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取らぬ狸の皮算用 (05.12.2017)

投稿日:2018年2月26日 更新日:

カナダを代表する重工業会社のBombardierは電車だけでなく航空機も生産しているが、ボーイングとエアバスに押されて業績が悪化を続ける一方だ。航空業界でベストセラーになったエアバスのA320が150~180席までの収容能力なので、この分野で戦いを挑むのは自殺行為。同社はライバル社が力を入れていない100席程度の小型旅客機の開発製造に、航空機部門の将来を賭けた。長年のテスト、多額の研究開発費をかけてやっと完成した飛行機は、客のニーズに合わせて胴体部分を長く(短く)することにより、100席~150席の収容能力を持っている。

Bombardier社は米国のデルタ航空からこの新型機CS100型(100座席を搭載する)を75機、オプションとしてさらに50機までの注文を手中した。この注文が示すとおりこのモダンな航空機への需要は存在しており、競合他社の少ないこの分野で市場を席捲できると喜んでいた。ところがここで米国で新しい大統領が就任した。新大統領は国民への人気取り政策の一環として、カナダ産の航空機に対して300%もの懲罰関税を課した。お陰でデルタ航空は注文をキャンセル、Bombardier社の航空機部門の運命は尽きたかに見えた。

ところがここで本来はライバルであるエアバス社が、救いの手を差し出した。エアバスはCS機を開発、製造している会社の株価の50.1%を取得したと発表した。エアバスが同社の所有する米国の工場でBombardier社の最新モデルCS機を組み立てることにより、米国政府の課した懲罰関税を逃れることができる。エアバス社は過半数を所有した会社の債務さえも払う義務がなく、販売した飛行機から上がる利益の半分が懐に入ってくる。さらにはすでに存在している工場での製造なので、工場の生産能力を100%稼働できて効率が上がり製造コストが下がる。しかしながらエアバスにとっての最大の利点は、数年の年月と多額の研究費を節約して、すでに完成して組み立てるだけの飛行機をカタログに載せることできる点にある。これが理由で、本来は商売敵であるBombardier社と同盟を組むことにした。又、Bombardier社にとっても世界最大の航空市場で同社の飛行機を販売できることになり、首の皮が一枚繋がった。

という話を聞くいて心配になるのが日本政府が主導、三菱重工業が(未だに)開発中の小型旅客機MRJだ。航空機開発で世界最先端の技術を誇るエアバスでさえ、新型機を開発すると納入時期が3~4年遅れる。しかるに数十年ぶりに航空機を開発する三菱重工は、事業計画開始からわずか5年で設計図段階の航空機を納入できると豪語した。「国産ジェット」という日本国内でのお祭りムードとは異なり、この計画に大きな疑問を持った。案の定、納期の延期に延期が続いた。現時点では5度目の納入延期を告知済みで、これが守られるとしても当初の計画よりも7年も遅れることになる。エアバスやボーイングの失敗例を見て、何故、教訓を得なかったのか。「三菱は他社とは違う。」という過剰自身もあったのではないだろうか。

仮に今の納入計画が現実化して、2020年に納入が始まったとしよう。MRJの収容能力は90座席数とBombardier社のCS-100(100座席)とほぼ同じ。エアバスは世界中の航空会社と太いパイプがある。この強大なライバルを相手に、MRJは売れるのだろうか。MRJ一番のセールスポイントは値段。CS-100のカタログ上の値段は7200万ドル。一方、三菱は日本政府がふんだんな税金で開発を支援しているので4500万ドル。掘り出し物に近い値段だ。座席の違いはわずか10席なので、性能がとりわけ悪くなければMRJは、航空市場でますます占有率を広げている格安航空会社に大受けするかもしれない。

ところがまさにこの唯一の大きな利点が、米国大統領の懲罰関税導入で消散した。三菱は米国内の航空会社から「まとまった規模での受注を確保している。」と言い安心感を広めていることに苦心しているが、どうやってこの懲罰関税を迂回するのか。さらにMRJ納の入が7年も遅れた事実、販売価格が懲罰関税により高騰することを理由に、米国の航空会社は注文をキャンセルできる。それも違約金を払わないで。納入が7年も遅れなければ、米国で新大統領が誕生する前に航空機を納入できただろうに、お陰で「とらぬ狸の皮算用」になる可能性が高い。米国という世界最大の航空機市場で飛行機が売れないで、MRJに将来はあるのだろうか。膨大な税金を投入している以上、国を挙げた国産ジェット開発事業が成功することを祈りたいが、前途は険しい。

三菱MRJのライバルCS100

 

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