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【脱二酸化炭素】 ドイツの水素戦略 世界の覇権を狙う!

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【脱二酸化炭素】 ドイツの水素戦略 世界の覇権を狙う!

ドイツ政府はコロナ景気対策に、 ドイツの水素戦略 も組み込んだ。

このため諸外国では全く報道されていなかったが、案外、それがねらい目なのかもしれない。

これまでの化石エネルギーに依存した経済体質は、地球温暖化により、急激な変革を迫られている。もっとも中には、

「日本は資源のない国なので、石炭発電は国の重要なエネルギー源。」

「今後も石炭発電の輸出を促進していく。」

と、呑気な事を言っている某国の経済産業大臣もいる。

参照 : nhk.or.jp

地球温暖化が原因の異常気象で、毎年、数百名の人命が失われているのに、よくもそんな呑気なことが言えるものだ。

もっとも日本政府の近視眼は今回に限ったものではなく、日本政府の伝統でもある。福島原発事故の惨状を見ようとしない政府は、

「原子力発電所輸出促進政策」

をアベノミクスの三本の矢の一つに指名した。

そのスローガンに乗ってしまったのが東芝だ。結果、東芝は会社の屋台骨が傾くほどの巨大な損益を抱え込んだ。

今回も日本企業は政府の音頭に乗ってひょいひょいと踊り出すべきか、考えてみるべきだ。

かってゴルバチョフ書記長は東ドイツの石頭の共産党首脳部に、

„Wer zu spät kommt, den bestraft das Leben“(遅れてくる者は、人生で損をする。)

と語った。その東ドイツがその後、どうなったのか改めて言うまでもない。

10年先のエネルギー源

ドイツはまさに日本の

  • 原子力発電所輸出計画
  • 石炭発電所輸出計画

に変わる10年先のエネルギー源として、コロナ危機で各国が対策に右往左往している隙に、国がイニシャテイブを取ってドイツの水素戦略を推進する事を決めた。

数年後、コロナ危機が収まって環境問題にもっと注目されるようになった際、

「いつの前にドイツはこんな技術をつけたんだ?」

と他国を出し抜くのが魂胆だ。是非、日本政府にも真似をして欲しいので、ここでドイツの水素戦略を紹介いたします。

水素はクリーンなエネルギー?

水素はクリーンなエネルギーと思っていませんか?

日本における水素生産の最大手、岩谷産業はそのホームページで、

「水素は燃焼しても水に戻るだけ。Co₂や大気汚染物質の排出ゼロ。」

と謳っている。

参照 : iwatani.co.jp

これに大きな嘘が隠されているのだが、わかるだろうか。

灰色水素

岩谷産業を始め、日本では天然ガスを加熱して水素を得ている。

その過程で大量の二酸化炭素が放出される。その量たるや、1トンの水素を得るために10トンの二酸化炭素を大気に放出している。同社はこれに一切、言及しないで、

「水素は大気汚染物質を排出しないクリーンなエネルギーです。」

と褒めちぎっている。これでは水素を使う意味がない。そのまま天然ガスを使用しても二酸化炭素の放出量は変わらないし、お金をかけて水素にするだけ無駄。こうした環境保護に役に立たない水素を灰色水素という。

青い水素

灰色水素に次いで、青い水素というものがある。

水素の生成方法は灰色水路と変わらないが、水素を得る過程で発生する二酸化炭素を大気に放出しないで、二酸化炭素の貯蔵施設にこれを貯めるのが異なっている。

問題は二酸化炭素の貯蔵施設。ドイツでは地下に二酸化炭素を貯蔵する実験を何度か行った。実験自体はうまくいった(らしい)のだが、これが新しい技術として確立することはなかった。問題は二酸化炭素の地下貯蔵施設のある自治体。

安全性、環境問題を心配して大規模な二酸化炭素貯蔵を許可しなかったのだ。

二酸化炭素地下貯蔵のカラクリ

北欧の大産油国、ノルウエーは石油の後の収入源を探している。

そこで思いついたのが、石油採掘で得た技術と知識を利用する二酸化炭素の貯蔵だ。ノルウエー政府によると

「二酸化炭素をタンカーでノルウエーまで持って来れば、地下2500メールの砂岩層に安全に保管します。」

という。

参照 : zdf.de

数千年後、地殻変動で地下の貯蔵層が壊れる頃には、二酸化炭素はとっくに固形化しているので、水が流れ込んでも、大気に露出しても問題ないという。確かにダイヤモンドにしても地中で炭素+が圧縮されたもの。一旦、固形化すれば地表に出ても問題ない。

