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中国のエアバス Comac 航空機事業に参入!

投稿日:2018年11月10日 更新日:


三つ巴の戦い?

Comac 航空機事業に参入

度々ここで紹介してきたが、中国政府は独自の航空機業界を育てあげるべく “Commercial Aircraft Corporation of China”、中国商用飞机有限责任公司、略称、Comac を創設した。同社が最初に開発したのはC919。モデルによるが150~160の乗客を収容できる。中国製の航空機と言えば聞こえがいいが、コックピットは米国製、車輪と客室の空気システムはドイツ製、エンジンはフランス製、残る部分が中国製だ。

本来の計画通りに運べばすでに運行許可が下りて、2018年には飛行機をオーダーした航空会社で活躍する筈だった。現実は大きく異なり、2017年にやっと処女飛行を終えたばかり。日本の三菱ジェットと同様に問題が山積しており、客に飛行機を届けることができる期日さえも決まっていない。

参照元 : WELT

それでもComacの首脳陣は、「将来は航空機エンジンも自社生産。」と自信満々。航空市場業界はエアバス、ボーイング、そしてコマックの三つ巴の争いになると豪語している。そしてComacはその野望を叶える為に、欧州で必要な先端技術を持っている企業の買収に乗り出している。

FACC買収

オーストリアにエアバスやボーイングに航空部品を納入しているFACCという会社がある。重量の軽い樹脂で部品を製造していたが、新しい航空機モデルに合わせて、製造ラインをあたらめる必要が生じた。必要な投資額400億ユーロ。中小企業にとって、そう簡単に準備できる投資額ではない。

現地で情報収集をしていた中国の産業スパイ、もとい、投資家がこのニュースを聞き知ると、直ちに本国に連絡。中央政府から “Go” のサインをもらうと、中国の航空部品会社と中国政府の投資機関が一緒になって、この会社の株式の91%を買収してしまった。

参照元 : Austrian Wings

これまで中国で活躍しているオーストリアの会社が買収されることはあっても、オーストリア国内にある企業の買収は始めてだった。買収の噂さえもなかったので、この買収が発表されると、オーストリアの経済界には大きな驚きだった。

Cortesa 買収

中国の国家ファンドが次の買収目的に挙げたのが、炭素繊維で航空部品を製造してるドイツの会社、”Cortesa” だった。ただし、今度はそんなに簡単には行かなかった。というのもコルテザは民間機の他にもボーイング社の軍事ヘリコプター部品を製造、納入しているのだ。

軍事機密が中国に漏れる恐れがあるのでドイツ政府が「待った!」をかけたのも無理はない。ドイツ政府は4ヶ月間この買収の「粗探し」をしたが、ボーイング社から苦情が来なかったので、2018年4月になって買収を許可した。

参照元 : Spiegel Online

Premium Aerotec

エアバス社は欧州政府の共同事業。この事業に資本参加している国にて雇用を均等に創設するため、生産拠点はあちこちに散らばっている。ドイツにはハンブルクに組み立て工場があり、ドイツ国内の工場では主に胴体部分の製造が行なわれている。かってはアルミニウムで製造していた航空機の胴体だが、最近では重量を軽くして燃料を節約するため、炭素繊維で製造する。

この目的でエアバスはPermium Aertecという100%の小会社を創設した。会社の本拠はアウグスブルク。アウグスブルクの他にも、3つの工場をドイツ国内に建設、世界で最大の炭素繊維製造ラインを備えている。お陰でエアバスからの注文だけでなく、商売敵のボーイングからも部品の製造を受注、炭素繊維の航空部品製造では世界市場の50%を支配している隠れた大企業だ。

参照元 : Handelsblatt

内部生産、それとも外部注文?

