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Basta Euro! (14.06.2018)

投稿日:2018年8月24日 更新日:

Basta Euro!
イタリアの棺桶の釘になるか?五つ星政党の党首。

2018年4月にイタリアで下院選挙があった。その結果は、散々たるものだった。第一党に躍進したのはポプリストの「五つ星」政党。かってのコメデイアンが率いる政党だ。数年前にローマで(美人)市長を出したことで、大きく注目された。以来、ローマはゴミの中に沈み込んだ。ポプリストは調子のいいことは言うが、口先だけなので政治を変える事はできず、ローマの環境はさらに悪化した。にもかかわらずイタリア市民は五つ星を支援して、32%を超える得票率を獲得、第一党に躍り出た。

イタリア病

第二党にはこれまで首相を出してきた社会民主党がなんとか留まったが、得票率はわずか18.9%。これはドイツの社会民主党の過去最悪の得票率を、さらに下回るもの。首相を出している政党の得票率としては破局だ。この伝統のある政党に1%の僅差まで迫ってきたのが、右翼政党のリガーノルト。

イタリア有数の工業地帯である北イタリアを独立国家にして、貧乏な南は自分で面倒をみなさいという、子供みたいな主張をしている政党だ。この政党が18%に迫る得票率を確保するのだから、イタリアは病んでいる。第4の政党はあのベルスコーニの政党。汚職で有罪判決が出たにもかかわらず、選挙前に恩赦を受けた。そして14%の得票率を獲得。

どうしてこんな目を覆いたくなるような結果になったのか、それにはここ数年のイタリアの政治、経済を見てみる必要がある。2007/8年の金融危機で、イタリアは投資家の信頼を失った。日本のように国債を発行して、借金で生活していたからだ。日本人と違いイタリア人は政府を信用しておらず、イタリアの国債を買わない。

学識者政府

投資家が、「空手形になるかもしれない。」と国債を売り始めると、これが加速。借金の返済率がうなぎ上り、国家破産しかねない状況にまで悪化した。ここで大統領が学識者政府を導入。政治家ではなく、経済、金融に詳しい学者を首相に任命した。これがモンテイ首相だ。首相は年金受領年齢を引き上げるなどしてイタリア政府の出費をカット、同時に消費税を上げて、イタリアにここ10数年で始めての緊縮財政を導入した。

長引く不況

お陰で国債利率は落ち着いて、ついには下落を始めた。イタリアはこうして国家破産の憂き目をかわすことができた。しかし当時の政府が導入した緊縮財政で、イタリアには不況が根付いてしまった。本来、国の将来を担うべき若者の失業率は33%。

参照元 : Statista

欧州内ではあの破産国家ギリシャとスペインに次いで、3番目に高い数字だ。大学を出ても職につけない若者が、選挙で「黄金の橋」を約束するポプリストに投票しても、非難できない。この最悪の時期に、大量の難民がやってきた。

難民危機

トルコを経由してバルカンに上陸するかっての主要難民流入ルートは、欧州からトルコ政府への巨額の財政支援で(一応)、閉ざされている。現在の難民の主要ルールは、リビアからシチリア向けてボートで渡るルートになっている。こうしてイタリアは大量の難民の流入と直面することになった。欧州政府はイタリアへの財政支援を約束したが、焼け石に水だった。

イタリアは2017年の1~6月だけでほぼ10万人の難民を受け入れた。本来ならEU内で難民を公平に分けることになっているのが、ドイツがイタリアから受け入れたのはたったの1500人。欧州で最大の国ドイツがこの様なので、他の国がどれだけ難民をイタリアから受け入れたのか、想像に難くない。

こうしてイタリアは不況の真っ最中に、毎年20万人もの難民の面倒を見る羽目になった。これはイタリアの(低い)管理能力を超えており、難民はチェック、収容されることなく、町を徘徊している。金がない難民は犯罪を犯して治安が悪化する。するとイタリア国民の怒りは、緊縮財政を強いている政府とEUに向けられた。

もしEUが難民問題でイタリアを助けていれば、問題はそれほど大きくならなかったかもしれない。こうした背景があり、選挙で勝った政党が主張していたのは、“Basta Euro!”「ユーロからの脱却」と、「難民の受け入れ制限」だ。

右翼とポプリスト連合政権?

