ドイツの専門学校 に通いたいです。

そんなお問い合わせがこの10数年、後を断ちません。

誰かがネットでフェイクニュースを拡散しているのか、それとも皆さんが偶然に同じ勘違いをされているのか。

その原因は不明ですが、誰もこの点について正しい解説をしていないので、フェイクニュース、あるいは誤謬を発生させ続ける結果になっているようです。

そこでドイツの達人が一肌脱いて、ドイツの専門学校について正しい解説をしたいと思います。

ドイツの専門学校 – 日本人は通えないって本当?

今回は結論から書き始めます。

「日本人はドイツの専門学校に通えない。」
と言うのは本当です。

ここで記事を書くのを辞めてもいいのですが、

何故?

そんなの嘘!

と思われる方が大抵だと思います。

そこで何故、日本人がドイツの専門学校に通えないのか、その理由を解説したいと思います。

ドイツには専門学校はないっ!

日本人がドイツの専門学校に通えない最大の理由は、ドイツには専門学校がないからです。(*1) ないものには通えません。

日本では民間企業がさまざまな専門学校を開業しています。これが原因で、「ドイツも同じに違いない。」と想定、「ドイツの専門学校に通いたい!」という思考過程になっています。

しかし民間の学校はお金儲けが目的です。その仕事に向いている、向いていないに関係なく、お金を払ってくれる生徒を数多く募集します。そして公立の学校と違い、卒業してもその卒業証は社会で認定されているものではありません。

そもそも民間の学校の卒業証は国の認定を受けているものではないので、お金を払えば誰でももらえます。皆さんだってそんな卒業証で看護師になった人に、病院で世話をして欲しいと思いますか?

それともちゃんと国家試験に合格した看護師に面倒を見てもらいたいですか?

改めて聞くまでもないですね。

一方、ドイツはマイスター制度に代表されるように、熟練度を要求する国です。そのドイツには、卒業証に価値のない専門学校はありません。そんな卒業証では何処にも就職できないからです。ドイツにあるのは職業学校です。

ドイツの職業学校

大学に行かない人が就職の為に通う学校は、専門学校ではなく、職業学校 / Berufsschule と言います。厳密に言えば職業訓練学校の方が意味合いが正しいですが、「長い言葉は嫌われる。」ので、短く職業学校と表記します。

この学校は州政府の税金で運営されているので、大学に通わない人が通う最後の学校です。後に大学に行かなければ。

手工業者 / Handwerker、理髪師 / Friseur、看護師 / Krankenpfleger、旅行業従事者 / Reisebürokaufmann、それに日本では何の資格も要らないスーパーのレジの店員 / Kassierer まで、この学校に通って理論を学びます。

そしてこの学校の卒業試験に合格すると、正式な職業の認定証がもらえます。公立の学校が出す認定証なので、ドイツ全土で有効な資格です。これが就職には欠かせません。

ドイツの専門学校 - 日本人は通えないって本当?

卒業するまでにかかる期間

卒業するまでにかかる期間は職業にもよりますが、最短でも2年、最長では3年半も必要です。

この認定証を手中にして初めて、ドイツでは働くことができます。この認定証がないと、民間の専門学校の卒業証で100回応募しても、何処にも採用されません。

日本ではそんな認定証がなくても就職できちゃうので、

「ドイツも日本と同じ。」

「ドイツで専門学校に通いたい!」

と思われる方が大半です。しかしドイツでの就職事情は日本とは全く異なり、就職には相応の職業訓練 /”Ausbildung”が求められます。

見習い先 / Ausbidungsplatz

職業学校で学ぶのは理論です。経営のA,B.C, から経理の付け方まで。職業学校に3年通っても病人の面倒を見たり、髪を切る技術、電気技師などの技能は身に付くものではありません。そこで実務を習う場所 / Ausbildngsplatz が必要です。

ドイツでは大学に進学しない人は学校、Real Schule, Hauptschule などを卒業後、職業訓練を受ける場所(企業)を探します。旅行業に従事したい人は旅行代理店に、メルセデスでエンジニアとして働きたい人は、メルセデスに応募します。

面接試験に合格すると無事採用となり、2~3年半も続く実技の訓練期間が始まります。

このようにドイツでは理論と実務を同時に学ぶ、デユアル システム(同時進行プログラム)を導入しています。デユアル システムというとドイツの大学のデユアル シュトゥーデイウムを連想しますが、実はこちらがオリジナルです。

溶接中

職業訓練の仕組み

職業訓練が始まると、週12時間は学校で理論を学び、残りの時間で訓練先の企業で実務を学びます。

会社は教官 /Ausbilder を準備しており、職業訓練生の教育を行います。職場、それにこの教官次第で充実した訓練期間になるか、それとも自衛隊のような地獄の訓練機関になるか、大きく左右されます。

日本ほどではないですが、ドイツでも教官は厳しい人が多く、理不尽な事も度々要求されます。これに耐え、職業学校での筆記試験、それに実務試験に合格すると、やっと一人前の社会人です。*2

職業訓練のお給料

職業学校は公立の学校ですが、無料ではありません。一部、学生が払います。もっとも通常は職業訓練生 / Auszubildende として会社に採用されると、その企業が学校の費用を払ってくれるケースが大半です。

さらに少額ですが、研修中にはお給料も出ます。

なんぼもらえるの?

