるんですか。」と未亡人の打診をこなごなに粉砕。それどころか経営が傾いているデパートに、個人的な資産を投入するように説得してしまった。結果、すでに沈みかけている船に大金を注ぎ込んだが。倒産は避けられなかった。

裁判闘争

カールシュタット倒産後、未亡人は銀行を相手に19億ユーロの損害賠償請求訴訟を起こした。民事の損害賠償裁判としては、過去最大の請求額だ。5年間の裁判闘争後、被告と原告は和解に達した。メデイアの報道によると、数百万ユーロの支払いで双方が了解したそうだ。

参照元 : Handelsblatt

かっては億万長者だった未亡人だが、年齢を考えれば、数百万ユーロあれば、十分な余生が送れるだろう。この未亡人の父親が生存していた頃、「娘に10マルク持たせてパンを買いに行かせると、お釣りをもらってこない。」と洩らしたことがあったそうだ。パン屋が、「パンは10マルクだよ。」と言うと、これを信じてしまうほどナイーブで、お金の価値を知らなかったという。

カールシュタット売却

その後、カールシュタットは俗言う、「禿げたか」の目標になった。会社を再建するという約束でデパートを買い上げると、会社の資産を次々に売却して、もぬけの殻にしてしまうので、「葬儀屋」とも呼ばれている。あちこちで支店が閉ざされて、数千名の従業員が解雇された挙句に、最後はオーストリアの投資会社ジグナが、カールシュタットを購入した。

ジグナはカールシュタットの店内、品揃えを大改造した。さらにはインターネットショップにも力を入れて、ネットでデパートのほとんどの商品が買えるようにした(これまでは限定された商品だけ)。

参照元 : Karstadt

すると不思議や不思議、カールシュタットは黒字を出すようになった。

カオフホーフ売却

大改造が済んで黒字を出すようになったカールシュタットとは対照的に、カオフホーフは赤字から抜け出せなかった。ジグナの社長、オーストリア人のベンコー氏はこのチャンスにカオフホーフも買収して、ドイツのデパートを支配しようとした。しかし当時のカオフホーフの持ち主であったメトロの社長は、このオーストリア人、ベンコー氏が大嫌い。オーストリア人ではなく、カナダの投資会社にカオフホーフを売却した。

しかし持ち主が変わっても、会社の赤字体制は変わるものではない。カオフホーフは毎年、赤字を出し続けた。カナダの投資会社に投資している客は、「このままでは株価が下がる一方だ。対策を打て。」と要求したが、何度やっても赤字体質から抜け出せなかった。

カールシュタットの逆襲

ここでまたしてもジグナ、すなわちベンコー氏が、「30億ユーロでカオフホーフを買う。」とオファーを出してきた。しかしカナダの投資会社にも面子、沽券がある。「いや、結構。」とこのオファーを蹴って、自社でカオフホーフを厚生しようとした挙句、赤字を拡大させてしまった。

ここでやっと、「何かがおかしい。」と悟ったカナダの投資会社、これまで担当だったマネージャー(男性)を首にして、新しいマネージャー(女性)を外部から雇ってカオフホーフの責任者にした。外部から来たので、同僚に酌量する必要のないマネージャーはカオフホーフの現状を包み隠さず報告した。そこには、「デパートの現状は見込みなし。採算を改善するにはまずは大金を投資する必要があるが、それでも元が取れるかどうか未定。」と書かれていた。

この報告書が届いてからカナダ人は、「まだ買う気があるかね?」とベンコー氏に打診をした。氏は幾つか妥協、カオフホーフの赤字を引き継ぐ、赤字体質の孫会社も一緒に買う、をしなければならなかったが、買収は合意に達した。

参照元 : Witschaftswoche

本来は規模の小さいカールシュタットがカオフホーフを買うなど、数年前なら想像もできなかったが、現実になった。果たしてベンコー氏は赤字体質のカオフホーフを厚生できるのか。街中の中心部になっている隣同士のデパート、閉館されるのはどちらなのか?(多分、カオフホーフだろう。)

問題はまだ山積しているが、ベンコー氏はついに目標に達成、ドイツの大デパートを支配下に収めることが出来た。二度断られても諦めず、チャンスをうかがい続けた同氏の戦略勝ちだった。

編集後記

カールシュタットとカオフホーフの合併を審査していた寡占局は、「合併による寡占、あるいは弊害が見つからない。」と、2018年11月9日、これを許可した。言い換えれば、それほどまでにデパートの市場占有率が低いので、合併により、「ドイツ デパート」が誕生しても、同業者には影響がないと判断されたことになる。果たしてドイツのデパートの将来や如何?

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執筆者:

nishi

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