ドイツ留学者の中には ドイツで起業 したいと、密かに夢を抱いている人が結構、多いです。
日本での順調(それとも退屈?)な仕事を捨てわざわざドイツにやってくるのだから、
「人生の夢」
をいだいている人が多いのも当然かもしれません。
問題なのは日本に住んでいるのに、
「ドイツで起業したい!」
と下調べもままならぬまま、勢いで渡独するケース。
申請を蹴られてから、
「助けてください。」
と言われても、時遅し。
そんな目に遭わないように、ドイツで起業したドイツの達人がアドバイスをしたいと思います。
目次
ドイツで起業 – 自営業ってできるの?
そもそも日本人はドイツで起業、自営業ってできるんでしょうか。
日本に住む
「ドイツに詳しい人」
は、
「2万5000ユーロで会社を設立できる(*1)。」
と言い張ります。
が、この主張は誤りです。
日本に住んでる日本人は使えません。
皆さんが遭う自称、
「ドイツに詳しい人」
は、ドイツ語もまともに喋れない自己顕示欲の強いおじさんです。
もしそんな主張をする人が居れば、
「法的根拠」
を提示してもらいましょう。
「そんなものは知らん!」
と言われるのがオチです。
日本人がドイツで起業するにあたって利用できる法的根拠は、、、
日独自由往来協定
皆さんが生まれる前に日本とドイツの間で、
” Japan Deutschland Freischiffsabkommen”(日独自由往来協定)
が結ばれました(*2)。
この協定によりドイツ人が日本で起業する、あるいは日本人がドイツで起業することが認められることになりました。
もっともそれには条件があります。
簡単に解説すると、
そうなんです。
起業して十分な収入を上げるだけでなく、その活動が日独の友好関係に寄与しなければ駄目というわけです。
どこまでこの規定を厳密に採用しているか不明ですが、私が自営業の申請をしたアウグスブルクでは、
「大真面目」
で主張してました。
ううう、困ったな~。
日本で自営業で成功しているケース
以前、
「日本で自営業者としてゲームの開発をしています。」
という方からドイツ移住のご相談を受けました(有償です)。
十分な収入があり、仕事は日本でもドイツでもできるので、
「ドイツに移住して、今の仕事を続けたい。」
とのこと。
このケースの
「問題点」
が何処にあるのかわかりますか?
もしこの案を外人局で提案すると、
「それはドイツに移住する理由にならない。」
と言われます。
そう、
「ドイツに住まないとできないビジネス」
じゃないとダメなんです。
日本でもできるなら、
「ドイツに来ないで、日本でやってください。」
となります。
ではどうすればいいのでしょう?
物は言い様
そこで少し言い方を変えて、
「日本でゲームの開発者として成功しているので、ドイツの会社に自分を売り込みたい。」
という
「移住理由」
にするんです。
これなら、
「ドイツじゃないとできないビジネス」
なので、移住条件を満たします。
一端、自営業ビザを取ってしまえば、
「本当にドイツの会社に売り込みをしているかどうか。」
は誰も聞きません。
大事なのは最初のビジネスプランの売り込み方。
ドイツ人が聞きたいことを移住の理由にするように、
「物の言い様」
をしっかり考えましょう。
会社を設立 – ドイツで起業
ちょっとここで寄り道して、ドイツで会社(現地法人)を設立する方法も紹介しておきます。
かってはEU外の外国人がドイツで会社を設立する場合、
- 最低25万ユーロの投資
- 最低5人の雇用を創設すべし
なんて条件があったんです。
名だたる会社だったら何の問題もないですが、個人の起業としては問題外。
が、
「厳しすぎる。」
との批判を受けて、2012年に多少緩和されました。
大雑把に言うと、設立時の費用は半額の12万5000ユーロに減額。
又、現地人の雇用は条件から外されました。
その他にも、
「もう嫌!」
というほど条件があります。
「詳しく知りたい!」
という方は、こちらの弁護士事務所のページをご覧あれ。
とてもわかりやすいです。
このようにドイツで会社を設立すると、自営業に比べて比較にならないほどの手間とお金がかかります。
ドイツ留学者で、このパターンを選ぶ方はまず居ません。
そこでこのページでは、ドイツで自営業の申請をする場合について、詳しくみていきます。
ドイツで起業 – どうやるの?