習う業種によってかなり異なります。建築現場などで壁を作る Maurer は意外と高くて、1057ユーロ。車の整備士は998ユーロ。銀行や保険業務での商人の見習いでは986ユーロです。

一方、訓練生のお給料が低いのは、一人前になっても給料の低い分野で、パン屋では600ユーロ、花屋では587ユーロ、理髪士は494ユーロ。

これらのお給料は西ドイツの場合で、東ドイツに行くと3~4割も低くなります。

こちらに訓練中のお給料がいい職業が特集してありますので、ご参考にしてください。

参照 : ausbildung.de

職業訓練後

企業はわざわざ多大な時間と金をかけて教育した訓練生が、他社に就職したのでは、注ぎ込んだ努力と金が無駄になります。そこで大方の場合は、実務を習った会社に就職できます。

これがドイツの職業学校、職業訓練の仕組みです。

これが理由で、

「ドイツの専門学校に入学したい。」

とお問い合わせをいただくと、

「どこから始めたらいいか。」

と、回答に悩んでいました。

当初は真面目に、

「ドイツには専門学校はありません。」

とお返事を書いていましたが、ドイツの事情をご存じない方には信じていただけません。それどころか真実を述べているのに、

「この会社、嘘を言ってる!」

と、こちらの真意が伝わらず、非難され、散々な結果でした。

かといって毎回、このページに書いている文章、ドイツの職業訓練を4000文字、原稿用紙20枚分のメールで説明するわけにはきません。

ですから「ドイツの専門学校に通いたい!」というお問い合わせをいただく度に、ブル~になっていました。

日本人の職業学校への入学 -ドイツの専門学校

すると決まって次にくる質問は、

「日本人は職業学校には入学できないんですか。」というもの。

そんな考えを抱かれた方、そもそもなんでドイツには職業学校があるのか、考えてみましょう。

ドイツの職業学校は、大学に進学しないドイツ人に必要な職業訓練 / Ausbildung を与えるための学校です。

それが何か?

では日本で考えてみましょう。例えば東京都が都立の職業訓練学校を税金で運営しているとしましょう。ここにタイ人、中国人、トルコ人、ベトナム人が入学して、日本人が払う税金で職業を学びます。

それで?

卒業後、同じように仕事を探している日本人をさしおいて、企業が外国人を採用したら、なんて思いますか?

税金を使って外国人が日本人から仕事を奪うような仕組みをおかしいと思いませんか。ですから日本人はドイツの職業学校には入学できません。

通勤する女性

日本人でも入学できる ドイツの専門学校 / 職業学校

とは言え、全く例外がないわけではありません。日本でも農業、漁業、コンビニなど、外国人労働者がいなければ、社会が回らない職種がドイツにもあります。そんな職業の専門学校、もとい、職業学校だったら、日本人でも入学できます。

典型的なものが、看護師です。コロナ危機の最中、「看護師の資格の認定を待っている申請があれば、即刻、認定せよ!」と厚生労働省が指図を出したほど、この分野での働き手が足りていません。

参照 : tagesschau.de

実際、アウグスブルクで看護師の資格を取るために職業学校に通っていたドイツ人曰く、「クラスにはベトナム人やフィリピン人もいた。」との事。

アウグスブルクと言えば、私がかって滞在ビザを申請した街の中で、もっとも厳しい(いい加減な)審査の街。そのアウグスブルクで大丈夫なんだから、他の街ではもっと簡単に行くでしょう。

入学に必要なドイツ語のレベル

職業学校、企業での実務、どちらでもドイツ語で習うことになります。仮に人材が枯渇している看護師でも、これは例外ではありません。患者の容体を間違って解釈したら、えらいことになりますから、ドイツ語は必修です。

職業学校に通うのに必要なドイツ語のレベルは、最低でもB2終了レベル。私はC1レベルを終了後、旅行業従事者のコースに短期間入学しましたが、授業についていくのは結構、大変でした。

備考

*1

ドイツに専門学校がひとつもない!と言えば、これは誤りです。例外の典型的なものが料理学校です。日本食が人気なので、「寿司コース」なんてコースもあります。しかしこうした専門学校は日本の学校と同類です。

そんな学校で寿司の握り方をならったからと言って、すし屋で働けないのは自明の理。

*2

今回の記事書くにあたって参考にしたサイトの一つが、こちらのサイトです。

参照 : ausbildungspark.com

いろんなサイトを見ましたが、一番わかりやすく解説されてます。もっと詳しい情報をご希望の方はサポートサービス(有償です。)をご利用いただくか、こちらのサイトをご覧ください。