世界に先駆けて炭素繊維の胴体の民間航空機を完成させたのはボーイングだったが、同社は自社で製造しないで、日本の企業などに胴体の製造を依頼した。というのも自社で製造すると、ものすごい開発費がかかる。これは会社の決算を悪化させるので、株式会社(の決算報告)にはよろしくない。そこで外部に受注するという形にした。

ところが日本から届いた胴体部分とコックピットを接合させようとすると、この部分に拳が入るほどの「隙間」があった。細部は不明だが、注文を出す側、あるいは部品を製造する側で数値を誤解していた。同じ会社内であれば、「これcmじゃなくて、インチじゃないか?」と会話で修整できたかもしれないが、外部との会社のコミュニケーションはゼロ。部品が届けられるまで、誰もこの間違いに気づかなかった。

お陰でドリームライナーの製造は数年、遅れることになった。エアバスはこのボーイングの誤りを観察しており、自社で炭素繊維の航空機A350を製造する際には、100%の小会社を設立した。お陰で「部品が合わない。」と言う喜劇は避けれたが、その一方でコストの面で問題が生じた。

ベストセラー

間違いのないように断っておくと、エアバスの炭素繊維航空機A350は、ベストセラーになった。ライバルのボーイングのドリームライナーは、A350よりも一回り小さく、座席数と航続距離でエアバスには適わない。これが功を奏して後続のA350は、販売台数でボーイング社を追い抜いた。大型の胴体製造ラインに大金を投資した甲斐があった。

参照元 : Handelsblatt

お陰でA350は売上高20億ユーロの巨額の売り上げ額を出しているが、事業事態は赤字だ。そう、新しい製造ラインの開発費が高くて、今だに採算が取れていない。親会社のエアバスが小会社からの買値を叩き、安く部品を買うことが原因のひとつ。100%の小会社が赤字になると、親会社の決算を悪化させる結果になる。買値を上げてやれば小会社も黒字になるのだが、すると親会社の採算が悪化する。

小会社売却

そこでエアバスは世界最先端技術を持つプレミアム アエロテック社を売りに出すことにした。独立した会社になれば、エアバス社の決算に悪影響を及ぼさないと、ボーイング同様に考えた。この売却案に、「待ってました!」と飛びついたのが、中国の国家ファンドだ。プレミアム アエロテック社を買収すれば、中国の独自の航空機事業を大きく前進させることが可能になる。しかしこの売却には問題が多い。

プレミアム アエロテック社は迎撃戦闘機ユーロファイターから、軍需輸送金A400Mの部品を製造している。さらには独仏政府はユーロファイターの後続機、ステルスファイターを共同で製造することで同意に達したが、この部品を製造するのがプレミアム アエロテック社なのだ。

参照元 : Stern

中国がプレミアム アエロテック社を買収すると、軍事機密が中国に漏れる心配があり、ドイツ政府が売却に「待った!」をかけることは間違いない。にもかかわらず中国の国家ファンドは、「中国が同社を買収すれば、Comacから大量の受注が来るのでドイツ国内の4工場で雇用を維持できるばかりか、あたらに創設できる。」と自信満々だ。

参照元 : Wirtschaftswoche

売却棚上げ

ここでエアバスはプレミアム アエロテック社の売却を棚上げすると発表した。理由はエアバスももうひとつのベストセラー、A320Neo。航空機エンジンを生産する会社がエンジンの設計、製造で大きなトラブルを抱えており、エンジンの納入が大幅に遅れている。

ハンブルクの組立工場だけでも、エンジンがないので納入できない飛行機が70機も並んでいる。プレミアム アエロテック社の売却によりさらにトラブルが発生、飛行機の納入が遅れることを心配したあまり、売却計画を棚上げすることにした。

これに加えてエアバス社ではドイツ人の社長が来年、定年退職する。エアバス社の将来戦略を決めることにもなりかねない重大な決定は、後任者にゆだねることにしたかったのも、その理由のひとつだ。これに加えてエアバスのヒレ肉である「プレミアム アエロテック社を買いたい!」という買収希望者は多い。

エアバスは時間とお金をかけて買収先との談合後、ドイツ政府の「待った!」をかけて買収が降り戻しにならないように、事前に問題点をはっきりさせておきたい。その調整に時間がかかるのも、売却棚上げの要因になった。果たして中国はそのふんだんな財源を武器に、世界性先端技術を持つドイツ企業を買収することになるのだろうか。

 

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執筆者:

nishi

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