ドイツに入国する際の心配事のひとつが、 ドイツの関税 に関するものです。
「関税で止められたらどうしょう?」
と、渡航が近づいてから、ご相談をいただくことが多いです。
以前、日本人の音楽家が入国審査で捕まって、テレビで報道されたことがありました。残念なことに、その報道はドイツの法律を考慮しない感情的な報道であったため、
「ドイツの関税はわけがわからない。」
と、誤解される結果となりました。
しかし関税局はそのホームページで、何が持ち込みOKで、何が駄目なのか、情報をしっかり公開しています。
それでもわからなければ、メールで問い合わせることもできます。
誤解の原因は関税局のホームページを読みもしないで、
「多分、大丈夫じゃない?」
と推測で行動したのが原因です。
ここでは推測ではなく、ドイツの関税法に書かれている内容に沿って、何がOK で何が駄目なのか、ドイツの関税についてご紹介します。
目次
ノートパソコンは申告する必要があるの?
当社に寄せられるお問い合わせのトップ5の人気ひとつが、
「ドイツに入国する際に、ノートパソコンを申告する必要がありますか。」
というものです。その答えは、Ja と Nein です。
簡単な答えが出ない理由は、規則がドイツ(あるいはEU内)に居住している人と、そうでない人に分かれているからです。この区別をしないで、
「ドイツに入国する人は、」
とやってしまうと、間違いは避けられません。
確実を期すにはドイツ関税局のホームページを読みましょう。
参照 : Zoll
ここに英語とドイツ語でびっしり書かれています。その手間を惜しんで人に聞いたり、日本語で検索すると、誤った情報をいただきます。
誤った情報を信用して渡独、通関で摘発されてから、
「ネットに大丈夫と書かれていた!」
「誰も教えてくれなかった。」
と責任転嫁を試みても、効果なし。「知らなかった。」という理由は処罰から解放される理由にはならないからです。
そんな目に遭わないように、以下に旅行者と居住者に分けて、ノートパソコン & その他多数が持ち込めるのか、否か、ドイツの関税について解説いたします。
ドイツの関税 – 旅行者の通関
旅行者の場合、個人で使用する携帯電話、ノートパソコン、タブレット等、関税申告する必要はありません。
旅行者が個人で使用するものには、ドイツの関税はかからないからです。
常備薬は旅行中に使用する量に限り、持込が可能です。鞄を一杯にして薬を持参、
「旅行中の常備薬です。」
と言う理屈は通りません。良識で判断してください。
ドイツに住むお友達に頼まれて新品を持ち込む場合は、ご注意ください。新品を持ち込むと旅行者でも輸入扱いになりドイツの関税がかかります。
もっとも新品でも430ユーロ未満であれば、申告なくして持ち込めます。
仮に450ユーロの品を持ち込んだ場合、関税がかかるのはオーバーした20ユーロ分ではなく、総額の450ユーロ分です。
旅行者でも申告が必要なもの
旅行者でもドイツの関税で申告する必要があるのは、メッセなどに見本として提示するため、あるいはドイツ国内で販売する目的で品物を持ち込む場合です。
5台もの携帯電話やタブレットを持ち込んで、
「これは個人で使用するものです。」
と真顔で主張する人が居ますが、そういう子供だましの理屈は通じません。5台も携帯やパソコンが、旅行に必要な人はいないからです。
見本として持ち込む場合は、販売不可能な措置をしておく必要があります。これをしておらず、販売可能な品を鞄に入れたまま緑/青の出口に向かうと、密輸入になります。
鞄をチェックされてこれが発覚すると、関税と同額の罰金が課されます。
タバコ
ドイツの空港では旅行者の鞄をレントゲン撮影して、鞄にタバコや貴重品が隠されていないかチェックしています。
貴重品やたばこを見つけると、関税局の職員が旅人のふりをして旅行者を観察、緑の通関から出ようとすると、
「ちょっと待った!」
と、後ろから声がかかります。
タバコは一人1カートンまでは許されています。免税店で、
「2カートンまで大丈夫ですよ。」
と言われる場合もありますが、間違いです。
「免税店で大丈夫だと言われた。」
という言い訳は通じません。
空港内の各所に大きな看板があり、
「タバコは一人1カートンまで。」
とドイツの関税の内容が明記されているからです。
「英語は読めない。」
と言い訳は通じません。