次にドイツで起業する場合の、
「手順」
について詳しく解説していきます。
でも、日本人がドイツで起業する方法は
- すでにドイツで就労している
- これからドイツに行く
により異なります。
前者の場合はすでに滞在 & 労働許可証を持っているので、外人局で許可を取るだけです(*3)。
面倒なのは後者のケース。
滞在ビザもないので、申請が却下されると、
「回れ右、日本に帰れ!」
となります。
そんな目に遭わないように、しっかり準備をしていきましょう。
日本からドイツに行って自営業の申請をされる際に欠かせない書類は、
- 事業計画書
- 健康保険
- 賃貸契約書
- 自営業申請書
- パスポート
の5点になります。
パスポートの説明は不要だと思いますので、残る4項目について解説します。
事業計画書
一番大事なのはこの事業計画書。
起業のプランを起承転結をつけて、素人にもわかるように解説する必要があります。
大学の卒業論文のように、ちゃんと資料と証拠をつけて
「何故、このプランが成功するのか。」
証明することが必要です。
ドイツ語がベターです。
地方自治体によっては英語でも可。
外人局はこの事業計画書を商工会議所(*4)に送り事業に将来性があるかどうか、その判断を仰ぐことになりなす。
この審査で
「成功の見込み無し」
と判断された場合、もうお手上げです。
それからご相談いただいても、
「弁護士を紹介します。」
くらいしかアドバイスできません。
審査で
「成功の見込み有」
と判断されたら、後は残りの書類を出すだけです。
健康保険
ドイツで起業する書類に欠かせないのが、健康保険です。
でも、
言うまでもなく、日本の海外旅行保険では自営業の許可が取れません。
そこでドイツ人が
「お金持ち保険」
と呼ぶ
“private Krankenversicherung”(個人保険)
に加入する必要があります。
しかし!
毎月400ユーロ+もの費用が必要になります。
例外がケア・エクスパトリエイト 。
加入できる年数が5年と制限されています。
が、こちらの保険なら、少なくとも最初の5年は保険費を安く済ませることができます。
ドクターヴァルターのプロヴィジットでも、自営業ビザの申請ができます。
でもこちらの保険の最長保険期間は、2年まで。
賃貸契約書
ドイツで起業するには、十分な居住空間が確保されていることも条件です。
「知り合いのアパートに雑魚寝」
では駄目です。
アパートを借りている方は、これも持参しましょう。
自営業申請書 / Gewerbeanmeldung
ドイツで起業する場合は、外人局で認可が下りてから
“Gewerbeamt”(自営業者登記所)
で登記します。
その書類、
自営業申請書 /”Gewerbeanmeldung” 。
は自営業者登記所に置いてあります。
ネットでも探せば、見つかります。
登記の費用は、自治体に拠り20~40ユーロ。
支払いを済ませたら、
「申請受取書」
をもらえます。
これを外人局で提示すれば自営業ビザの申請は終わり(*5)。
1か月後に
「あなたの滞在ビザができました!」
という手紙が届くので、取りにいくだけ。
要100ユーロ。
自営業ビザ?それともフリーランス ビザ?
ドイツで起業したらもらえるのが、自営業ビザです。
自営業ビザといわずかっこよく、
「フリーランス ビザ」
と言う人が居ますが、どちらも同じものです。
皆まで言えば、アーテイスト ビザも同じもの。
職人としてドイツで働く
ドイツで職人として自営業ビザを取ろうとすると、さらに大きな制限があります。
一番いい例が理髪師。
ドイツにはマイスター制度があり、自分の店を開くには
“Meisterbrief”(マイスター証)
が必要です。
これはアルバイトでも同じ。
ただし外国人の場合は例外があり、起業したい職種で長年の職業経験がある場合は、これが考慮されて営業許可が下りることもあります。
言うまでもなく要認可。
芸術家ビザ
個人的に、
「取れませんでした。」
という方を知らないので、
「芸術家です。」
と言えば、ビザが取れてしまう魔法の言葉。
勿論、生活費をどこから捻出するのか、
- 生活資金の証明
- 健康保険
が必要なのは言うまでもありません。
でも芸術に事業計画書も必要ないし、商工会議所での審査もないし、
「芸術家です。」
と主張するだけ(*6)。
自営業ビザの有効期限
すなわち
「ドイツにもうちょっと長く滞在してみたいな。」
という方は、芸術家として自営業ビザを申請してみるのも、ひとつの方法です。
ただし自営業ビザですから、どこかで被雇用者として就労するのは禁止されています。
許可されているのは、芸術家としての活動です。
3年後、芸術家として自営業ビザを延長する場合、どれだけ収入があったか、納税証明書を提示する必要があります。
正直な話、芸術家として生活できている人は稀で、両親からの仕送りでやりくりしている方がほとんど。
それでもビザの延長が可能だったりすのが、ドイツ七不思議のひとつ。
会社経営の自営業ビザだったら、絶対に無理。
ドイツでは芸術家は、特別扱いになるようです。
自営業ビザ申請サポート
これまでは、
「ドイツで起業を考えている人なんて、滅多に居ない。」
と思っていたんです。
ところがある日、
「ライプチッヒで某日本人に起業のサポートを頼んだ。」
という方からの
“Hilfe!”(助けて!)
