ドイツの最新情報 ドイツの経済

A400Mは欠陥機? + A380 高すぎる問題

投稿日:2017年6月29日 更新日:


歴史に残る欠陥機 A400M

いつも話題を提供してくれるエアバス社(旧EADS)。今回はここで何度も取り上げている軍事輸送機、A400Mの続編だ。この前、ここで取り上げたのが2年前。「そろそろ問題を解決しただろう。」と思いそうだが、そこはエアバス社、未だに問題を抱えている。それも同じ問題を。

次世代の軍事輸送機を開発せよ!

60年代に導入された軍事輸送機Transall C-160。独仏の共同事業で、エアバスではなく、独仏の航空機メーカーが生産した。大きなトラブルもなく、信用性も高く、ルフトハンザは軍事用途に開発されたこの輸送機を民間用として注文したほど、よく出来た輸送機だった。

しかし導入から20年も経つと、「近い将来、次世代の輸送機が必要になる。」と軍需産業は会合、将来の入札に向けて共同で軍事輸送機を開発する協定を結んだのが1982年だ。その後、最初の試作機が製造されたたのが1994年。

ここでEADS社(現在はエアバスと社名を変更。)が、この飛行機の開発を引き継ぐことになった。同社は会社の名前と値段の載ってるパンフレットを刷って、「買ってくださいな。」と欧州、トルコ、アジアでセールを開始した。

生産前に大量受注

2003年までに同社は180機の生産受注を受けたが、まだ設計の段階。製造ラインも何も出来ていなかった。にもかかわらず、「2008年には製造を開始できる。」と豪語した。案の定生産開始は1年遅れ、2009年に組み立てが始まり、やっと試験飛行が始まった。エアバス社は、「2010年には最初の機体をフランス空軍に納入できる。」と豪語した。

ところが同機は大きな問題を抱えて開発費がうなぎ登り、エアバス社は注文をした各国を、「値上げを受け入れてくれないと、生産をやめる。」と脅した。大株主であるフランスとドイツはこれに応じたが、他の国はそう簡単にいかなかった。国防大臣に賄賂を贈るなどの工作の結果、なんとか値段交渉を乗り切ったが、最初の機体は3年遅れで2013年にフランス空軍に納入された。

しかし生産をしながら欠陥を補正していくため遅延が生じ、ドイツ空軍に納入されるA400Mは毎年5機ではなく、2機に減らされた。そして2015年にはここで紹介した通り、納入前の試験飛行で墜落、乗組員が死亡した。

A400Mは欠陥機?

A400Mの最大の、そして終わることのない問題は、そのエンジンにある。「舗装された滑走路を必要としない。」という売り文句のためプロペラエンジンを採用したが、プロペラ エンジンでは計画した出力が出なかった。そこで同社は買い主に約束した最大積載用を減らすことで、なんとか輸送機を飛ばそうとした。

ところが、今度はエンジン内部で亀裂が発見された。同社はエンジンの総合点検を最初の500Kmの飛行で行うようにマニュアルを変更、その後は250Kmごとに点検が必要とした。250Kmで総点検が必要になる車なら、誰も買わないだろう。しかしこれは車ではなく、長距離飛行をする輸送機なのだ。

250Kmでエンジンの総合点検が必要になる輸送機に、どんな価値があるだろう。これでは軍事作戦に使えない。エアバス社は新しい航空機を開発する際の鉄則、「せめてエンジンだけは、すでに機能が証明されている既存のものを使う。」を無視したため、この有様だ。

国防大臣の販売促進パフォーマンス、逆効果に

「値段が上昇する一方で、その飛行機自体は飛び立つことがない。」と散々の酷評をいただいたエアバスの宣伝に、国防大臣は自ら一役買って出ることにした。リトアニアで開催されるNato加盟国会議への出席にA400Mを使用して、「この輸送機は実用できる。」とわが身をもって示威したかった

ところがリトアニアに到着後、エンジンが(また)故障した。ドイツ空軍は国防大臣を連れ帰るため、導入から50年近くたつTransall C-160を派遣して、この機は大臣を無事連れ帰った。故障のA400Mは、ドイツ空軍が現地に部品を運び込み修理中だ。