「子供が二人いるから、3カートンまで大丈夫。」
という勘定も不可です。成人一人につき1カートンです。
アルコール
アルコールを含んだ飲み物は2リットルまで無関税です。
ヴォトカのようなアルコール度の高いお酒は、1リットルまで。
逆にビールなどのアルコール度が低い飲み物は、なんと16リットルまで無関税。
わざわざ日本から1ダースものビールを持ち込む人は居ないと思いますが、念のため。
現金の持ち込み
ドイツの関税で処罰が一番厳しいのが、現金の持ち込み、持ち出しです。
現金、あるいは有価証券を含めて1万ユーロ未満であれば、申請なしでドイツに持ち込めます。
ドイツへの留学資金を現金で1万ユーロ(相当)持参される方は少ないと思いますが、1万ユーロを超える場合は、申告が必要です。
そこで赤色の出口に向かいドイツの関税で真面目に申告すると、
「何をして儲けた金だ。」
「どこから引き落とした。」
「引き下ろした証明を出せ。」
と質問攻めです。
どこから手に入れたお金なのか証明できない場合は、大きな問題になります。言葉ができない内はトラブルを回避するため、最初から高額な現金は持参されないほうがいいです。
「持ち込むのは面倒だから、送金しよう。」
という場合もご注意ください。
1万ユーロを超える額が入金されると、税務署からお手紙が届きます。そこには、
「何をして儲けた金だ。」
「金の出所を証明せよ。」
と書かれています。送金額は1万ユーロ相当未満にしておくのが得策です。
脱税、マネーロンダリングの取り締まりで、空港の出発ゲート内でも関税局の職員が抜き討ち検査をしています。関税局のターゲットは中国人とベトナム人。
ドイツで稼いだお金を現金で本国に密輸出する人が多いので、ベトナム航空でベトナムに旅行すると検査に遇うこともあります。
現金の持ち出しも、1万ユーロを超えると申告が必要です。
高級楽器の持ち込み
日本でも大きな注目を浴びた高級楽器の持ち込みについて、ドイツの関税では何が正しのかみておきましょう。
そもそも日本の音楽家が楽器を持ち込んで問題になったのは、欧州に住んでいたから。
日本(あるいは欧州外)に住んでいれば、旅行者の通関で問題はありませんでした。
もしあなたが音楽家で高級楽器を保持しており、欧州内への引っ越しを計画中なら、引っ越しの際の申請品目に、
「ストラディバリウスのバイオリン」
と書き、この書類を一生、保管しておきましょう。
もしドイツの関税に関税の支払いを要求されでも、この申請品目を提示すれば解決します。
実際、このケースでも音楽家が(専門家の助言を得て)
「引っ越しの際にバイオリンをもってきた。」
と主張、事を大きくしたくない財務大臣がこれを認め、一件落着になりました。
違反した際の刑罰 & 罰金
日本の関税は優しいので密輸したタバコが見つかった時点で、
「じゃ、タバコ要らない。」
と言えば、関税の支払いから解放されます(多分)。
ドイツの関税でも、
「じゃ、タバコ要らない。」
と言うことはできますが、関税の支払い義務からは逃れることができません。
さらには!関税と同額の罰金も課されます。その後でタバコを捨てる、捨てないはあなたの自由です。
現金を申告しないで持ち込み摘発された場合、(旅行者の場合)その場で25%の担保が課されます。
ドイツの関税 – EU 居住者の通関
ドイツ(EU)に住んでいる人が、EU 外の外国で購入した貴重品をドイツに持ち込む場合は、ドイツの関税がかかります。中古品でも。
例えば会社支給のパソコン。これが日本で支給されたものなら、ドイツの関税の対象になります。
例外はドイツ、あるいは欧州内で購入したパソコンです。欧州内で購入したものでも、これが証明できないと、
「関税を払え。」
と言われることもあります。
欧州内でカメラやパソコン、あるいは装飾品を購入、これを旅行や出張に持参、またドイツに入国する場合、購入時の請求書を持参することをお勧めします。
例外もあります。それはドイツに引越しする場合。すでに1年以上使用している中古品であれば、高価なバイオリンからスポーツカーまで、ドイツに関税無料で持ち込めます。
だからドイツの関税で止められて、会社支給のパソコンの関税支払いを要求されたら、
「これは”Umzugsgut”(引っ越し家財)です!」
と言えば、解放されます(多分)。
しかしドイツに20年も住んでいるのに、「これは引越し家財だ。」という言い訳は使えません。