というお問い合わせが入ってきました。
その日本人曰く、
「サポートを頼んだ日本人、どんな書類が要るかも知らず、起業申請は受理されず、もう3ヶ月以上ホテルに住んでいる。」
との切羽詰まった内容で、
「もうお金が尽きるので、帰国するしかないのか?」
との事。
なんと!
このとき始めて
「ドイツには何も知らないのに、起業サポートを高価な値段で売っている日本人が居る!」
と知りました。
ドイツで起業サポート by ドイツの達人
あまりにも醜いのでドイツの達人が、ここで正式に自営業ビザ申請サポートを提供します。
そのサポートは
- 自営業ビザ申請に必要な書類の案内とチェック
- ビジネスプランのアドバイス(作成自体はご自身で)
- 自営業ビザ申請一般に関してのアドバイス
- お客様からの質問への回答
という内容です。
費用
肝心の費用は360ユーロ。
サポート期間は3ヶ月。
日本円でお支払いいただく際は5万7600円(税込み)
(翻訳料は含まれず)
もしビジネスランの書面での提出が必要な場合は、追加280ユーロ(4万4800円、税込み)で日本語、あるいは英語をドイツ語に翻訳します。
電話サポート
ちょくちょく
「電話でドイツで起業について聞きたい。」
とお問い合わせをいただきます。
でも、電話でお尋ねいただいても、
「調べてみないとわからない。」
という回答になって、役に立ちません。
にもかかわらず、
「ドイツの達人に直にドイツで起業について聞きたい。」
と言う場合は、可。
費用は130ユーロ/45分です。
電話の後、調査をしてメールで回答する場合は、さらに260ユーロかかります。
お申込み
自営業ビザ申請サポートをご希望の方、こちらからお申込みください。
サポート料金の入金を確認後、サポートを開始させていただきます。
個人事業主が狙うべき分野 & 戦略
これまで
「中古のレコード屋をやりたい。」
「コスプレ専門店をやりたい。」
から、
「カフェをやりたい。」
まで、いろんなドイツで起業のアイデアを聞いてきました。
どのアイデアなら、ドイツで起業して成功すると思いますか。
個人事業主が狙うのは”Niesche”
個人事業主が狙うのは、
“Niesche”(競争の少ない分野)
です。
具体例。
あなたが全く知らない町で、
「コーヒーを飲みたい。」
と思った際、目の前に
- スタバ
- 無名のカフェ
があったとしましょう。
どっちに入りますか?
