閉鎖口座 / Sperrkonto って言葉を聞いたことがない方が大半だと思います。
ドイツ人の大学生に、
「閉鎖口座って知ってる?」
と聞いても、誰一人知りませんでした。
私が口座を持っている銀行で、
「”Sperrkonto”って、ここでも開けるの?」
と聞けば、
「何だそれは?教えてくれ?」
という有様。
ドイツ人、それも銀行員でさえ知らないのですから、日本人で知っている人は稀。
そこでここではドイツの達人が一肌脱いて、ドイツ留学を控えて多くの方が悩んでいる疑問、
「閉鎖口座って一体、何?」
を、徹底解説しようと思います。
目次
留学(生活)資金の証明 – でも、どうして?
ドイツで滞在ビザを申請するには、留学(生活)資金の証明が必要です。
十分な生活費がないとドイツで違法就労をすることを余儀なくされます(*1)。
するとドイツ人の仕事を奪うことになります。
そこで外国人が滞在ビザを申請するには、
が必要とされます。
ではどうすればいいのでしょう。
外人局で、
「働きません。」
と言うだけでは不十分です。
口約束を信じる役人は居ません。
その書面での証明が、経費負担宣誓書 & 閉鎖口座なのです。
経費負担宣誓書 / Verpflichtungserklärung
”Verpflichtungserklärung”を日本語に訳すと、経費負担宣誓書です。
「渡航者がドイツ滞在中に必要になる資金を私が保証する。」
という宣誓書です。
この書類を取得するには保護者が過去のお給料明細を持って、ドイツ領事館まで出向いてもらう必要がありました。
ところが日本のドイツ領事館は、この宣誓書の受理を2017年で終了しました。
2018年からは申請を受理していません。
ドイツに保護者、あるいは留学資金を出してくる人がいるなら、この人に外人局に出頭してもらえば現在でも”Verpflichtungserklärung”が取れます。
この経費負担宣誓書を取得できない場合は、どうすればいいのか?
その答えが閉鎖口座です。
【完全解明】 閉鎖口座 / Sperrkonto の開設方法から費用まで
その名前、
“Sperr”(閉鎖する)
“Konto”(口座)
が語る通り、
それはお友達、知り合いからお金を工面してこの銀行口座に払い込み、口座残高の証明書を取得。
その後、ビザを取ってからすぐに銀行口座を解約して借りたお金を返せば、不正に滞在ビザを取得できちゃいます。(*2)
そんなことができないように、閉鎖口座は口座の持ち主でもお金を引きおろせない機能が付いています。
このような機能があるので、閉鎖口座を取得した書類を提示すると、留学(生活)資金の証明として認めてくれます。
どこで 閉鎖口座 が作れるの?
閉鎖口座は複数の金融機関で開けます。
お勧めは銀行大手の、シュパールカッセ/ “Sparkasse”、
ドイツ第二の私銀行のコメルツ銀行 /”Commerzbank”、
そして最大手のドイツ銀行 /”Deutsche Bank”です。
この”BAM”は、ドイツの外務省のホームページで、
「お勧め」
として掲載されていた銀行で、外国人に閉鎖口座を提供していました。
「外務省のホームページに載っているんだから安心。」
と、ここにお金を預けていた学生は、自分の預金にアクセスできなくなりました。
悪いことは言いません。
外務省のホームページよりも当社のホームページを信用したほうが安全です(*4)。
開設費用
閉鎖口座は、ただではありません。
開設費用がかかります。
一番高いのはドイツ銀行の閉鎖口座で、150ユーロ(2022年)です。
他の銀行はもっと手数料が安い(筈)ですが、費用を公開していないので正確な費用がわかりません。
会員専用ページ
現地で閉鎖口座を開設する方法、必要書類などは、会員ページで詳しく解説しています!
日本に居ながら閉鎖口座を開設
当社に多く寄せられるお問い合わせが、
です。
それができるんです。
必要な書類は以下の通り。
- 口座の開設申請用紙
- 大学、語学学校からの入学許可証
- パスポートのコピー
閉鎖口座の申請用紙は、銀行(支店)のホームページからダウンロードできます。
見つからない場合は、銀行にメールで送ってもらうようにお願いしてください。
通常、英語の申請書も容易されていますので、ドイツ語版か英語版、どちらを欲しいのかメールに明記しておいてください。
デュッセルドルフに滞在されるなら、デュッセルドルフの支店に閉鎖口座を開設します。
どうすればデユッセルドルフの支店の連絡先がわかるの?
簡単です。検索サイトで、”Sparkasse”、”Düsseldorf”と2単語を入れるだけ。すると市内にある支店が幾つも表示されます。
どの支店にすればいいの?