誤解いだらけ!ネットに溢れる関税情報
ドイツの関税を正しく理解するのを阻害してるのは、ネットにあふれるフェイクニュースです。
某個人サイトには、
「商業的な性格を持たない場合、関税から免税される。」
と書かれています。これが正しければ、日本から両親がタブレットや携帯を送っても
「商業的な性格」
ではないからドイツの関税はかからない筈です。間違いです。しっかり関税がかかります。
ドイツの関税の例外 – 45ユーロまでの贈答品
こうしたドイツの関税に関する誤解の発祥元は、
「45ユーロまでの贈答品には関税がかからない。」
という関税例外条項です。
品を送ってらう際に、品物の欄にGeschenke(贈答品)と書いて、品物の値段を45EURと書けば関税の対称になりません。
「ではノートパソコンなどを日本から送ってもらい、”Geschenke”、品物の価値を45EURと書けばいいのでしょうか。」
というお問い合わせを何度かいただきました。駄目です。アウトです。パソコンが45ユーロで買えるわけないですから。
同じ理論で中古品でも、45ユーロを超えていれば、関税の対象になります。ドイツの関税がかからないのは、上述の通りの欧州への引越し時です。
日本から使ってた中古の品を送ってもらうのは、ドイツに到着後、1年以内に送ってもらってください。それ以降は中古品でも、課税の対称になります。
偽物 / Imitat の持ち込み
海外旅行に出かけて中国製の偽物 / Imitat を持ち帰るのは、ドイツの関税では個人で使用する量に限り許されています。
イタリアでは数千ユーロの罰金なので、何故か、ドイツの関税は「融通」が利きます。
融通が利かないのは、Ebay 等で偽物を購入、海外から送ってもらった場合です。
このケースでは個人で使用するものでも、ドイツの関税で受け渡しを拒否されて、焼却処分されます。
お金も戻ってこないので偽物 / Imitat をネットで購入するのはやめておきましょう。
持ち込み禁止品
ドイツの関税が持込を禁止している品は、日本に持込が禁止されている品とほど同じです。
すなわち麻薬から始まって、植物、そして特定の食品です。
一例を挙げると牛肉、豚肉、ニワトリなどの肉や卵、ハム、ソーセージ、ベーコン、ビーフジャーキーなど肉製品、卵製品です。
マヨネーズは卵を使っているので駄目。しかし魚は可。勿論、生ではなく料理、あるいは燻製にして真空パックしているもの。
日本では大目に見られる品でも、ドイツでは犯罪扱いになる品もあります。
例えば貝殻やサンゴ。モルジブの海岸で歩いて拾った珊瑚や貝殻が見つかると、書類を送検されることもあるので、貝殻は砂浜に残して帰国してください。
わに革と象牙
持ち込み厳禁は、鰐や蛇などの皮製品。
タイやベトナムの路上では平気に売られていますが、これが見つかると罰金を課されて、品は没収。没収で済まないのが象牙。
キーホルダーのような小さなものでも書類送検されます。日本では平気に売られているマムシ酒なども、厳禁です。
タイや中国で薬を買うと、パッケージに虎の絵が描かれています。虎は保護されている動物なので、そんな絵があるだけで関税職員の注意を引きます。
虎の皮なんぞ持ち帰ったら、ドイツの関税局からもう目もあてられない処罰が下ります。
ドイツ居住者が、外国に品物を注文する場合
ドイツに滞在されている方から、
「日本から持参したパソコンが壊れたので、送ってもらおうと思います。」
というご相談も多いです。勿論、日本から送ってもらうのは構いませんが、新品を送ってもらうとドイツの関税+消費税がかかります。
パソコンの関税は0%なので、消費税の19%だけ。1000ユーロ相当のパソコンなら、190ユーロを支払うことになります。
正確な関税を計算できるように、パソコンの請求書も一緒に送ってもらうようにしましょう。この請求書がない場合、ドイツの関税局がパソコンの額を推定することになります。
日本では家電製品が安いので、関税局員がドイツでの価格を推定すると、実際の額よりも高くなります。
例外は22ユーロまでの品を個人輸入する場合。このケースではドイツの関税はかかりません。でもこの額は送料込みの値段です。
日本から何かを送ってもらうと送料だけで22ユーロを超えてしまいますから、この規則はほとんどの場合で適用されません。
ドイツの関税 – 日本からの荷物が関税に止められる!
