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エア ベルリン(やっぱり)倒産 – 会社更生法の適用

投稿日:2017年12月25日 更新日:

もう見ることないエア ベルリンのチェックイン カウンター

エア ベルリン 財政支援申請

今回はここで度々取り上げてきたテーマ、ドイツ第二の航空会社エア ベルリンの続編だ。

この6月、同社は国に財政支援を申請した

正確に言えば、エア ベルリンが市は払い不能に陥った際は、国が支払いを保障するという保障を申請した。

借金で首が回らない会社でなければ、このような保障を申請するわけもなく、

「いよいよ終わりも近い。」

と感じさせた。

この保障申請には、あまり見込みはない。国とは言え、借金を返せる見込みがない会社に金はかさない。

そこでエア ベルリンは今後、どのような方法で会社を黒字にして借金を返すのか、国に説明する必要に迫まられた。

「来年は黒字になる。」といい続けてほぼ10年間コンスタントい赤字を出し続け、2016年は過去最大の赤字を出した会社には、論理的な説明はできなかった。

新社長の大きな誤算

そのような申請を上げると、

「乗客を心配させて予約が減る。」

と気づいたエア ベルリンはこの保障申請を取り下げた。しかしすでにその効果は、十分に発揮された後だった。

テレビ局は

「航空会社が倒産した場合には、。」と、特集を組んで放映すると、エア ベルリンのチケットを購入したらお金を失うという不安をばら撒いた。

エア ベルリンの社長に就任したばかりのヴィンケルマン氏は、

「親会社のエチアドが今後1年半の財政支援を保障しているので、国の保障は必要ない。」

と声明を出し、客の不安を取り除こうとした。しかしこの話が本当だったら、何故、同社は国に保障を求めたのか。

最初から見込みのない保障申請は、社長として経験の浅いヴィンケルマン氏の大きな自責点だった。

失策続き

ルフトハンザから鳴り物入りでやってきたヴィンケルマン氏だが、エラーはこれだけに留まらなかった。

空港で飛行機から荷物を降ろす作業をしている会社を、氏の独断でこれまで利用したことがない会社に変更した。

結果、荷物が紛失、離陸が遅れる、さらにはフライトがキャンセルされるという大混乱を招いた。あまりの大混乱で赤字が風船のように膨らみ始めた。

社長はベルリンのテーゲル空港での新契約を反故にして古い会社に戻したが、乗客は

「エア ベルリンはもうコリゴリ。」

と同社から離れていった。

結果、エアベルリンの赤字はさらに拡大して、飛行機の空席率が上昇を始めた

小手先の手段で小銭を節約しようとした結果、大損をするマネージメントの典型的なエラーだった。

調子がいい会社ならまだ乗り越えることができただろうが、重病患者のエアベルリンには、棺おけの蓋を封じる釘になりかねない。

エア ベルリンの構造的な問題

エア ベルリンの欠点は大まかに言って2点。

まず最初の失敗は、”Urlaubsflieger”(休暇専用航空会社)から、ルフトハンザに追いつき、追い越せ!と他社を買収、定期路線にまで手を伸ばした事にある。

結果、複数の航空機を使用することになり、運営コストが上昇した。

ライアンエアーは飛行機のランニングコストを軽減することが成功の鍵と見抜いて、一種類の飛行機しか採用していない。

しかるにライアンエアーと競争するために、エア ベルリンはチケットの値段をルフトハンザよりも2割り~4割も安く提供したのが第二の失敗だ。

結果、飛行機が埋まっても、チケット代金が安く、ランニングコストが高くて会社が赤字になるという赤字体制を確立してしまった。こ

れでは社長を何度替えても黒字になるわけがない。そして歴代の社長は、コストを削ることで会社を黒字にする努力を重ね、悉く失敗した。

エア ベルリン(やっぱり)倒産 – 会社更生法の適用

もしエアベルリンが倒産しなかったら、世界七不思議のひとつになっていただろうが、奇跡は起こらなかった。

8月15日、エアベルリンは会社更生法の適用を申請した

「1年半の財政支援」を約束していたエチアドが、「これ以上お金を捨てたくない。」と態度を換えたのが原因だ。

本来ならエアベルリンの飛行機はグラウンデイング(地上待機)して、大混乱が起きる筈だったが、ドイツ政府は財政支援を行うことを直ちに決定。

エアベルリンの飛行機は、これまで通り利発着することが出来た。

「8月の休暇時期、休暇先で帰れなくなる国民を避けるため。」

と、政府はこの財政支援を説明した。この財政支援は3ヶ月の期限付きなので、11月まではエアベルリンのフライトを予約しても大丈夫(な筈)だ。

もっとも上述のライアンエアーはEU委員会に、

特定の会社に財政支援をするのは公平な競争を妨げるもので、この財政支援は法律違反だ。」と提訴した。

委員会の判断次第では、財政支援が早く中止される可能性もある。

エア ベルリンの(まだ)社長のヴィンケルマン氏は、

「国が保障しているので大丈夫。」

と安心感を広めようと躍起で、

「ルフトハンザとの買収交渉が進んでいるから、11月以降のフライトでも安心してブッキングしてくれ。」

と言っていた。

これは同氏の数ヶ月前の声明、

「エチアドが保障があるので心配しなくていい。」と同じように、信用しないほうがいいだろう。(注1)

エアベルリン倒産のニュースが流れると、同社の株価は40%近く落下したが、もっと落下しなかったのが不思議だ。(その後、毎日20%続落しています。)

ルフトハンザの株価はこのニュースで5%近く上昇、過去10年の株価最高値にほぼ到達した。

今後、ルフトハンザはエア ベルリンのおいしい部分だけ底値で購入するだろう。

さらにドイツの航空市場、すくなくとも国内腺を独占することになり、今後も株価は上昇を続けそうだ。

注1

案の定、エア ベルリンを買収したルフトハンザは、倒産したエア ベルリンのチケットを受け入れることを拒否した。

倒産した会社の言うことは真に受けるべきではない。

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執筆者:

nishi

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