選挙で勝利を収めた五つ星と北イタリア同盟は連合政府の調整に入った。右翼とポプリスト。EUにとっては最悪の結果になってしまったが、自業自得だろう。このパッチワーク政権は連立協定書に、「EU離脱の国民投票を行なう。」と書き気込んだ。これが外部に漏れるとイタリアの株式市場は大暴落。イタリアの国債の返済率が上昇を始めた。まさに2007/8年のデジャビューだ。

数日後、パッチワーク政権は連立協定書からこの国民投票を消したが、不信感は残った。案の定、今度はパッチワーク政権の財務大臣には、反EUの旗手のお年寄り(80代)を就任させるという人事を発表した。この人事が発表されると、またしてもイタリアの株式市場は大暴落。イタリアの国債の返済率が上昇を始めた。しかしイタリアの大統領が、そのような政権を承認することを拒否した。パッチワーク政権はこれに憤慨、大統領の罷免を要求、イタリアはましても危機を迎えた。

イタリアの破綻はユーロの破綻

イタリアは欧州内でドイツとフランスについで、3番目に大きな国内生産高を誇る。別の言い方をすると、イタリアが倒れると、EUにはイタリアを支援できる金がない。スペインやギリシャと違って、イタリアはでかすぎるのだ。ユーロが下落を始めたのも、無理はない。イタリアが倒れると、ユーロの終焉になりかねない。

イタリアの大統領は2007/8年のときと同じく、学識者政府を導入すると発表した。政治家ではなく、経済、金融に詳しい学者を首相に任命した。もっともこの学識者政府が国会で過半数の賛成票を獲得する確立はほとんどない。その場合は学識者内閣は辞任、新選挙を公示する。しかし選挙が行なわれて政権が確立するまでの間、代理政府として政府業務を引き継ぐことになる。

これはパッチワーク政権にとっては、最悪の事態だ。選挙で勝ったのに、政権を担当できないのだから。そこで右翼とポプリストは再考、老人を財務大臣から外した。さらには首相にはどの政党にも属していない法律家、コンテ氏を推した。この人事を大統領が承認したので、ようやくイタリアで新政権が誕生した。

パッチワーク政権成立

ちょうどこの6月にこのイタリアの窮状を象徴する事件が起きた。寄付金で活動しているNGO団体がマルタ島沖で難民が満載されたボートを発見した。NGO団体は難民を保護後、イタリアの港に入港する許可を求めたが、拒否された。イタリアの港湾局はマルタの方が近いので、マルタに難民を連れて行くように命じた。

参照元 : Welt

ところがマルタも難民を受け入れたくないので、拒否。難民を乗せた船は入港を拒否されて、地中海を徘徊する羽目になった。最終的にはスペイン政府が受け入れを提案、現在、この船はスペインに向かっている。

すると難民を受け入れもしなかったフランスが、「イタリア人は人道的な救助をしない。」と非難。怒ったイタリア政府はフランスの大使を首相府に呼びつけて、来る両首脳会談をキャンセルすると脅している。フランスはEU内の取り決めで数千人の難民をイタリアから受け入れる義務があるのに、これまで受け入れたのは160人。フランスにはイタリアを非難する謂れはない。

ドイツを初めとするEUは、難民問題でもっとイタリアを助ける必要がある。言葉だけでなく。さもないと数年後にはユーロ離脱の国民投票になる。そのような投票では、Brexitが示したように、感情に訴えるポプリストには叶わず敗退する。それから慌てても遅い。

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執筆者:

nishi

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