ほとんどの方はスタバを選びます。
無名の会社はまず、選ばれません。
あなたが起業しても、同じ運命に遭います。
例外は、あなたがドイツの有名人である場合。
そうでなければ、別の戦略を探るべきです。
それが
“Niesche”
なんです。
上述の例の中ではコスプレ専門店がこの”Niesche”に相当します。
欧州でも仮装(?)に興味を持つ女性(だけででしょ?)は増えてます。
増えているとは言っても、ごく限られた少数派。
大手のユニクロも無印も
「そんなものは儲からない。」
と、コスプレ商品を販売していません。
そんな分野にこそ個人事業主のチャンスがあります。
ドイツで起業 しやすい街
「そんなお金はない!」
という方も多いと思うので、無償で
「自分で起業する方法」
をアドバイスしておきます。
ドイツで起業しやすいのは、デュッセルドルフとベルリンです。
これらの都市では事業計画書の作成も必要なく、口頭で、
「〇〇をやりたい。」
と言うだけ(*7)。
ベルリンでもお客さんが、
「音楽の先生をやりたい。」
で見事、自営業ビザを取得。
その一方で一番難しいのはバイエルン州。
その中でも
「つむじ曲がり」
がアウグスブルク。
ここは避けた方がいいです。
ドイツで起業 戦略① 開業する街
開業する街選びも大事です。
ここで日本人がよく犯す誤りが、
「ミュンヘンで生活してみたかったので。」
とミュンヘンを選ぶケース。
でもミュンヘンの外人局は、
「観光に来てくれるなら大歓迎だが、住む場合は話は別。」
と、とても厳しくチェックされます。
できれば避けた方がいいです。
折角、親心からアドバイスしても、
という方もおられます。
でもミュンヘンで自営業の申請を蹴られたら、元も子もありません。
ですからまずは自営業の許可が降りやすい街で、自営業ビザを取得してください。
それからミュンヘンに引っ越せば、ミュンヘンで生活できます。
ミュンヘンの高い家賃が払えるなら、、。
戦術② 企図は秘匿すべし
当店まで
「ベルリンで起業しました!日本人にこんなサービスを提供しますので、、。」
というメールを送って来られる方が居ます。
言わずもがな、送り先は当店だけではありません。
多分に、
「客を回して欲しい。」
という下心からだと思いますが、
何故だかわかりますか。
ドイツに住む日本人の間では、毎年少なくなる日本人の獲得競争のまっただ中。
もしあなたが、
「日本人相手の儲かる商売]
を発見したなら、すぐにコピーされます。
あなたがどんな商売をするのか、他言は厳禁です。
戦争と同じで、
「企図は秘匿すべし」
です。
とりわけ創業初期で売り上げが少ない時期は、簡単にアイデアを乗っ取られてしまいます。
戦略③ 客の獲得経路
自営業で一番難しいのが客を獲得する事です。
起業する前に
「客の獲得経路」
を明確にしておきましょう。
上述の例のように、
「開業したので、ウチに客を回して欲しい。」
なんて頼むのは、客の獲得経路について何も考えていなかった証拠。
この
「他人の回しで相撲を取る方法」
では長続きしません。
もし
「ホームページで集客」
を考えているなら、グーグルで上位に出てくるホームページの作成には数百万円、あるいは3~4年の時間が必要です。
当店のように20年以上も営業していれば、グーグルでも上位表示されます。
が、ここまで達するのは、ごく一人握りの稀なケースです。
パートナーの保険代理店は、
「グーグルの宣伝に毎月、5000ユーロ使う。」
って言ってました。
利益率が高ければこの方法も可ですが、起業したばかりで毎月、数千ユーロも宣伝に使える方は稀。
ドイツで起業 戦略④ 市場調査を怠るべからず
「自営業者は”Niesche”を狙うべし。」
と書きましたが、あまりにも狭い客層に特化し過ぎるのも駄目。
自分の趣味が原因で
「需要のないサービス」
で起業する人が居ます。
そのいい例が、この格闘技フィットネス。
いつ開店したのか不明ですが、
「あっ」
という間に潰れてました。
ドイツで言い換えれば、ビーバラッハでそろばん教室を開講するようなものです。
あなたの提供するサービスに需要があるのか、市場調査を怠るべからず。
往々にして誰もやっていないのは、需要がないからです。
注釈 – ドイツで起業
*1 “GmbH(有限会社)というドイツで一般的な会社のフォーム。
*2 私自身はまだお目にかかったことがないですが、外人局の役人がこれが根拠だと言ってました。
同じ会社にずっと要るのは、他の会社が欲しくもない人材であるケースが多いです。
*3 お持ちの労働許可証は被雇用者として働く場合のみ、有効です。自営業者として働く場合は、書き換えが必要です。
*4 Industire-und Handeskammer 通称 IHK です。
*5 間抜けなアウグスブルクの役人は、「滞在許可証がないと自営業者の申請はできない。」といい、外人局の役人は、「自営業者の申請が住まないと、滞在ビザは出さない。」といいます。
同じ建物に入っているんだから、電話して段取りを確認すればいいのに、それもできません。ましてや自営業の申請は、昨日や今日、始まったものじゃない!
*6 「ドイツで童話を書いて生活したい!」と渡独されたケースが(本当に)ありました。が、申請は却下されました。
ドイツ語もできないのにドイツで童話を書いて成功する?という無茶な計画では、流石に芸術家ビザもおりません。
*7 私はデュッセルドルフのIHKに行って、起業のアイデアを口頭んで説明する事を求められました。