デュッセルドルフなら、中央駅前の支店が交通の便がいいので便利です。
書類が揃うと(記入してから)ドイツ領事館(あるいは名誉領事事務所)に出頭、この書類を”Beglaubigung”(認証コピー)してもらいます。
パスポートを持参するのをお忘れなく。
認証コピー費用は3000円程度。
その後、認証コピーされた書類を、閉鎖口座を開設する銀行に郵送してください。
クリスマスやオスターン(イースター)の祝日期間でなければ、1週間ほどで書類はドイツの銀行に届きます。
銀行が書類を処理するのにさらに2週間。
「ちゃんと書類が届いたのかしらん。」
と心配を始めた頃に、メールで閉鎖口座が開設された旨、連絡が届きます。
あとは手数料と一緒に、ビザの発行に必要な資金を自分の閉鎖口座に送金します。
滞在ビザが取得可能な残高
閉鎖口座に関して、毎回、ほぼ必ずお問い合わせいただくのが、以下の質問です。
幾ら送金すればいいんですか。
2020年から新規則が導入されました。
すなわち!
1か月あたり861ユーロです。
12ヶ月なら、861 ユーロ x 12 ヶ月 = 10332ユーロです。
最初から全額、入金しないと駄目ですか?
駄目です。
閉鎖口座は留学資金がある事を証明するために開設します。
12ヶ月滞在されるなら、12か月分、振り込んでください。
その後、ビザの申請に必要な口座残高証明書が送られてきます。
このように日本から開設すると、とっても面倒です。
閉鎖口座 を解約する!
折角、閉鎖口座を開設したものの、何かの都合で早めに帰国することになった場合、口座を解約 /”kündigen”しなくてはなりません。
普通のお給与口座 /”Girokonto”なら、
「解約したい。」
と窓口で言うだけで、解約できます。
ところが閉鎖口座はそんなに簡単に行かないんです!
外人局から解約の許可をもらう
滞在ビザを取るために一時的にお金を工面して閉鎖口座を開き、
「ビザが取れたら、解約してお金を返せばいい!」
と考える人が少なくありません。
そのような悪用を阻止するために、
正確な手順は閉鎖口座を開いた銀行によって異なりますが、通常は銀行から閉鎖口座解約の書類をもらいます。
これに所定事項を(自分で)記入して外人局に行き、
「帰国することになったので、閉鎖口座を解約します。ついては、、。」
と言えば、皆まで言わなくても相手には事情が伝わります。
伝わらない場合は、閉鎖口座の解約書類とパスポートを提示してください。
本当に帰国するなら、有効な滞在ビザは必要ありません。
そこで帰国する日まで有効な滞在ビザに書き変えて、不正に滞在できないようにしてから、閉鎖口座の解約書類にサインをしてもらえます。
サインの入った閉鎖口座の解約書類を銀行に持っていけば、口座を解約できます。
解約できれば残金はその場で払い戻しされます。
残高が2000ユーロを超える場合
ただし!
閉鎖口座の残高が2000ユーロを超える場合は、2~3か月の通告期間が必要です。
このため急に帰国になった場合は、まずは閉鎖口座解約の手続きだけしておきましょう。
その後、(信用できる)友人に口座を解約してもらい、日本まで送金してもらうことになります。
そこまで信用できる人が居ない場合は、次回、渡独するまで閉鎖口座に貯金しておくことになります。
オンライン 閉鎖口座 Expatrio
それがあるんです。
ドイツ銀行の子会社である Expatrio が、オンラインで閉鎖口座の申請を受けています。
必要な書類は以下の通り。
- 証明写真(デジタルコピー)
- パスポート(デジタルコピー)
英語での記入になりますが、メールで閉鎖口座の申請書送付を依頼するよりは、簡単です。
ただし!
以下の滞在目的で閉鎖口座を取得する場合、
- 語学学校に入学する “Language Student”
- ワーホリ、”Work & Travel”
- 観光 “Tourist”
- 就職 ”Empoyee
「15分の面接」
をオンラインで受ける必要があります。
面接は英語、あるいはドイツ語になります。
学生”Student”の身分で留学される場合は、この面倒な手続きはなく、お申し込みフォームに記入するだけです。
記入が終わると、
「こちらの口座に送金してください。」
とメッセージが届きますので、日本の銀行、あるいは郵便局から送金してください。
入金が確認されると、閉鎖口座残高証明が送られてきます。
これをその他の書類と一緒に提出すれば、ビザが取れます。
口座開設費用
開設費用は49ユーロ。
それに毎月、5ユーロの口座維持費がかかります。
お申し込み
こちらからオンラインでお申し込みできます。
こちらのサービスは無償サービスのため、お問い合わせはサポートサービスにお申し込みいただいた方だけに限らせていただきます。
オンライン銀行の欠点
Expatrioはオンライン銀行です。
支店もATMもないので、現金を下ろすことはできません。
ドイツでお金を引き下ろすには、
- 支店のある銀行に口座を開設
- 閉鎖口座からこちらの口座に送金
する必要があります。
中には毎月、861ユーロをあなたの指定する銀行口座に振り込む形の閉鎖口座もあります。
閉鎖口座 開設お勧め方法
早い話、オンラインでの閉鎖口座は面倒なので、お勧めはしません。
「面倒なことはドイツに行く前、日本で済ませてしまいたい。」
という気持ちはわかりますが、それにかかる作業量を見ると割に合いません。
ましてやオンラインで閉鎖口座に開設に成功しても、どのみちドイツで新たに支店のある銀行に口座を開設する必要があります。
その場で閉鎖口座が開設できて、ドイツ語の書類を読むのは一回で済みます。
Girokonto 開設
その後、この閉鎖口座から生活資金をおろして生活するわけですが、閉鎖口座からは毎月最高で861ユーロまでしか引き出せません。
それでは足りない場合も多いと思います。
その場合は、日本の普通口座にあたる
“Girokonto”
を支店のある銀行に開設して、ここに生活費を送金してもらえばいいです。
駄目です。
さらには滞在ビザがないと、銀行口座を開設できません。
そこでまずは閉鎖口座を開設してビザを取得、それから Girokonto の取得という順番になります。
オンライン銀行 – 利点と欠点
ドイツには支店を持たないオンライン銀行が、幾つかあります。
これまでは、ドイツに支店のない外国の銀行が多かったのです。
「外国の銀行に負けてはおれん!」
と、ドイツの大手銀行が子会社のオンライン銀行を創設、外国からの商売敵に対抗しています。
ネット銀行の利点は2点。
- ドイツに住所があれば、基本、誰でも口座を解説できる。(*6)
- 口座維持費用が無料!