冒頭で述べたノートパソコンついで2番目に多いご相談が、
「日本からの荷物が関税に止められました。」
というものです。
稀にドイツの関税で止められないケースもありますが、日本から荷物を送ったら、関税で止められると考えておきましょう。
何故ですか。
外国からの荷物は基本、個人輸入扱いとなり、ドイツの関税の対象となるからです。
日本から送った荷物は関税で止められて、その荷物の宛名に書かれている住所に、
「このハガキをもって、荷物を引き取りにくるべし。」
と書かれたハガキが届きます。
ドイツの役人との闘い
皆さん、
「面倒、なんで自宅まで届けてくれないの?」
あるいは、
「だったらハガキと身分証明書をもってとりにいけばいい。」
と思われます。そんなに簡単だったら、ドイツの達人が苦労することはありません。
ドイツの関税局の役人は法律に沿って、ドイツの関税を取り立てるのが仕事です。自分で思考をすることはない、典型的な官僚ロボットです。
そんなロボットに、
「中に入っているのはすべて自分の中古品です。」
と言っても、信用してはもらえません。
「これで開けろ。」
と荷物を開封するように命じられます。その後、ロボットが荷物をチェック、
「(〇〇ユーロ相当なので)関税を〇〇ユーロ払いなさい。」
と言われます。
「これはすべて自分の品で、古着です。」
と言っても、無駄。ロボットに感情はありません。
払わなきゃ駄目?
ここで、「払わないと駄目ですか。」と相談をいただきます。
一度、官僚は決定を下すと、面子があるので、間違った決定でもこれが覆されることはありません。
ドイツの関税を払わないと荷物が渡されることはなく、日本に返送されてしまいます。
唯一の例外は上述の通り、日本から引っ越し1年以内の場合です。
関税局からのハガキをもって関税局に行き、
「これは引っ越し荷物です。」
と言えば、通常は関税を払わないで、荷物を引き渡してもらえます。
EU 日本 自由貿易協定
EUと日本の間で結ばれた自由貿易協定が2019年2月から発効、関税がゼロになった品、これからゼロになる品も出てきます。
「だったらドイツに送っても関税はかからない!」
と思いますよね。
その通りです。すでに関税がゼロになっているものであれば。でも”Umsatzsteuer”、わかりやすく言えばドイツの消費税が19%課税される事実には、変わりはありません。
送料を考えたら、結構、お高くなります。
最初の内は日本の品に愛着があると思いますが、ドイツで代用品を早く見つけることがドイツ生活に早く馴染むコツです。
密輸で摘発されたら?
このページを訪問される方の多くは、ドイツの関税で申告しなかった品を指摘されて罰金を課された方、あるいは日本から送ってもらった品がドイツの関税に止められた方です。
もし罰金で済むなら、腹は立ちますが、払えば書類送検もなく、一件落着です。面子に拘らず、払った方がいいです。
「いや、これは原則の問題だ!」
と納得いかない方、当社のサポートをご希望でしたら、生活サポートにお申し込みください。