貯蔵施設に地下水が流れ込んでも、泡立つ炭素水になるだけで害はない。これをしないで二酸化炭素を大気に放出しながら、

「クリーンなエネルギーです。」

とやるのは環境保護詐欺だ。

グリーンな水素

そして最後にはグリーンな水素がある。

グリーンな水素とは、風力発電、太陽発電など、本当にクリーンな再生エネルギーを利用して、水から得る水素を指す。こうして得た水素を車の推進力、暖房、そして調理まで、さまざまな用途に利用する。

しかし最大の二酸化炭素の削減はケミカル(化学) & 製鉄業など、大量に電気を消耗する産業をグリーンな水素に転換することにある。これにより二酸化炭素の排出量を20%もカットできる。

製鉄所

【脱二酸化炭素】ドイツの水素戦略 世界の覇権を狙う!

脱二酸化炭素では、ドイツはこれまでも努力をしてきた。

その典型がドイツが決定して脱石炭発電 & 二酸化炭素税だ。

しかし脱二酸化炭素により環境汚染は止められるが、コストが上昇する。日本が環境対策に消極的なのは、まさにこれが原因。コストが高くなり、世界中で日本製品が売れなくなる事を恐れるあまり、脱二酸化炭素には消極的だ。

ドイツも本音は同じだが、環境意識の高い大衆がこれを許さない。そこで高いコストでも世界で需要が見込めるドイツ水素戦略で、世界の覇権を狙うことにした。

ドイツの水素戦略 その中身は?

ドイツの水素戦略の中身、まずは予算から見ていこう。

コロナ経済対策の一環で、ドイツの水素戦略に組み込まれた予算は90億ユーロ。邦貨で一兆円を超える巨額の予算だ。

水素がこれまで大きな役割を担ってこなかった最大の理由は、その生産コストにある。灰色水素なら比較的安価に製造できるが、これでは意味がない。そこで焦点はグリーンな水素に置かれる。

ただしここでも問題がある。ドイツでは国内の電気発電量のおよそ半分が、再生エネルギーで賄われている。日本と比較すれば夢のような値だが、グリーンな水素製造に回すほどの余裕はない。

さらには国内での電気代の高騰も手伝って、政府は今後、再生エネルギーの構築のスピードダウンを決定している。

又、国内で発電している再生エネルギー施設で分離した水素は、コストが高くて、ペイしない。

そこで政府は太陽に恵まれたアフリカで太陽発電を大規模に推進、ここでグリーンな水素を安価に生成するノウハウをここ数年で開発する計画だ。

皆まで言えば、アフリカ諸国に投資することで難民を出している国で雇用が生まれ、欧州に向かって危険な移民の賭けに出る必要がなくなる(かもしれない)。

目標では2030年までにグリーンな水素の生産量を、5ギガワットまで上げることになっている。これはドイツで1年に発電される総発電量の2/3に相当する。

参照 : zeit.de

ドイツの水素戦略 どうやってお金を稼ぐの?

幾ら立派な水素製造施設を作って二酸化炭素の排出量を削減しても、金食い虫では長続きしない。

ドイツの水素戦略は、

  • 先進国でも脱二酸化炭素を推進しようとしない国
  • 中国・インドのように劣悪な環境汚染により脱化石エネルギーが急務な国

に、made in Germany のグリーンな水素生産施設を輸出する狙いがある。

あの日本でさえ(一部)石炭発電を見直しをしているが、これに代わるクリーンな発電がない。もっとも日本政府は、

「原発はクリーンなエネルギー」

だ言うだろうが、福島の惨状をみた自治体は新しい原発の建設を許さないだろう。かと言って日本の再生エネルギーは申し訳程度のレベルで、石炭発電にとってかわる選択肢にはならない。だから今後も化石エネルギーに頼る戦略しか建てられない。

遅かれ早かれ、日本も水素エネルギーに転換を図るだろうが、その頃にはドイツに頼らざるを得ないかもしれない。

環境破壊の先進国である米国でも、大統領が変われば(それが4年後でも)、環境保護への関心が高くなる。なればグリーンな技術へ頼らざるを得ない。こうした将来の需要を見通して、政府は1超円を超える予算を組んだ。

通産大臣自身、

「水素エネルギーで世界一を目指す。」

と明言しており、果たして10年後、ドイツの思惑が大当たりしたか、今から楽しみだ。

 

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執筆者:

nishi

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