損害賠償請求

納入が遅れ、約束した機能も発揮できないA400Mに対して、「契約違反だ。」と購入国から損害賠償を要求する声が高くなった。同社は2016年の決算報告で、同機の修理のために22億ユーロもの大金を見積もっていると発表、同社の儲けは2015年と比較して10億ユーロも減額した。この修理(予想)額には、購入国への契約違反金は含まれていない。

購入国が契約で正当に認められている契約違反金の支払いを要求すると、エアバス社はこれを払う義務があり、同社の2017年度の会計は赤字にさえなりかねない。そこで、「契約違反金の要求は控えるべきだ。」と同社のロビイストを各国に派遣、賄賂を贈ってご機嫌を取る事に余念がない。

Eurofighter 贈賄問題

同社の工事現場はA400Mだけではない。オーストリアへの”Eurofighter”納入でふんだんに賄賂を贈ったため、同社は収賄でオーストリアから訴えられてしまった。エアバス社は払った賄賂の費用を回収するために、オーストリア政府に水増し請求書をしていたのだ。

その額やナット一個がなんと3000ユーロ。オーストリア空軍には、「純正部品を使用すること。」という規定があり、このべらぼうに高い部品を使用せざるをえなかった。まるで暴力団だ。

A380 高すぎる問題

それだけでは問題は収まらず、同社が開発した世界最大の旅客機、A380は値段が高すぎて注文のキャンセルばかりが入ってきている。お陰でこれまで納入されたのは138機で、これでは開発コストさせも回収できておらず、この飛行機はデカイ赤字を生む結果になっている。

まだ318機の予約注文が残っているが、今後もキャンセルが続けば同社は生産を終了して、空いている組み立て工場を他の儲かる航空機の組み立てに使用せざるを得ない。民間の企業なら無能な経営陣は刷新されるが、国が経営に参加しているため、政治家への賄賂で急場をしのぎ、癌の巣窟が削除される事がない。これが国有企業の宿命だ。

-ドイツの最新情報, ドイツの経済

執筆者:

nishi

comment

関連記事

ドイツ銀行とコメルツ銀行 合併ならず! | Pfadfinder24

ドイツ銀行とコメルツ銀行 合併ならず!

ドイツ銀行とコメルツ銀行、ほぼ6週間もの間、合併の話し合いを続けてきた。お互いの帳簿を見て、合併によりそれぞれの銀行にどんな利点があるか、それとも欠点の方が多いか、さまざまな面から机上演習が行なわれた …

スターダ争奪戦 - ヘッジファンドがヘッジファンドを恐喝 | Pfadfinder24

スターダ争奪戦 – ヘッジファンドがヘッジファンドを恐喝

ドイツで処方される薬はほぼゲネリカ、コピー薬品です キッチン用品メーカーWMF ドイツの有名なキッチン用品メーカー”WMF”をご存知だろうか。高級品のイメージを崩さないように同 …

はしかの流行を防げ! - 予防接種義務化 & 罰金制度 | Pfadfinder24

はしかの流行を防げ! – 予防接種義務化 & 罰金制度

ドイツでもはしか、”Masern”に感染する人が急増している。ヒルデスハイムという人口10万人程度の小さな町の小学校で、26人の生徒がはしかにかかってしまった。この緊急事態に直 …

家賃の上昇を止めろ!- ベルリン 転入禁止令 & 家賃値上げ禁止令

家賃の上昇を止めろ!- ベルリン 転入禁止令 & 家賃値上げ禁止令

俗に言う、古い建造物 /”Altbau”は超高級物件に! 何度もここで紹介してきたので皆さん、ご存じの事と思いますが、ドイツでは未だに空前の不動産ブームです。その最先端を行くの …

ワイヤーカード 粉飾決算・暴露・否定そして倒産

ドイツのトップ企業30社で構成される DAX のメンバー ワイヤーカード が、会社更生法の適用を申請した。ドイツの経済史上、初めての事だ。 あのリーマンショックの時、スキャンダル不動産会社の Hypo …