欠点は、
- ATMがない銀行も多く、現金が下せない!
- 隠れた手数料が(結構)高いっ!
もっとも!
最近はING Dibaのように、ATMを置いているオンライン銀行も登場しています。
最近は支店のある銀行に口座を開くと、手数料取られます。
でもオンライン銀行を利用すれば、口座維持手数料は(通常は)無料です!
有名なオンライン銀行
以下にドイツで有名なオンライン銀行を幾つか挙げておきます。
時々、キャンペーンをやっており、
「口座を開設すると100ユーロプレゼント!」
などと書いていますが、何処かに100ユーロを支払う条件が書かれいます。
実際にはこの条件を満たさず、お金がもらえないケースが多いので、キャンペーンに釣られないほうがよろしいかと思います。
Fyrst
ドイツ銀行がN26などのオンライン銀行に対抗するために、2019年に始めたオンラインバンクです。
“Basic”を選べば口座維持手数料は無料。
「自営業者向けの口座」
がウリですが、そうでない方でも開設できます。
ここに口座を開ければ、ドイツ銀行のATMから無料で現金が下せるのが嬉しい。
ING Diba
オランダ系のオンライン銀行。
口座維持費無料。
さらに口座を開設すると75ユーロもらえるそうです。
本当にもらえるかどうか、試していないのでわかりません。
もらえなくても責任は負いかねます。
バイエルン州では、ATMをちょくちょく見かけました。
Comdirekt
Commerzbank の孫銀行。
口座維持費無料。
そもそも株の取引きを専門にしているので、株をお安く売買したい人には便利。
さらに口座を開設すると100ユーロもらえるそうだ。
本当にもらえるかどうか、試していないのでわかりません。
もらえなくても責任は負いかねます。
N26
N26 はベルリンに本社を置くネット銀行です。
俗に言う金融関係のスタートアップで、金融関連ではドイツで一番成功しているスタートアップです。
口座維持費無料。
携帯電話での支払いもできるので、そのような機能を持ちたい方には便利かもしれない。
口座取得が簡単なので、犯罪組織がマネーロンダリーに常用するほど(*7)。
Netbank
そのまんまの名前のネットバンク。
ハンブルクに本社を置く。
口座維持費無料。
さらに口座を開設すると75ユーロもらえるそうです。
本当にもらえるかどうか、試していないのでわかりません。
もらえなくても責任は負いかねます。
DKB
ベルリンに本社を置くネット銀行。
親銀行はバイエルン州立銀行。
口座費無料です。
ATMはないですが、ドイツの大手スーパー、REWE それにドラッグストアーの DM のレジでお金を手数料無料で下ろすことができます。
払い込みには手数料がかかります。
ドイツで数少ない携帯での支払い”Apple pay” “Google pay” に対応。
注釈
*1 ドイツの役人はそう考えます。
*2 ドイツの役人はそう考えます。
*3 正式名称は”Bundesweites Anlagenmanagement”。今後、銀行は処理されます。
*4 外務省は、「ホームページに載せていても、安全かどうかチェックしたわけでない。」と、都合のいい言い訳をしていました。
*5 稀に閉鎖口座でなくても、ドイツの銀行口座であればビザの申請を受けてくれる自治体もあります。アウグスブルクやレーゲンスブルクの外人局は法律に疎いので、オンライン口座でも滞在ビザが取れました。
*6 口座を開く人が本人かどうか、確認する作業を要求する銀行もあります。
*7 金融機関の監督機関”Bafin”から何度も行政指導を受けています。